エンテロウイルスという名は、殆どの方はあまり聞かれた事がないと思います。エンテロウイルスによる感染症は、夏から秋にかけて多く発生します。夏のかぜの代表としてよくあげられる手足口病やヘルパンギーナを起こすウイルスは、このエンテロウイルスに属しますので、今回はこのお話をします。 [病原体] エンテロウイルスは、腸管で増殖するウイルスの総称です。人に感染症を起こすのは67種類(ポリオ1〜3型、コクサッキーA群1〜22型、24型、コクサッキーB群1〜6型、エコー1〜7型、9型、11〜27型、29〜31型、エンテロ68型〜71型)のウイルスが存在し、年毎に流行するウイルス型が異なります。夏季を中心に5月から10月にかけて流行します。 [症状] エンテロウイルスが主として腸管あるいはその近辺の限られた組織にとどまる場合は無症状で経過し、人は免疫を獲得して感染は終わります(不顕性感染)。感染がさらに進み、ウイルス血症を起こして体内の諸組織及び中枢神経系へ波及すればそれぞれの段階に応じて種々の臨床症状を起こすことになります。同じ型のエンテロウイルスが異なる症状をきたし、異なるエンテロウイルスが同じ症状をきたすことがあるので、臨床症状のみでは病因ウイルスを特定することは困難です。 最も軽い疾患としては発熱、またはこれと上気道炎症状を併発した急性熱性疾患(いわゆる夏かぜ)です。その他、皮膚・粘膜の発疹、心嚢炎、またはウイルスが中枢神経へ進入すれば無菌性髄膜炎あるいは麻痺を起こすことになります。 表1.エンテロウイルスによる感染症
表2.類型別のエンテロウイルス感染症
[感染経路]
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