肺炎球菌(09/10/26更新)

[肺炎球菌とは]
肺炎球菌は、子どもの細菌性髄膜炎、菌血症、肺炎、中耳炎などの主要な原因菌の一つです。肺炎球菌はのどなどから体に入ります。子どもは、大人とは病状が少し異なるので、小児の肺炎球菌感染症として、特別に分けて考えるのが実用的です。大人だと肺炎になることが多いのですが、子ども、特に2歳以下では、脳を包む膜にこの菌がつく細菌性髄膜炎が多くみられます。この菌による髄膜炎は、年間200人くらい発生しています。肺炎が12,000人、この他、重い中耳炎や肺炎、菌血症や敗血症も起こします。これに引き替え、欧米では 2000年頃から子どもにも有効な小児用肺炎球菌ワクチンが使用されて、かかる子どもが激減しています。WHOによると、世界では肺炎球菌感染症により毎年約100万人の乳幼児が死亡しています。2007年にはWHOよりすべての国において小児用肺炎球菌結合型ワクチンを定期接種に優先的に導入するよう、ポジションペーパーによる推奨が出されています。日本国内においても肺炎球菌は、インフルエンザ菌(おもにb型)とならび小児期の重症感染症の主要な原因菌であり、抗菌薬に対する耐性をもつ耐性菌が増加していることから、ワクチンによる予防がきわめて重要視されています。

[感染の特徴]
細菌性髄膜炎を起こすような場合でも早期診断は難しく、その後にけいれんや意識障害が始まってきます。診断がついても、抗菌薬が効かない耐性菌が多く、治療は困難です。ヒブ髄膜炎に比べて、死亡と後遺症の比率が少し高くなります。亡くなる方が10%前後、後遺症率は30−40%くらいです。髄膜炎による後遺症として、発達・知能・運動障害などの他、難聴(聴力障害)が起こることがあります。
肺炎を起こした場合も、ウイルス性肺炎と異なって、大変重症です。中耳炎の場合でも、耐性菌が多いので、重症で治りにくくなります。
また菌血症を起こすことも多いです。 菌血症とは、通常細菌が検出されない血液中に細菌が入りこんだ状態で、細菌性髄膜炎や敗血症など重症な細菌感染症の前段階となることがあります。細菌性髄膜炎と同様に肺炎球菌とヒブがその原因の多くを占め、70%が肺炎球菌が原因で発症します。

[ワクチンの概要]
肺炎球菌ワクチン(プレベナー)は、約90種類ある肺炎球菌の血清型のうち小児において侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こすことが多い7つの血清型(4、6B、9V、14、18C、19F及び23F)を選んでワクチン化したものです。国内における侵襲性肺炎球菌感染症の約80%は、プレベナーに含まれるこの7つの血清型の肺炎球菌によって引き起こされています。同時にプレベナーは耐性株を広くカバーしています。接種は標準として初回免疫を2カ月齢以上7カ月齢未満で開始し、27日間以上の間隔で3回接種します。追加免疫は通常、12〜15カ月齢の間に1回接種します。またこの標準時期に接種できなかった場合、7ヵ月齢以上12ヵ月未満で接種を開始した際には合計3回、1歳〜2歳未満では合計2回、2歳以上9歳以下は1回の接種を行います。

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