山内医院では、厚生労働省感染症サーベイランスを1週間単位で実施し、保健所に報告しています。そのデータをもとに、分かりやすく加工し直したのが、このページです。いまこの地域ではどんな病気が流行っているのか、感染防止の目安にして下さい。
■= 10 ■= 1
2012年10月15日〜10月21日

(第42週)
6


12


1
2 3 4 5 6 7 8 9 10

14
15

19
20



咽頭結膜熱 (プール熱)
              0
A郡溶血性連鎖球菌感染症
            1
        1
    2

感染性胃腸炎   1
2

5




              3


   
11
水痘                             0
手足口病
                            0
伝染性紅斑(リンゴ病)
                            0
突発性発疹
  1
3


                      4



百日咳
                            0
風疹
                            0
ヘルパンギーナ
                            0
麻疹
                            0
流行性耳下腺炎
                            0
RSウイルス感染症                             0

インフル エンザ 6


12


1
2

3

4 5 6 7 8 9 10

14
15

19

合計

0
                          0
20

29
30

39
40

49
50

59
60

69
70

79
80


           
                          0

【今週のコメント】
朝晩は本当に寒いです。でも週末は非常に良い天気、昼間は暑いぐらいになりました。気持ちの良い季節ですね。
感染性胃腸炎はまだあまり多くはなりません。年齢の小さいお子さんで下痢の治らない方が、少し目立ちました。また今週は突発性発疹の方がかたまって見られましたが、この病気は、毎回言いますように人から人へうつるものではありませんので、本当にたまたま多かっただけだと思います。後は溶連菌感染症のみ。報告すべき疾患の種類が非常に少なかったでした。咳ハナの風邪の方、喘息の方はまだやはり多いのですが。そして巷ではRSウイルス感染症が非常に多いと、いろいろなところで取り上げられています。確かに報告数はすごく多いです。今の時点ですでに例年の12月中旬のピーク数を超えています。これもいつも言いますように保険適応になって、検査をされる頻度が増えたのがその大きな原因だと思います。検査キットがあるので、保険適応外のお子さんでも検査をされる場合もあり、3歳のお子さんがRSウイルス感染症だと、お医者さんから真剣な顔をして言われ、本人は非常に元気なので、とまどってしまった、と話される保護者の方もありました。
こんなに朝晩寒いのに、子どもは布団から出て寝ているんです…、と保護者の方にとっては心配な季節になります。子どもたちは足が暑くなるのが嫌なんですね。肩、腰、おなかが冷えないように工夫をして下さい。


■今週のトピックス<Hib、肺炎球菌ワクチンの効果について>
Hibワクチンが日本で接種できるようになってから約4年、肺炎球菌ワクチン(PCV7)が日本で発売されたのが、2010年2月でした。昨年2月から2つのワクチンの公費負担制度が日本のほとんどの市町村で始まってからは、その接種率が非常にあがりました。今回はこのワクチン接種の効果について感染症情報センターの報告から転記いたします。

2008年1月から、10道県において侵襲性インフルエンザ菌感染症および侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の疫学調査が開始されました。

[調査方法]
調査方法
侵襲性インフルエンザ菌感染症およびIPD調査を行っている道県は、北海道(5歳未満人口推計値203,000人、調査協力病院数59)、福島県(84,000人、16病院)、新潟県(91,000人、41病院)、千葉県(260,000人、69病院)、三重県(80,000人、14病院)、岡山県(84,000人、17病院)、高知県(29,000人、11病院)、福岡県(226,000人、34病院)、鹿児島県(74,000人、18病院)、沖縄県(82,000人、16病院)の10道県です。2009(平成21)年10月時点での10道県をあわせた5歳未満人口推計値は1,213,000人であり、全国の5歳未満人口の推計値(5,376,000人)の22.6%を占めています。
各県に一人の研究協力者を依頼し、各研究協力者は、それぞれの県内の小児科入院施設がある医療機関の小児科部長(医長)に侵襲性細菌感染症患者が入院したとき、患者情報を提供するよう依頼しました。また、情報の提供漏れがないかを確認するために、定期的に各医療機関に電話またはファックスで入院情報の提供を求めました。患者情報としては、家族構成、集団保育の有無、HibワクチンおよびPCV7のワクチン歴、発症時の年齢(月齢)、臨床経過、予後など。なお、北海道は髄膜炎のみの調査であり、他の9県は侵襲性感染症すべての調査です。今回は各侵襲性感染症の罹患率の報告になります。

5歳未満時における侵襲性細菌感染症の罹患率
グラフ

HibワクチンおよびPCV7には集団免疫効果があります。
Hibワクチンを定期接種している国ではHib髄膜炎が99%、PCV7を定期接種している国ではすべての血清型の肺炎球菌髄膜炎が75%減少しています。また、PCV7では40%の接種率で乳幼児のIPDが80%低下しています。わが国でHibワクチンおよびPCV7の公費助成による接種が、実質的に始まったのは2011年2月からですが、Hib髄膜炎では57.1%減少し、Hib非髄膜炎では45.1%減少していました。Hibワクチンは2008年12月から市販されていること、緊急促進事業が始まる前から一部の市区町村では公費助成が行われていたこと等から、Hibワクチンの効果が比較的早期に認められるようになったと推察されます。今後接種率が高まることで、欧米各国と同様の高い発症抑制効果が期待されます。
今回の調査では、肺炎球菌髄膜炎は25.0%減少し、肺炎球菌非髄膜炎は32.3%減少していました。PCV7は2010年2月から市販されたワクチンであること、肺炎球菌髄膜炎の発症頻度はHib髄膜炎と比べて低いこともあり、今回の調査におけるPCV7の効果は評価しがたいと考えられます。今後、各道県の接種率を含めたさらなる追跡調査が必要になります。

HibワクチンやPCV7が普及した先進国では、Hib以外の莢膜型による侵襲性インフルエンザ菌感染症の増加が話題になっており、肺炎球菌ではPCV7に含まれない血清型の肺炎球菌による侵襲性感染症の増加が報告されています。

京都市では昨年の1月からHibワクチン、肺炎球菌ワクチン(PDV7)の助成制度が始まり、無料で受けられるようになりましたので、そこから一挙に接種率が上がりました。3月にワクチン接種後に死亡されたお子さんの報告があり、一時中止になった時期もありましたが、ワクチン接種との因果関係は認められない、という事で再開され、現在に至っています。この報告を見ると、Hib感染症に関しては接種率の上がった昨年から非常に罹患者が減っています。肺炎球菌感染症の方は減少率は非常に多くはないようです。ただ子どもを見ている私たちにとっては、確かに熱が続いて血液検査をした結果、値の悪い重症なお子さんは非常に減っている、と実感しています。細菌性肺炎は少なくなっていると感じています。
肺炎球菌ワクチンに関しては、今海外では7価ではなく、13価ワクチンに切り替えられているところが多くなっています。日本でも今年の7月にこの13価ワクチンの承認申請がなされています。このワクチンが承認され接種できるようになることに期待します。

● リンク
京都市衛生公害研究所 国立感染症研究所感染症情報センター

 

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