インフルエンザ

 今週に入ってインフルエンザの患者さんがみられるようになりました。お正月の間に少し流行りだしたようです。本格的な流行は1月の後半からになると思います。今日はインフルエンザのお話をします。

[原因] インフルエンザウイルス。A型、B型、C型がありますが人間に強い症状を引き起こすのはA型とB型。A型はH1からH15、N1からN9までの亜型に分類されます。最近2、30年はA-H3N2であるA香港型と、A-H1N1であるAソ連型の2種類が流行し、同じ亜型の中で少しの抗原性の変化は見られていますが、大きな変異はみられていません。B型ウイルスには1つの亜型しかなく、少しの抗原性の変化はありますが、大きな変異は起こしません。くしゃみなどでウイルスが空気中に飛び散る飛沫感染でうつりますが、SARSで疑われているような空気中の塵などに付着して漂ってうつる空気感染もありうる様です。インフルエンザは同種の動物にしか感染しないと考えられてきましたが、1997年に香港で、ニワトリのインフルエンザがヒトに感染して、大きな衝撃となりました。このウイルスが前述の鶏のインフルエンザの事ですが、肉や卵を食べて経口接種でうつることはありません。又人から人にうつることもありません。

[症状] 急激な発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛に引き続き、ハナ、咽頭痛、咳などの風邪症状がでてきます。潜伏期間は1〜3日。体温は38度以上で4〜5日以上続くことが多いです。一旦下がってから又上がるという二峰性の熱型を示すこともあります。合併症が無ければ全経過は約1週間。A型のほうがB型よりも重症化しやすく、又A香港型の方がAソ連型よりも症状が強い傾向があります。重大な合併症としては高齢者や基礎疾患を持ったハイリスク群の肺炎と、乳幼児の脳炎・脳症があります(次週で詳しく話します)。

[診断] 流行期には、症状から比較的診断しやすいですが、最近では迅速診断キットがあり、30分以内に検査結果が分かります。ただし、検査方法やキットの精度の問題で、必ずしも検査結果を100%信頼できるわけではありません。また、発熱してからすぐの場合はウイルスの量が充分ではなく、陽性になりにくいようです。少なくとも12時間以上は経っていないと正確な判定はできないようです。

[治療] インフルエンザウイルスの増殖を抑えるタイプの薬があります(タミフル、リレンザ)。発病して48時間以内に服用すれば効果があります。耐性ウイルスもできにくく、予防的投与も有効とされています。5日間投与となっていますが、昨シーズンは大流行し、薬剤入手が困難であったため2〜3日投与が多かったですが、それでも充分有効でした。この薬は日本だけで世界の70%以上を消費しています。薬が高価なこともあり、諸外国では免疫不全の人など、重症化する人のみに保険適用となっています。健康な人にとっては高熱がしんどいだけで重い病気ではないのですが、有熱期間の劇的な短縮は目を見張るものがありました。他にアマンタジンという薬もありますが、A型のみしか効果がなく、耐性ウイルスの出現もあります。

 インフルエンザに感染すると発病後3〜5日間ウイルスを排出するといわれています。この間は他に人にうつりますすが、その長さは個人差もあり、抗インフルエンザ薬の内服によって通常1〜2日間短縮されます。学校保健法では「解熱した後2日を経過するまで」を出席停止期間としていますが、症状により医師が判断するところとなります。無理をせず充分な体力の回復の後に、学校や職場に復帰するのが妥当と考えます。

 

copyright(c) 2004 Yamauchi Clinic. all right reseaved.