麻疹(はしか)

 「はしかの様なもんだ・・・」と、誰もが一度は通る関門のようなものを昔はこういいましたが、今ははしかはあまり流行しなくなりました。かかる人の方が少なくなりました。でも、まだまだ無くなってはいません。今回ははしかの話をします。

[原因] 麻疹ウイルス。飛沫感染が中心ですが、接触感染もあります。感染力が強く、かかると殆どの人が発病します(不顕性感染が少ない)。流行時期は春から夏にかけてが多いですが最近は不定です。1991年に最後に流行が見られてからは、少なくなっています。2001年にやや多い報告がありました。殆どがワクチン未接種者の発症です。 4歳以下が多いです。

[症状] カタル期、発疹期、回復期の3期に分かれます。

カタル期(3〜4日):10〜12日の潜伏期間の後、咳、ハナ、くしゃみといった風邪の症状から始まり、38〜39℃台の高熱、眼球結膜充血、眼脂を認めます。発熱3〜4日目に頬粘膜にコプリック斑と呼ばれる小斑点が見られます。この出現率は90%以上で麻疹診断の決め手になります。感染力はこの時期が一番強いです。

発疹期(4〜5日):発症3〜4日目に一旦解熱した後、再度高熱が出てきます。その時から発疹が出だし、全身に広がります。この時期にはまた咳。ハナといったカタル症状も強くなり、肺炎などの合併症も起こしやすい時期です。

回復期:熱は下がり、カタル症状も減ってきます。発疹は出現順に消えていきますが、色素沈着を残すので、黒くなります。これは1ヶ月近く残る事もあります。また落屑が見られる事もあります。発熱から7〜10日で治癒します。

感染期間は発熱カタル症状出現時から発疹の出だす5日間が強く、隔離が必要です。登校は全身状態にもよりますが、発疹消失(赤みが取れてから)から3日以降になりますので、10〜14日は出席停止となります。

[合併症] 肺炎、中耳炎、クループ、脳炎などがあります。次週に詳しく述べます。 

[治療] ウイルスに対する治療はありません。それぞれの症状に対する対症療法になります。麻疹は感染症の中では最も重く、肺炎などの合併症も起こりやすいので、入院治療が必要になることが多いです。年齢の小さい人では合併症がなくても高熱が続く為に入院が必要になる事もあります。麻疹罹患時にビタミンAの欠乏をきたし、病気が重症化、遷延化することが知られているので、ビタミンAの投与も検討されています。

[予防] 麻疹生ワクチンの接種。1965年より任意接種が始まり、1978年より定期接種に変わりました。90%の接種率があれば流行は制圧できますが、今の接種率は75%以下です。特にかかる数の多い1歳代の接種率はもっと低いようです。先進国のなかでは日本はとりわけ接種率が低く、大問題になっています(開業医コラム予防接種参照)。生後6ヶ月から母体の免疫がきれてきますので、麻疹にかかる可能性がでてきます。集団生活をされるお子さんは1歳前でも麻疹ワクチンを受けることをお勧めしますが、この場合は定期外になりますので、有料になります。また、免疫効果のためには1歳をすぎてからもう1度定期で麻疹接種を受けるのかいいでしょう。麻疹の患者と接触後72時間以内に麻疹ワクチンを接種すれば、かからないか、軽症化を期待できますが、麻疹は診断がつくまでが感染力が強く、分かった時点では接触してから時間が経っていることが多いですので、効果は期待できないかもしれません。ガンマグロブリンの投与により発症予防、軽症化する方法もあります。

 麻疹は今でもかかると重症になる怖い病気です。麻疹の制圧のために1歳の誕生日を過ぎたらすぐに麻疹のワクチンを受けるようにして下さい。2001年の小流行時に、ワクチン未接種者が多かった為に、ある小学校で大流行しました。高校生で麻疹にかかり、ワクチンを受けていなかったので重症になり、何故しなかったのだ!と、子供が親に暴力にふるった!という例もありました。まだ受けておられない方がありましたら、必ず受けて下さい。7歳半以上は有料ですが、それでもまだでしたら、気づいた時点で受けて下さい。 

 

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