SARS サーズ

 インフルエンザとSARSは初期症状が似ており、発症時期も似ているので、両方を取りざたされることが多いので、今週はこのお話をします。SARSとは重症急性呼吸器感染症(Severe Acute Respiratory Syndrome)の略です。

[原因] 新型コロナウイルス。今までにあったコロナウイルスの変異ではなく、未知のコロナウイルス。野生のハクビシン、タヌキからこのウイルスと遺伝子配列が酷似した複数のコロナウイルスを検出しています。最初の感染者はハクビシンを食べたことにより感染したのではないか?と考えられましたが、2004年の感染者はハクビシンを食べたことはない、というので、感染ルートは不明です。

[症状] 潜伏期間は2〜10日。38℃以上の高熱、悪寒、筋肉痛、乾性咳(やや遅れて出現)、頭痛。このあたりまでは極めてインフルエンザと似ています。咽頭痛の頻度は低いです。1〜2日のうちに肺炎の症状が現れ呼吸不全の症状が出てきます。約90%は自然回福し、死亡率は7%です。大人が重症になりやすく、子供は重症になりにくいようです。飛沫感染が中心で空気感染は少ないと考えられますが、下痢便中に4日間生存することが確認されているので接触感染も考えられます。大半は感染力は弱いようですが、非常に高い感染力を持つものがごく一部に存在するので広がっていったようです。

[治療] ウイルスに対する薬はありません。リバビリンという抗ウイルス薬が一部の患者には有効だったようですが、広範囲の患者に有効な治療薬は見つかっていません。呼吸不全に対する対症療法のみです。

[予防] 施設内での感染が大流行の発端になりますので、院内感染対策が重要です。マスクの他にゴム手袋、ガウン、帽子、手洗いの徹底で感染を防ぎ、昨年度の大流行が終息しました。空気感染を念頭において、0.1〜0.3ミクロンの粒子を95%カットできるN95マスクが良いようです。

 昨年夏は南半球でのSARSの発生はありませんでした。今冬も中国の感染者4人のみです。隔離対策がうまくいっているのだと思います。SARSやAIDSそして今懸念されている新型インフルエンザといった重症の新興感染症が増えてきているような気がします。これ等はみんな人間には感染しないはずの、他の動物のウイルスが変異して起こったものです。突然に起こるので、原因が分かるまでは昨年のようなパニックになることでしょう。SARSは日本人はかからず、AIDSも日本人は少なかったですが。新型インフルエンザは、生まれると世界中で広がると考えられますので、もっと怖いですね・・・・。スペイン風邪の時代に比べると医学は随分発達したな、と感じます。少なくともインフルエンザの薬はありますので。

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