ワクチンのアジュバントと添加物(12/11/26更新)

アジュバントについて
[アジュバントとは]
アジュバントとは日本語で「免疫賦活剤」と呼ばれます。ワクチンの効果の元である抗原を免疫細胞に取り込みやすくさせ、ワクチンの効果を強めるために用いられます。その結果、ワクチンの材料となる抗原の量を少なくすることが可能となり、限られた抗原量の中からたくさんのワクチンを作ることが出来ます。

[アジュバントの種類]
1)「 沈降性アジュバント(抗原が吸着する無機物の懸濁剤)
水酸化ナトリウム、水酸化アルミニウム(アラム、Alum)、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、ミョウバン、ペペス、カルボキシビニルポリマーなど。
病原体やある抗原を吸着し、接種局所病原体を固定する利点もあるが、その性質の為、接種部位が硬結しやすい。
2)油性アジュバント(抗原水溶液を鉱油で包みミセルをつくり乳化する油乳剤)
流動パラフィン、ラノリン、フロイントなど。
乳濁液にするため粘性の高い液体になり、接種時に疼痛が起きる。体内に散りにくく、そのまま接種部位に残る性質も持ち合わせ、硬結する事がある。

[日本国内で販売されているアジュバント添加ワクチン]
表1

インフルエンザワクチンは2009に作られた新型のもので、現在は発売されていません。日本のワクチン生産が間に合わないので、海外から急遽輸入されたのですが、当時は盛んに日本で使われないアジュバンドが使用されている…という物議が醸されました。日本で使われているアジュバントは沈降性のもののみでした。子宮頸がんワクチン(サーバリックス)にも、新型インフルエンザワクチンと同じような性質の油性アジュバントが含まれているのですが、これは殆ど話題に挙がることはありませんでした。ネット上での一部の噂として、不妊になるというようなことがささやかれていましたが…。
インフルエンザワクチンは、日本製のものはあまり効果がない、と言われています。これはワクチン学会でも周知の事実で、今はいかにして効果を上げるべきか、という事がインフルエンザワクチン製作での命題になっています。副作用が少なく、効果の高い次世代アジュバントの研究開発がそのうちの一つです。
新型インフルエンザワクチンができた時に、接種希望者に、熱とか腫れたりという副作用があるかもしれないけれども効果のあるワクチンと、副作用はあまりないけれども効果のないワクチンとどちらを受けたいですか?と質問した時に、殆どの方が副作用のない日本製のワクチンを打ちたい…と言われたので、なんとも複雑な心境です。別にそれなら打たなくても変わらないのでは?と思うのですが…。今は本当に、新しい副作用のないアジュバントの開発に期待したいところです。経鼻型の不活化ワクチンというのも開発中ですが、実現するのはまだまだ先です。が。不活化ワクチンですので、子どもには効果は期待できないようです。インフルエンザの生ワクチンもあり、現在アメリカ等では5歳以上のお子さんは接種できるようです。

ワクチンの添加物
ワクチンを安定させるためにいろいろな物が添加されていますが、問題になるのはワクチンの保存剤「チメロサール」かと思います。昔のインフルエンザワクチンは集団接種をしていましたので、一つの瓶は10mlと大きく、一つの瓶で何人にも接種をしましたので、感染予防、保存させるために「チメロサール」が使われていました。新型インフルエンザワクチンが作られたときは、一度に沢山の人に接種できるように、10mlの瓶が作られ、これには「チメロサール」が含まれていましたが、今は大きい瓶はありませんので、保存剤はあまり使用されなくなってきています。

[チメロサールとは]
チメロサールは、水銀を含む有機化合物(有機水銀)です。その殺菌作用は、昔から知られていて、1930年台から、種種の薬剤に保存剤として使われてきました。薬剤に病原体が混入して薬剤の使用で感染症となってしまうのを防ぐためなどの目的で使われてきたのです。チメロサールは、1940年ころからワクチンの保存剤として使われ始めました。チメロサーは、生きているウイルスや菌が入っている生ワクチンでは使われませんが、不活化ワクチンの保存剤として主に使われるようになりました。
微量のチメロサールのエチル水銀による毒性については、過敏症を起こすことがある以外、よくわかっていません。ただ、同じく有機水銀であり、化学構造も近いメチル水銀と近いと思われます。そこで、人が微量の物質を摂取する場合の安全基準については、メチル水銀の基準がチメロサールのエチル水銀の基準にも使われています。しかし、この安全基準は、種種の機関から出されていて、基準値が統一されているわけではありません。最近では、極微量とはいえ有機水銀を医薬品の中に添加するのは好ましくないと考えられるようになり、チメロサールを添加しないワクチンや減量したワクチンが増えており、チメロサールをワクチンの保存剤として添加しない方向にあります。

[チメロサール含有ワクチン]
現在チメロサール含有ワクチンであっても、含まれている量は本当に少量です。少し前に問題になっていた時は1mlあたり0.1rの量であったものが、今は0.004r〜0.005r程度です。ほとんど問題にならない量かと思います。最近のワクチンは1瓶が小さいもの、また一人用のワクチンが増えていますので入っているものは少ないようです。
インフルエンザワクチン:チメロサールフリーのもの;阪大微研、北里一人用シリンジタイプ、
                 それ以外のメーカーは0.004r/ml〜0.005r/ml含有
B型肝炎ワクチン:ビームゲン(化血研)
三種混合ワクチン:化血研

[フェノキシエタノール]
フェノキシエタノールというのはグリコールエーテルの一種で、インク・農薬・染料などの溶媒として使われるほか、香水の香りを逃がさないようにする保留剤としてや、殺菌作用(それほど強くない)を利用して化粧品の防腐剤として使用されています。緑茶など自然界に天然物として存在する成分でもあり、パラベンなどと比較して毒性は弱いです。
医薬品の保存剤としては、海外では20年ほど前から使用されており、日本では9年前からタケダという会社製のDPT(3種混合)・DT(2種混合)・破傷風トキソイドなどに使用され、安全性には問題がないとされています。体内に摂取されても24時間以内に排泄されるようです。軽い麻酔作用もあるようで、痛みが非常に少なくなるようです。

[フェノキシエタノール含有ワクチン]

三種混合ワクチン:タケダ
不活化ポリオワクチン:イモバックスポリオ(サノフィ)

フェノキシエタノールは、2008年より化血研がインフルエンザワクチンのチメロサールフリーのものとして使用をしていました。が、昨年度化血研のインフルエンザワクチン接種者でアナフィラキシーを起こした方が多かったので、原因は全く分からなかったのですが、フェノキシエタノールの使用をやめて、再びチメロサール含有に変更になりました。
ワクチンには保存剤以外にも、安定剤、等張化剤、緩衝剤 、希釈剤といろいろな物が必要になります。 何が問題になって何が問題にならないか…。今は大丈夫でも、今後は何か起こるのか?神経質になりすぎるときりがないよういな気もいたします。

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