消炎鎮痛剤(13/9/9更新)

[消炎鎮痛剤とは]
ステロイドは先週少し触れましたが、非常に強い炎症を抑える力があります。ステロイド以外で疼痛、発熱、炎症を抑える為に用いられるものを、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)と言います。この軟膏については説明しています。
COX-2(COX:シクロオキシゲナーゼ)という酵素の働きを選択的に阻害することにより、炎症に関与する物質であるプロスタグランジンの生成を特異的に抑制します。

[薬の種類]
サリチル酸系
不可逆的な血小板抑制作用があります。アスピリン特有の合併症にはアスピリン喘息とライ症候群があります。喘息患者の10%にアスピリン過敏性があり、アスピリン過敏性がある患者は他のNSAIDsにも過敏です。
アスピリン(バファリン)、エテンザミド、ジフルニサル)

プロピオン酸系

強力な鎮痛作用に加えて白血球抑制作用も知られ、その影響から消化管への副作用も多いです。ニューキノロン薬と併用する痙攣が起こるという副作用の報告があります。
(ロピオン、ロキソニン、イブプロフェン)

酢酸系
消化管潰瘍以外に肝炎や黄疸が生じることもあります。インドメタシンは胎児において動脈管閉鎖を促進させるという効果もあるため、妊婦には危険です。(経皮製剤においても妊婦に使用した場合胎児に動脈管閉鎖が起こるため使用禁忌)
ボルタレン、インドメタシン)

オキシカム系(COX-2選択阻害剤)
COX-1/2をともに阻害すると消化管の障害が出現するため、COX-2選択性の高い薬剤が開発されました。
(フェルデン、フルカム、ロルカム、モービック

塩基性
鎮痛効果が低いがアスピリン喘息の患者にも投与可能ともいわれています。しかし喘息を誘発したという報告もあり用いない方がよいとされています。
(ソランタール)

ピリン系(ピラゾラン系)
厳密にいえばNSAIDsではありません。解熱鎮痛作用はありますが消炎作用はありません。
(スルピリン、イソプロピルアンチピリン)

非ピリン系(アニリン系)
厳密にいえばNSAIDsではありません。解熱鎮痛作用はあるが消炎作用はありません。ライ症候群予防のため小児ではよく用いられます。
(アセトアミノフェン=ピリナジンやカロナールアンヒバ坐剤、大衆薬の小児用バファリンなど、世界的にはタイレノール(日本では2000年に市販開始)が有名)

[副作用]
最も多いのは胃腸炎で、軽い胃部不快感から、治療に長期間を要する、重篤な出血を伴う潰瘍までが起こり得ます。
気管支喘息(アスピリン喘息)
肝障害
腎障害(特に降圧剤との併用には注意)
NSAIDsは、身体の障害によって産生されるプロスタグランジンの合成を阻害することにより効果を発揮しますが、プロスタグランジンは、炎症と疼痛をもたらすだけではなく、胃内膜などの再生に関わるなど、必要な役割もあります。

消炎鎮痛剤は炎症をしずめて、腫れや発赤、痛みなどの症状をおさえます。熱を下げる作用もあります。ただし、対症療法薬ですので、熱や痛みの原因そのものを治すことはできません。 これらの薬は関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、腱鞘炎、頸肩腕症候群、神経痛といった整形外科領域で使用されることが非常に多いです。後は片頭痛、生理痛、歯痛の痛み止めとしてよく処方されます。痛み止めの効果はありますが、上述の通り副作用が多いですので、最近は痛み止めとしては副作用の少ないカロナールがよく使われています。特に小児科領域ではインフルエンザ脳症の原因になると言われていますので、アセトアミノフェンしか使用しなくなりました。プロスタグランディンの生成抑制が無いので良いようです。
夜も眠れない、食事ができないほどの痛み・高熱があれば、長期間の使用にはならないと思いますので、安静が保てるように適切に使っていただければと思います。

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