気管支喘息

 季節の変わり目で、気温差が激しいこの時期は喘息の発作を起こして来られる方が多いです。今週は喘息についてお話します。日本の喘息患者数は大体200〜300万人(全人口の2〜3%)で、喘息で亡くなる人は年間6000〜7000人と推定されています。思春期〜若年成人の喘息死が減少していないようです。

[病態] 気管支がアレルギーなどで炎症を起こし、気管支が狭くなって痰がたまり呼吸が苦しくなる慢性の病気です。アレルギーを起こしやすい遺伝的素因(アトピー素因)を持つ場合が多く、小学校入学前に発症することが殆どで、大人になるまでに症状を起こさなくなることが多いですが、30〜40%は大人になってから再発します。

[発作の原因・誘因] 天候、季節、かぜ、運動、アレルゲン(吸入抗原=ダニ、カビ、ホコリ、ペット〔毛、尿なども〕、花粉などが主で、食餌抗原=そば、小麦、卵などは少ない)、煙(タバコ、花火、線香)、空気汚染(暖房、排気ガス)など。

[症状] 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)、慢性的な咳、痰、呼吸困難。何かのきっかけで急に咳き込みだして息苦しくなります。夜間から早朝の時間帯に悪くなる人が多いというのも特徴です。しつこい咳のみで、殆どゼーぜーは聞こえない発作もあります。発作には軽いものから、死に至るような重いものもありますので、顔色が悪くなったりする時には要注意ですす。

[治療] 発作を起こさないようにする薬と、発作時の症状を抑える薬とがあります。発作を起こす回数の少ない人は予防薬は必要ありませんが、数年にわたって治療を続けないといけない人もあります。

(1)発作予防薬 吸入ステロイド薬:現在の薬物療法の中ではもっとも重要視されています。全身性の副反応は殆どありませんので、今は予防薬の主流になっています。小児の場合はインタール(抗アレルギー剤)の吸入もまだ中心になっています。内服薬:テオフィリン製剤(テオドール)、抗アレルギー剤(オノン、シングレア等)、持続の長いベータ刺激薬の添付(ホクナリンテープ)、漢方薬等が使われます。

(2)発作改善薬 吸入ベータ刺激薬:乳幼児の場合は、ネブライザーという機械を使わないとうまく吸入できないことが多いです。効果は強いですが、使いすぎて副作用が出たり、病院への受診が遅れたりすることがあるので、医師の指導に必ず従ってください。内服薬:発作の軽い場合は経口の気管支拡張剤(テオドール、メプチンなど)で発作を抑えることができます。その他、痰をとる薬なども使われます。

[生活管理] 慢性の病気ですので、発作の無いときの予防的治療が主体になります。薬だけが治療ではなく、環境改善、身体鍛錬も必要です。原因がはっきりしている人はその原因物質を取り除くことが大切です。寝不足やストレスも症状を強くする要因となることがあります。

[喘息日誌] 受診時の診察では本当の症状がわかりにくいので、日誌をつけると治療の効果や発作の誘因が評価しやすくなります。年齢の大きいお子さんではピークフローメーターという簡単な器具を使って、呼吸機能を調べ、重傷度の判定ができますので、症状の落ち着かない場合は、ピークフロー日誌をつけて下さい。

 強い喘息の発作を繰り返すお子さんは、吸入ステロイド治療のおかげで、随分減ったようです。発作を繰り返してその度に発作止めを使うだけでは喘息は良くなってくれません。発作の無い良い常態を長く維持していく事が、良くなっていく為の必要条件です。

 

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