エボラ出血熱(14/8/11更新)

[エボラ出血熱とは]
エボラ出血熱はエボラウイルスによる急性熱性疾患であり、ウイルス性出血熱(Viral Hemorrhagic Fever :VHF)と呼ばれる疾患群の一つです。 が、近年では出血を必ずしも起こすわけではないのでエボラウイルス病(Ebola virus disease:EVD)と呼称されることが国際的に多くなってきています。1976年にスーダンとコンゴ民主共和国の2か所で初めて発見されました。コンゴ民主共和国のエボラ川の近くの村で発生したことから、その川の名前にちなんで、エボラ出血熱という病名になりました。
最も重要な特徴は、血液や体液との接触によりヒトからヒトへ感染が 拡大し、多数の死者を出す流行を起こすことであり、過去にもしばしば注目を浴びています。
今回のEVD流行における致命率(約60%)がこれまでの流行に比較して高いのは、原因ウイルスの病原性が高いことに起因しています。

[感染経路]
アフリカ中央部(スーダン、コンゴ民主共和国、ガボン)および西アフリカのみで発症しています。ウイルスの自然宿主の特定には至ってはいませんが、コウモリが有力とされています。サルからの感染例はありますが、キャリアではなくヒトと同じ終末宿主のようです。感染した人または動物の血液などの体液と直接接触した場合に感染の危険が生じます。一般的に、症状のない患者からは感染しません。空気感染もしません。
流行地では、エボラウイルスに感染した野生動物(オオコウモリ(果実を餌とする大型のコウモリ)、サル、アンテロープ(ウシ科の動物)等)の死体やその生肉(ブッシュミート)に直接触れた人がエボラウイルスに感染することで、自然界から人間社会にエボラウイルスが持ち込まれていると考えられています。
  WHO(世界保健機関)は、流行地でエボラ出血熱に感染するリスクが高い集団を、
・ 医療従事者
・ 患者の家族・近親者
・ 埋葬時の儀式の一環として遺体に直接触れる参列者
・ 熱帯雨林で動物の死体に直接触れる狩猟者
としています。
空気感染はしないため、「仮に感染者が国内に入っても、飛行機に同乗した人などに感染が広がる恐れはほとんどない」と言っていいと思います。

[症状]
潜伏期間は2日から最長3週間といわれており、汚染注射器を通した感染では短く、接触感染では長くなります。
最も一般的な症状は、突然の発熱、強い脱力感、筋肉痛、頭痛、喉の痛みなどに始まり、その後、嘔吐、下痢、発疹、肝機能および腎機能の異常、さらに症状が増悪すると出血傾向となります。発熱、頭痛が100%に、腹痛、咽頭痛、筋肉痛、 胸部痛が80%に、出血(吐血、口腔歯肉、消化管)が70%にみられます。出血は死亡例の大部分でみられます。致死率は50〜90%です。

[治療と予防]
特効薬はなく、対処療法のみに限られています。患者が意識を失い、多量に出血するほど症状が進んだ場合は、治療は非常に困難となります。
予防としてもワクチンはありません。感染が疑われる人・動物の体液に触れないことや、こまめに手を洗うことなど、基本的な衛生管理で感染リスクを下げることができます。

[2014年の発生状況]
2014年に西アフリカ諸国で起こっているEVDの流行は、3月にギニアで集団発生が報告され、その後、隣国のリベリア、シエラレオネへと拡大しています。世界保健機関(WHO)の報告によると、2014年8月4日現在、ギニアで臨床的にEVD患者とされた累計症例数は495例(うち死亡363例)、リベリアでは516例(同282例)、シエラレオネでは691例(同286例)であります。リベリア及びシエラレオネでの流行は依然として深刻な状況にあり、一方、ギニアでは一時減少傾向にあったが、最近新規症例が急増しています。7月には、リベリア人の40歳男性が空路でナイジェリアへの渡航中に発症、ナイジェリアの病院でEVDと診断され、数日後に死亡しました。ナイジェリアでEVD感染者が確認されたのは初めての事です。この患者は航空機での移動中の発症であったため、搭乗者を含む接触者の調査が行われています。その後、ナイジェリアでは疑いのある症例まで含め、8月4日現在で計9例が報告されています。感染者は4カ国で1,700人、死者は900人を上まわっています。
EVD患者の発生が継続しており、これまで知られている流行のうち最も大きな流行となっています。 これらの国を含む西アフリカ地域においては、EVDが確認されたのは1994年コートジボアールでEVD患者1名が確認されて以来のことで、EVDの流行が拡大したのは初めてのことになります。
現時点で、EVD発生を理由として、WHOはギニア、リベリア、シエラレオネへの渡航や貿易の制限を推奨していません。今後発生国からの渡航者や帰国者による他国への感染拡大等が起こらないよう、流行状況を慎重かつ継続して監視していくことが重要となっています。

2003年に起こったSARSや2009年の新型インフルエンザ発症の時のパニックを思い出します。今回は現地での感染がなかなか抑え込まれていないので問題になっていますが、その2者の場合とは違って、EVDは新興感染症でなく、はっきりとした感染経路が確立されている感染症ですので、あまり心配する必要はないですね。

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