2006年度インフルエンザ情報
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No.1インフルエンザ流行予測 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 No.7 No.8 No.9 リレンザ No.10 今年度総括

●インフルエンザ情報 No.10 今年度総括 (2007年5月1日掲載)

  今年のインフルエンザは流行の立ち上がりが遅く、注意報の発令は第3週。ただ、そこからもすぐには多くはならず、じわじわ、だらだらといった上昇の仕方でした。当医院の周辺では、B型の流行があったために、他の地域とは違って早い時期から、中流行の状態でしたが、その後はずっと横ばい。全国的に多くなってきたのは第8週あたりからでピークは第11週から第12週でした。京都では第6週から増え、ピークは第8週から11週まで、全国の集計よりは少し立ち上がりや、減りだしたのも早かったようです。

 

 

  今年度は流行の始めにはAH1型(Aソ連)やB型のウイルスの分離の方が多く、2007年に入ってからAH3型(A香港)が増加し始め、第3週以降はB型とAH3型の混在の流行になりました。第9週以降はB型がAH3型の報告数を上回りました。

 

 

●インフルエンザ情報 No.8 (2007年3月26日掲載)
  3月22日10代の患者に対して、厚生労働省はタミフルの使用制限を決めました。死亡との因果関係があるのか、無いのか、はっきりと分からない状況での制限勧告でした。これも新聞によっては使用中止との報道をしているところもあります。殆ど中止の受け取り方がなされているようですが。昨年度から、異常行動としての転落死が指摘され、タミフルという薬に関して、このトピックスの欄でも取り上げましたが、もう一度考えてみたいと思います。

[タミフル問題の経過]
2001年 2月
  国内で販売が始まる
2003年 1月
  インフルエンザ流行で品不足に
2004年 6月
  服用者に意識障害が出たため、厚労省が輸入販売元の中外製薬に副作用の可能性を明記するよう指示
8月
  厚労省が5年間で1000万人分を国家備蓄する方針を表明
2005年11月
  服用後の異常行動で男子2人が事故死していたことが日本小児感染症学会で報告
11月
  服用した日本人の子供12人が死亡していたと米食品医薬品局(FDA)が報告
2006年 2月
  05年度補正予算に740万人分の備蓄が盛り込まれる
7月
  薬害タミフル脳症被害者の会が名古屋市で結成
10月
  厚労省の研究班が「異常行動に関連性があるとは言えない」との結果をまとめる
11月
  米FDAが「服用と異常の因果関係は否定できない」との内部資料を公表
2007年 2月
  服用後に男子中学生が仙台市内のマンション11階から転落死。厚労省が注意呼びかけ
3月
  厚労省が10代への使用中止を求める緊急安全性情報を出すよう中外製薬に指示
因果関係は、これからしっかり調べていく、という途中で、死亡例だけでなく転落して怪我をした例を含めると多数に上るため、警告を発する必要があった、ということです。
           

[10代だけが問題か?]
  10才以上という年齢を設けたのは、年少児では脳症発症等の問題があり、タミフル処方の選択を残した、ということです。そういう意味では勿論、9歳だから大丈夫ということも無く、3月25日には10歳未満の異常行動についての報告もなされています。 以下朝日新聞の記事です。
  『厚生労働省が服用と異常行動との関連性を調べているインフルエンザ治療薬「タミフル」について、01年2月の発売以降に報告があった約1800件の副作用のうち、異常行動につながる心配のある「精神・神経症状」(意識障害や異常行動、幻覚、妄想など)が少なくとも約280件あったことが24日、朝日新聞の調べでわかった。10歳未満の子どもの例も20件以上報告されていた。
  医薬品の副作用報告は、医師の判断に基づき医療機関から製薬会社に寄せられ、その後、会社から国に届く。同省は年に3、4回開く、薬事・食品衛生審議会の医薬品等安全対策部会で、最新の副作用事例をまとめた資料を配布し、死亡例など重大とみられる事例について分析をしている。
最近10回の部会にはかられた副作用報告(03年7月〜06年12月分)を集計したところ、「精神・神経症状」にあたる副作用が約280件あった。内訳は、意識レベルの低下や失神などの「意識障害」が63件、転落などの「異常行動」が46件、幻覚などを起こす「せんもう」が31件など。「自殺未遂」2件や「落ち着きのなさ」7件なども含まれていた。
このほか、突然死6件、骨折4件、脳挫傷1件などがあった。骨折や脳挫傷は、転落や転倒などの異常行動が原因だった可能性もある。
  同省がこれまで公表している飛び降り・転落などの異常行動は10代の16件と、成人の7件の計23件にとどまっている。』
  ただ、この報告に関しては、タミフルが原因かどうかは分かりません。こういったことは、タミフルが販売される前から沢山の小児科医が経験しているところであり、昨日こういう症状がありました、といってこられたお子さんがインフルエンザと診断された、という例はあげるに暇がありません。勿論タミフルは服用していません。飛び降りの例はこれまでは報告されていませんでしたが、今年は服用せずに、飛び降りた例が報告されました。 
以下読売新聞の記事です。
  『西日本で先週末、インフルエンザにかかった男子(14)が、自宅2階から飛び降り、足を骨折していたことがわかった。タミフルは服用していなかった。
  主治医によると、この男子は15日、38度の熱があり、翌日いったん熱が下がったものの、17日未明に自宅2階から飛び降りたとみられ、玄関先で倒れているところを発見された。
病院搬送時に熱があり、検査でB型インフルエンザに感染していたことがわかった。男子は「夢の中で何かに追われ、飛び降りた」と話しているという。
  タミフル服用後の「飛び降り」事例が相次ぎ、薬との因果関係が疑われているが、服用していない患者の飛び降り例はこれまであまり報告がないという。このケースは来月、厚労省研究班会議で報告される予定。』

[幼児の突然死問題]
  こういった異常行動とは別に、インフルエンザにかかった幼児が突然死する、という例が報告されています。脳症の一つのタイプとして報告されていますが、これがタミフルを服用した結果だという人もいます。動物実験の結果などから、タミフルが脳内に移行する例もあり、呼吸抑制に働くのではないか、と言われています。今まで述べてきた異常行動とは全く逆の方向の働きかたです。これもタミフルを服用せずに突然死しているケースのほうが多く、本当に薬が原因であるのか、詳細なる調査が望まれます。

[タミフルは服用すべきか?]
  これだけ色々なことが報道されると、保護者の方々は不安になられるかと思います。それまではインフルエンザイコールタミフル服用、でしたので。大流行してタミフルが無くなった2003年はタミフルが無いと大変なことになるとこちらがうんざりするくらいにマスコミは大騒ぎしていました。昨年も書きましたが、インフルエンザで本当にタミフルが必要な方はごく限られているのだと思います。誰でも彼でも皆タミフル、という今までの日本の状況が異常であったのだと思います。小学生以上の方は薬を飲まなくても安静にしてれば治る病気です。今後はそういったことをもっと徹底していく必要があるのでしょう。熱がごく短時間で下がる、というのは魅力ではありますが!では、幼児に対しては?これも昨年書きましたが、この薬のおかげで、高熱が続いて入院、点滴、検査が必要になったお子さんは本当に激減しています。比較的軽くすむお子さんもありますが、使ったほうがやはり安心、というように思います。 

  私個人的にはこういった異常行動が本当にタミフルが原因だとは断言できない、と思っています。薬を服用していない場合でも同じことが起こっていますので!タミフルを飲んでいなければ大丈夫、リレンザなら大丈夫、ということではない、ということをもう少し取り上げて欲しいとも思っています。ただ、成人が痙攣を起こした例などもあり、この年間800万人もの人間が飲んでいる薬、沢山の人が飲めば色々な症状が起こってくる可能性もふえるでしょうし、少なくとも、もともとインフルエンザや熱のせいで引き起こされる異常性を、高めてしまうような作用はあるのだろうとは感じています。薬と異常行動との因果関係がもう一度、再調査されるとのことですので、その結果タミフルが熱せん妄などが引き起こされる頻度を引き上げる、という結果がでるのであれば、幼児に対しても、使用は制限する必要が出てくるかも分かりません。前回の調査でも調べた3000人近いお子さんの9割がタミフルを服用していたという、この服用の多さのほうが問題になるかもしれません。
●インフルエンザ情報 No.7 (2007年3月19日掲載)

  全国的にはインフルエンザはまだピークではないのでしょうか?増えかけて留まって、また増えて、という状態のようです。A型もB型も混在の流行で、前にB型が流行していたところでは、今度はB型。前にA型が流行していたところではB型、と本当に予測しがたい状況です。データは2週前の第9週のものです。
  2007年第9週のインフルエンザの全国レベルでの定点当たり報告数は、23.4(患者発生報告数112,057)と第2週以降増加が続いています。都道府県別では、福岡県(43.2)、三重県(40.4)、福井県(38.0)、沖縄県(32.8)、大分県(32.7)、宮崎県(32.1)、愛知県(31.7)、長野県(30.7)の順です。注意報レベルのみを超えている保健所地域は313(45都道府県)と減少しまたが、反対に警報レベルを超えている保健所地域は148箇所(35都道府県)と前週と比べて大きな増加がみられています。


定点当たり発生数の推移(京都市)[平成18年1月2日〜平成19年03月04日まで ]

  第36週以降これまでに全国の衛生研究所から報告されたインフルエンザウイルスの分離報告(総報告数1,333)では、AH1(Aソ連)亜型7.4%(報告数99例)、AH3(A香港)亜型55.9%(745例)、B型36.7%(489例)です。この様に、今シーズンはAH3亜型とB型の混合流行となっています。

  今シーズンのインフルエンザの流行は1月中旬(2007年第3週)から始まりましたが、6週間後の第9週でもまだ増加が続いています。これまでの各シーズンの流行をみると、今シーズンの流行のピークは近いと思われますが、今後ともインフルエンザの発生動向には注意が必要です。

●インフルエンザ情報 No.6 (2007年3月5日掲載)

  インフルエンザは横ばい状態で続いています。5年前の2001−2002シーズンの流行に近いようです。それよりも数は少ないですが。最近は簡単にA型かB型かが分かるので、今年は画一型の流行ではない、ということがはっきり分かります。まとめてみればちょっとした流行の形式のデータが取れるかも分かりません。
  2007年第7週のインフルエンザの全国レベルでの定点当たり報告数は、11.9(患者発生報告数56,852)と第2週以降増加が続いています。都道府県別では、愛知県(32.9)、福岡県(21.7)、三重県(21.5)、山形県(20.3)、岐阜県(15.8)、宮崎県(15.3)、大阪府(15.3)、大分県(15.2)の順です。注意報レベルのみを超えている保健所地域は228(40都道府県)と増加し、警報地域を超えている保健所地域も37箇所(13府県)と前週と比べて増加がみられています。全国平均を上回っている府県は中部、近畿、九州地方に多く、中国、四国地方では全ての県が全国平均を下回っています。

 

  2006/07シーズンとしては、2006年第36週以降これまでに153,667例の報告があり、年齢別では5〜9歳が28.6%と最も多く、次いで10〜14歳(23.2%)、0〜4歳(19.2%)の順となっています。例年と比べると4歳以下の割合が減少している一方で、10〜14歳の割合が増加しています。

 

  第36週以降これまでに全国の衛生研究所から報告されたインフルエンザウイルスの分離報 告(総報告数660)では、AH3亜型(A香港型)57.0%(報告数376例)、B型36.1%(238例)、AH1亜型(Aソ連型)7.0%(46例)です。依然としてAH3亜型が最多ですが、最近ではまたB型の報告も増加してきています。

 

●インフルエンザ情報 No.5 (2007年2月19日掲載)

  早々にインフルエンザは峠を越した感です。今年はA型、B型混在して流行しています。初期のB型の流行は日本の他の地域を見ても、随分局地的に流行っている・・・という印象です。中学生や小学校高学年に集中していた、というのも特徴です。年齢の小さいお子さんや、大人の方は余りありませんでした。その後A型が増えて、小さいお子さんも罹患し、又今は小さいお子さん、大人のB型も増えてきました。チョッと流行の傾向が読めません。
  次のデータは感染症情報センターのものなので、2週前のデータです。流行が始まった頃のものです。
2007年第5週のインフルエンザの全国レベルでの定点当たり報告数は、5.3(患者発生報告数25,190)と前週の約2.1倍に増加しました。都道府県別では、愛知県(19.3)、宮崎県(14.3)、山形県(14.1)、福島県(8.5)、福岡県(8.3)、三重県(7.8)、岐阜県(7.7)、大分県(6.9)の順になっています。注意報レベルのみを超えている保健所地域は63(22都道府県)と増加し、警報地域を超えている保健所地域も7箇所(愛知県、宮崎県)と増加がみられました。

 

 

  第36週以降これまでに全国の衛生研究所から報告されたインフルエンザウイルス分離報告では、AH3亜型(A香港型)57.0%(報告数98)、B型32.0%(55)、AH1亜型(Aソ連型)11.0%(19)の順となっています(図3)。2006年第50週以降では、AH3亜型の割合が増加してきています。

 

●インフルエンザ情報 No.4 (2007年2月5日掲載)

  予想通り、今週半ばにインフルエンザの流行期に入ったとの厚生労働省の発表がありました。2週遅れの発表と市中で流行りだしたという感覚がほぼ一致しますね。他地域ではA型が多いようです。
  感染症発生動向調査によると、2007年第3週の定点当たり報告数は1.06(報告数4,960)であり、今シーズンでは初めて、全国的な流行の指標である定点当たり報告数1.0を上回りました(図1)。
都道府県別では宮崎県(3.6)、福島県(3.2)、愛知県(2.8)、山形県(2.6)、岐阜県(2.1)、滋賀県(2.0)、福岡(1.7)、茨城県(1.6)、京都府(1.6)の順ですが、九州、近畿、中部、および北関東〜東北地方南部の地域において、全国平均を上回っている府県が多いです(図2)今年は、流行している府県としていないところとの落差が随分激しいです。例年のように西側から、東側に増えてくる、ということでもないようです。

 

 

  今シーズン(2006/07シーズン)のように、定点当たり報告数が1月以降に初めて1.0を上回ったシーズンは、1996/97シーズンから昨シーズン(2005/06シーズン)までの過去10シーズンでは、計3回(2000/01シーズン、2001/02シーズン、2004/05シーズン)みられています。過去10シーズンで12月中に流行開始となったシーズンでは、ピークは第4〜5週となっているのに対して、1月以降に流行が開始したシーズンではピークはより遅い時期となっています。(2000/01シーズンは第11週、2001/02シーズンは第8週、2004/05シーズンは第9週)(図1)。今後、インフルエンザの報告数はピークに向けて更に増加してくるものと予想されます。
  始まりは多かったB型も、少なくなっているわけではありませんが、今シーズンは混在型の流行です。少なかったAH3型も増えてきています。先週も述べたように、B型のウイルスは流行した2年前とは少し変異していますので、2年前に感染して、そして又今シーズンも感染した・・・というお子さんはみられています。しかもワクチンをうっていても!ワクチンは予想とは外れていませんので、つくずく、B型は抗体の上昇が悪いようですね。

 

●インフルエンザ情報 No.3 (2007年1月22日掲載)

  インフルエンザの全国レベルでの定点当たり報告数は、第1週は0.22(患者発生報告数1,010)と減少しました。診療日数が少ないせいもあります。管内が注意報レベルを超えた保健所地域はなく、警報レベルを超えた保健所地域も存在していません。都道府県別の定点当たり報告数は、宮崎県(2.03)、岐阜県(1.22)、沖縄県(0.84)、愛知県(0.70)、長野県(0.60)の順となっています。

 

  第36週以降これまでに全国の衛生研究所からのインフルエンザウイルス分離報告では、B型47%(報告数27)、A/H1亜型(Aソ連型)22%(報告数13)、AH3亜型(A香港型)31%(報告数18)が報告されています。流行開始まではB型の報告が随分多かったです。当院でも第1例はB型でした。その後A型が増えてきています。AH3亜型も最初の頃よりは増えてきているようです。

 

●インフルエンザ情報 No.2 (2006年12月25日掲載)

  第49週における定点あたりの報告数は0.15(報告数657)で。まだ全国的な流行の開始には至っていません。都道府県別では宮崎県(3.27)、大分県(0.86)、岐阜県(0.72)、広島県(0.72)、沖縄県(0.64)、福井県(0.41)の順となっています。宮崎県では管内に2週連続で注意報レベルを超えている保健所がみられ、すでに地域的な流行が始まっているものと思われます。

第36週以降これまでに、インフルエンザウイルスの分離は広島県、山梨県、滋賀県、岡山県、 大阪府、兵庫県等の全国の衛生研究所から報告されており、B型18件(56.3%)、AH1(Aソ連)型12件(37.5%)、AH3(A香港)型2件(6.3%)の順となっています。今シーズンのインフルエンザの報告は今までのところ、例年と比べて早く増加しているとは言えませんが、全国的な流行の時期は近付いているものと考えられます。

  定点報告以外で、学校の集団欠席者の多いところは、岐阜県、愛知県、滋賀県などで、これらはいずれもB型のウイルスが陽性だということです。今の時期にB型が流行の中心になることはかつて無かったことですが、昨シーズンから、だらだらと流行が続いているようにも思われます。
  B型は一昨シーズンには山形系統の株(そのほとんどはB/Shanghai/361/2002類似株)が国内分離報告数の約55%を占め、流行の主流でしたが、昨シーズンのB型の国内分離報告数は約10%にとどまり、これらは解析の結果、すべてビクトリア系統の株であり、そのほとんどはB/Malaysia/2506/2004類似株でした。近隣のアジア諸国や欧米諸国においても分離されたB型ウイルス株の大半はビクトリア系統であり、世界的にもB型の流行は山形系統からビクトリア系統へと移行しています。今シーズンもビクトリア系統の株がB型の流行の主流になると考えられ、また、ビクトリア系統の株に対する抗体保有率はすべての年齢群で低いことからも、十分な注意が必要でしょう。昨シーズンは、シーズン後半の4〜5月に山口県、埼玉県、横浜市で、また5〜6月にかけて札幌市でビクトリア系統の株の流行がみられ、さらに沖縄県でも5月から8月の非流行期にA/H1型およびビクトリア系統の株の流行がみられました。今シーズンにおいてもすでに、9月には広島県からビクトリア系統の株が分離されています。今年はこのB型が流行の主流になるのでしょうか?!

●インフルエンザ情報 No.1 インフルエンザ流行予測(2006年11月20日掲載)

 


1. 昨シーズンの流行の規模は、中流行でした。周期的にはここ10年間、中、大、中、中、小、小、中、中、大、中流行と経過しています。ここ4年間は、小流行もなくある程度の規模の流行が続いています。大流行が1年空けて連続することは稀(19シーズン統計)で、大きな流行にはならないだろうと考えます。
2. ウィルスの型でみると、一昨年は後半B型が主になり流行規模を大きくするという近年では非常に珍しい流行形態でした。昨シーズンはA香港型(H3N2)、Aソ連型(H1N1)が協調して中流行でした。
A香港型(H3N2)は、ここ17年間連続して出現しています。今年も続くと考えます。Aソ連型(H1N1)は、昨年4年ぶりにある程度の規模で出現しました。これも続くと考えます。B型は一昨年に大流行しました。B型は一年おきに流行する傾向がここ10年の統計としてあり、今年はまた流行しそうです。そうするとA香港型(H3N2)、Aソ連型(H1N1)が協調し、それにB型が加わることになり、流行の規模が小さいときの組み合わせです。(ただ一昨年のように抗体保有率の少ないB型ウイルスが出現したときは、流行規模は大きくなると考えられます)
3. 今年の5月〜9月の天候をみますと、5月、6月は各地で大雨、7月は「平成18年豪雨」と命名されたほどの降水量でした。8月、9月は全国的に降水量は少なく平年を下回りました。5〜7月の大雨は、流行規模が小さくなる因子になる可能性があります。

  したがって全体的に、今年の冬のインフルエンザ流行の規模は小〜中流行で、大きくはならないと予測します。ただし、B型が主流の流行になれば一昨年のような大流行になる可能性はあります。
  第36週に富山県で、タイから帰国後に発症した小児からB型が分離され、第37週に兵庫県で、フィリピンから帰国後発症した成人からAH3(ソ連型)亜型が検出されています。又、第38週に滋賀県で1件、広島県で2件B型が分離され、広島では地域での小流行が報告されています。第39週には大阪府で香港から帰国後に発症した母親より感染した小児から2件、岡山県で中国から帰国後に発症した父親から感染した小児などから3件、計5件のAH1(香港型)が報告されています。第44週の定点当たり報告数の多い都道府県は沖縄県(0.14)、広島県(0.04)、千葉県(0.03)、岐阜県(0.03)、岡山県(0.03)といったところです。


  ここ数年、沖縄での夏季のインフルエンザの流行と、その後も海外から持ち帰ったインフルエンザの発生がパラパラ見られるのが特徴です。上図のAH1型とAH3型は帰国後発生によるものですが、B型は広島で小流行がみられたものが中心です。B型ウイルスは昨年検出されたのと同じ系統のもので、1昨年大流行した時のウイルスとは少し変異しているようです。系統が変わったものの昨年はB型は大きな流行にはなりませんでしたが、さて、今期すでに京都も含め、B型が比較的多く検出されており、今年の流行はどうなるでしょうか??
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