リレンザ(07/4/2更新)

   


このところ、インフルエンザ情報が続いています。もう終息に向かおうとしていますが。タミフル問題がありますので少し続けたいと思います。昨シーズンにタミフルが問題になったときに、タミフル等の薬や、インフルエンザに関する異常行動を集められた先生のブログがありますので、参考に見てください。
http://www.k-net.org/temporary/flu/pub.htm 今シーズンの分は現在情報を集めている途中ということです。
先週でも危惧は述べました。リレンザでも異常行動例は報告が見られだしています。リレンザは当院では今までからずっと大人の方には処方をしていましたが、あまり、一般的には知られていないので、少しお話します。

[作用機序]
インフルエンザウイルスは、感染細胞(例えばヒトの気道粘膜の細胞)に結合しますが、この時シアル酸という物質と細胞表面の糖との結合が必要となります。そのため、インフルエンザウイルスが感染細胞から未感染細胞へ移動するときには、シアル酸と細胞表面の糖との結合を切る必要があります。このシアル酸と糖との結合を切るための酵素がノイラミニダーゼです。
リレンザは、タミフルと同じくこのノイラミニダーゼの作用を抑制します。リレンザがノイラミニダーゼの働きを抑制すると、インフルエンザウイルスが感染細胞から離れることが出来ず、インフルエンザウイルスの感染拡大を防止することになります。そのため、病状の進行がとまり、治癒までの日数が短縮されます。これから分かるように、リレンザも、タミフルも、ウイルス自体を壊すものではない薬物ということになります。

[薬の吸収]
リレンザは殆ど消化管から吸収されないため、粉末を吸入する、という形で投与します。これが少し大変なので、一般的に使われない理由です。リレンザは即効性があり、吸入直後十数秒で効果を示すといわれています。その理由は、ウイルスの主要な感染部位である鼻咽腔に高濃度の主成分(ザナミビル)が直接的に到達し、下気道にも投与量の13%が到達するからです。一部分は吸収され、血中濃度は約1.7時間で最高になり、尿中に未変化体のまま排泄されますが、その割合は8〜15%程度であるため、全身臓器への影響は少なく、副作用の頻度は少ないです。しかし、粉末吸入であるため、気管支攣縮等の副作用に注意しなければなりません。気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患のある患者さんには投与は慎重にしなければなりません。


実はこのリレンザ、発売はタミフルより早く、市場に出たときは画期的な薬と注目を集めたのですが、吸入薬で操作が若干面倒だったこともあり、経口薬のタミフルが発売されると、あっという間に取って代わられたという経緯があります。これだけ読めば、タミフルよりもいい薬だ!異常行動というような副作用は見られないのではないか!というような印象で捉えられかねませんが、繰り返していいますように、リレンザは使用量が少なすぎて、報告される数が無い、というだけです。インフルエンザそのものによる異常行動が10%にみられますので、リレンザの使用量がふえればやはり、上述のように報告が見られるようになるでしょう・・・。
抗インフルエンザ薬は要らない、使わない、という方向に持っていくのが一番良いのでしょうね。

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