夏風邪(06/7/31更新)

今まで、繰り返し夏風邪という言葉を使っています。冬にひく風邪に対して、夏にひく風邪を一般的に「夏風邪」と呼んでいますが、医学的に夏風邪という定義はありません。「風邪」というのは前にお話したように正しくは「風邪症候群」であり、急性上気道炎です。風邪の原因となるウイルスは200種類以上もあります。今回はこの夏風邪も含めた「風邪」について少し考えてみたいと思います。

[夏風邪と冬の風邪は違うのか?]
違いは原因になるウイルスの違いのみです。
多くのウイルスは寒くて乾燥した環境を好むため、冬にかぜ(普通感冒)やインフルエンザが大流行しますが、なかには暑くて湿度が高い夏の環境を好むウイルスもいるのです。エンテロウイルス(コクサッキーウイルス、エコーウイルスなど)やアデノウイルスがその代表です。一方、のど、鼻の症状や発熱を伴うことの多い冬のかぜは、RSウイルス、コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどが原因で起こります。春や秋にはライノウイルスが原因で起こるケースが多くなります。このウイルスの主な症状はハナであり一般的に症状は軽いです。

[何故夏に風邪をひくのか?]
「風邪はのどや鼻からひく」といわれますが、これは、のどや鼻の粘膜の抵抗力が弱っているときに風邪ウイルスが体内に侵入することを表しています。粘膜はしっとりとぬれた状態で免疫物質を分泌し、ウイルスや細菌などの外敵から体をガードしていますが、乾燥すると免疫物質の分泌が減ってしまい、免疫力がダウンしてしまいます。冬は当然乾燥しているものですが、最近は夏でもエアコンや扇風機によって部分的に乾燥することがあり、やはり粘膜が乾いて免疫力が低下し、風邪のウイルスに負けてしまうというわけです。また、暑い時期は大量の発汗によって体内から水分が奪われがち。その分、粘膜の乾燥に拍車をかけてしまうことになります。さらに、夏バテによる食欲不振や熱帯夜による寝不足、室温と外気の激しい温度差によって自律神経のバランスが崩れてしまうなど、夏ならではの免疫力低下の要因もあります。 こうしたことを考えると、夏は冬と並んで風邪に気をつけたい季節といえるでしょう。
小児科にとっては夏の季節の方が冬よりも、高熱が続いて重症になるお子さんが多く、冬のインフルエンザは幼稚園児、小中学生がかかりやすいのに比べ、夏は特に乳児から2歳くらいまでの方が、入院が必要になるほど重くなってしまします。これは夏に流行するウイルスの方が増殖するスピードが遅いからで、健康な体力のあるものにとっては、感染してもその間に症状もでず治ってしまうのに、免疫の無い小さい子供の場合は重くなるのです。全体に潜伏期間は長いものが多いですね。インフルエンザのように潜伏期間が短く、大人も高熱が続くような感染力の強いウイルスは少ないので、夏にも風邪をひく!という意味で「夏風邪」という言い方がされるのでしょうね。ただし、上述のように最近はクーラーのせいで余計に体力がおちてしまって大人の方も、熱を出す機会が増えているので要注意ですね。

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