[抗生物質と抗菌剤と抗菌薬について] 細菌のDNA複製に不可欠な酵素であるDNAジャイレースおよびトポイソメラーゼの活性を阻害することにより,濃度依存性の殺菌活性を示します。 抗菌スペクトルおよび薬理により2つのグループに分けられます 1)キノロン系(古いグループ): ナリジクス酸(NA ウィントマイロンR) ピロミド酸(PA パナシッドR) ピペミド酸(PPA ドルコールR) 抗菌作用の幅の狭さから今はあまり使用されていません。 2)ニューキノロン系(新しいグループ): 第3世代キノロン フルオロキノロン FQs ノルフロキサシン(NFLX バクシダールR) エノキサシン(ENX フルマークR) オフロキサシン(OFLX タリビッドR) シプロフロキサシン(CPFX シプロキサンR) トスフロキサシン(TFLX オゼックス・トスキサシンR) ロメフロキサシン(LFLX バレオンR・ロメバクトR) レボフロキサシン(LVFX クラビットR) 第4世代キノロン エイトメトキシキノロン EMQ スパルフロキサシン(SPFX スパラR) ガチフロキサシン(GFLX ガチフロR 2008年販売中止) モキシフロキサシン(MFLX アベロックスR) ガレノキサシン(GRNX ジェニナックR) シタフロキサシン(STFX グレースビットR) 今は抗菌剤と言えば、抗菌作用の幅の広がったニューキノロン系抗菌剤のことを指している、と考えてください。 [子どもと抗菌剤] 開発時の前臨床試験において幼弱動物への関節障害が認められたことが理由となって、多くのニューキノロン系抗菌剤(NQ剤)の小児への適応は認められておらず、その使用には現在大きな制限があります。 ノルフロキサシン(NFLX バクシダール)は2002年3月,世界で初めて小児への適応が承認されました。承認に至った根拠は
米国FDAは2004年3月、第一次選択ではないことを明記しつつ大腸菌による複雑性尿路感染症および腎盂腎炎に対するシプロフロキサシン(CPFX シプロキサン)の小児適応を承認しました。 2009年12月11日、ニューキノロン系抗菌薬であるトスフロキサシントシル酸塩水和物の小児用製剤(商品名:オゼックス細粒小児用15%)が薬価収載され、10月16日に製造承認を取得しており、2010年1月12日から発売されました。小児の肺炎と中耳炎に適応を持つ日本で初めてのニューキノロン系薬剤であり、現時点では海外でも発売されていません。 日本で小児に対して使えるNQ剤はこの3つ、経口薬はバクシダールとオゼックスの2種類になります。 [小児科領域のNQ剤の位置づけ] TFLX(オゼックス)が適応と考えられる症例 出来るだけ温存しておきたい抗菌薬のひとつ。いわば最後の切り札的存在 一般的な小児科開業医の立場では、重い細菌性の肺炎にお目にかかることは今ではもうあまりないと思います。私たちもほとんど抗生物質は処方しなくなりました。ところが耳鼻科領域では治らない中耳炎が非常に多いです。抗生物質を処方され続けても、中耳炎を繰り返し、常に耳漏があるお子さん。膿性鼻汁の取れないお子さん。滲出性中耳炎で水のなくならないお子さん。こういった方たちに、耳鼻科の先生方は延々と抗生物質を処方されますので、最後の切り札どころか、第1選択薬に近い状態で処方される先生が近隣におられます。中耳炎が怖いのは、そこから菌血症、髄膜炎を起こすからでありますが…。その為に、Hibや肺炎球菌の予防接種が必要になって、打たれるようになってきていると思うのですが! 延々と抗生物質を処方されている子どもさんたちを見ていると、ワクチンも打っているし、ちょっと抗生物質の使用はやめて考えてみても良いんでは?と思ったりします。2歳ごろになると、中耳炎にもあまりかからなくなりますし…。 ただ、保育園に行っていると、治って保育園に行けばまた感染して、ハナがでて中耳炎になって、ワクチンも間に合わなくて(接種開始が遅かった)入院を繰り返し、結局辞めざるを得なくなった方もありますが…。熱が出た時にはまず採血をして、白血球数が増えず、CRPの値も高くなければ抗生物質は処方しない、という対応をしていました。今ではあまり風邪もひかれなくなりました。 耳をみて中耳炎がないのに、何故抗生物質を処方するのかなぁという疑問。鼓膜の動きが悪い例、滲出性中耳炎のお子さんに抗生物質を出す不思議。風邪と同じく、中耳炎もウイルスが原因で、抗生物質は要らない例は多いと思うのですが…。こういう使われ方をされたら、最後の切り札もアッという間に耐性菌が多くなるのでしょうね…。 |