新型インフルエンザ治療薬ファビピラビル(アビガン)(2014/11/17更新)

ファビピラビルはRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤です。開発コードのT-705、 あるいは商品名であるアビガン錠の名前でも呼ばれます。厚労省は2014年3月24日、新型インフルエンザが既存の薬に対する耐性を持ち、効かなかった場合の対策として、富山化学が開発した抗ウイルス薬「アビガン錠」の製造・販売を承認しています。

[作用機序]
ウイルスはDNAまたはRNAを遺伝情報として保有し、その周りを膜を覆っただけの構造をしています。インフルエンザウイルスはRNAをもっているため、RNAウイルスに分類されます。
ウイルスが増殖するために、核の中に入ったRNAを複製する時に重要となるRNAポリメラーゼと呼ばれる酵素があります。RNAポリメラーゼが阻害されれば、インフルエンザウイルスの遺伝子(RNA)を新しく作れないため、インフルエンザウイルスの増殖を抑制できます。

今までの抗インフルエンザウイルス薬は、タミフルリレンザ新しいインフルエンザの薬、全てノイラミニダーゼ阻害薬です。これらの薬は「インフルエンザウイルスを細胞内に閉じ込め、外に放出されないようにする」という作用機序のために発症から48時間以内(2日以内)に投与しなければ効果がありませんでした。
一方、ファビピラビル(商品名:アビガン)はインフルエンザウイルスの増殖自体を抑制する作用を有しています。そのため、薬の投与開始が遅れたとしても効果を示すことが確認されています。
またオセルタミビル(商品名:タミフル)に耐性を持つウイルスや、H5N1亜型などの鳥インフルエンザAに対しても有効とされています。

[副作用]
既知の副作用として動物実験での胎児の催奇形性があるため、日本国内では通常のインフルエンザには使用してはならないとされ、重篤な患者にのみ本人および家族に危険性の説明のうえで使用するものとされています。 あくまでパンデミックに備えた危機管理用の薬剤であります。
非臨床試験の動物実験で催奇形性が確認されており、ヒトでも同様と考えられるため、妊婦への投与は避けなければなりません。
また、男性の精液から女性へ移行することから、男性の患者に投与する際は、危険性について説明した上で、投与期間中および投与終了後7日間まで、性交渉を行う場合は女性が精液を接種しないようコンドームによる避妊を徹底するよう警告が付けられています。

[エボラ出血熱への効果]
エボラ出血熱の原因ウイルス、エボラウイルスはインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスです。一本鎖マイナス鎖RNAウイルスと言う点で性質も同じなので、効果が期待されるようになりました。現在他の治療薬も含めて臨床試験が行われています。
厚生労働省は、10月中旬に日本国内でのエボラ出血熱感染が確認された場合、このアビガン錠(一般名・ファビピラビル)の投与を認めると発表しました。また11月13日、国立国際医療研究センター(東京都)は、日本でエボラ出血熱の感染者が出た場合、アビガン錠を、患者に濃厚に接触して感染の可能性のある医療従事者らに対し、予防薬として使うことを明らかにしました。今回承認された医療従事者らへの予防投与の臨床研究は、防護服を着ないで患者を診療したり、針刺し事故があったりなどした場合に、対象3施設の専門医らが協議して投与の可否を決定。本人の同意を得られれば、服用することになります。

このファビピラビルが本当に効果が認められた場合同じ 「RNAウィルス」の大半に効果が期待されています。
ラッサウィルス、ノロウィルスSARSウィルス風疹麻疹ポリオウィルス、黄熱、デング熱、C型肝炎、狂犬病、等感染すると死亡率が非常に高いウィルスにも有効という事は画期的な薬であると言えますが、特異性が低い分、福作用や耐性ウイルス出現の問題もあり、ノロや麻疹、風疹にまで使うかどうかは疑問ですね。

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