カポジ水痘様発疹症 (2015/7/13更新)

[カポジ水痘様発疹症とは]
アトピー性皮膚炎等の病変部位、特に顔面、体幹に小水疱が多発する疾患で、ヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)の自家接種により感染します。皮膚の表面に多数の傷がある時にそこからウイルスが侵入して症状がおこります。1887年Kaposiによって初めて報告されました。

[原因]
単純ヘルペスウイルス以外にも痘瘡ウイルス、コクサッキーウイルスも原因となりますが、痘瘡ウイルスが撲滅された現在、主に単純ヘルペスウイルスの感染を意味しています。コクサッキーA6ウイルスによる全身型の手足口病が、カポジ水痘様発疹症類似の水疱を起こすことが、2011年の流行時に症例報告されています。

[症状]
湿疹は通常のヘルペスと同様に中心部がへこんだ小水疱ですが、多発して広がる傾向が強く、すぐにただれたようになって痛みもあり、所属リンパ節の腫脹や発熱などの全身症状を伴うこともあります。顔面では、角膜ヘルペスを合併することがあるので注意する必要があります。また、アトピー性皮膚炎の病変自体に黄色または表皮ブドウ球菌が多く存在するので、伝染性膿痂疹(とびひ)やその他の細菌の二次感染を起こし易いです。
単純ヘルペスの初感染の時だけでなく、再発例でも発症しています。初感染の場合、重症化し、治癒までに2〜4週間の日数がかかります。

[診断]
水疱底面より細胞を採取して、HSV感染の有無を証明しなければなりません。血液検査でHSV抗体価が上昇している確認も必要です。初感染では、HSV−IgM抗体が10日目頃より出現します。

[治療]
抗HSV剤の投与。抗ウイルス剤の全身投与を5日間続けて治癒傾向がみられない場合、診断の間違いか、細菌感染症の合併を考える必要があります。細菌感染があれば、抗生物質の全身投与を行います。細菌感染のおそれのあるものでは、抗生物質の外用剤を予め併用することもあります。


皮膚科ではアトピーのある方はカポジ、という病名になり、アトピーのない方は重症になりにくいので、ヘルペスと言われるようです。ヘルペス…と言われると、帯状疱疹…と思ってしまいます。抗ウイルス剤を処方するので、原因ウイルスはHSVである、ときちんと診断しないといけないようです。そして、手足に限局することは少ないようなのですが…。

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