日本脳炎ワクチンについて(06/10/23更新)

2006年、日本脳炎患者が高知県1例、熊本県で3例、福岡県で1例発生しました。熊本県の患者3例のうち1例の患者は、山鹿市在住の3歳男児、9月10日から頭痛、発熱、12日に痙攣症状を呈したため入院治療中です(10月6日熊本県発表資料より)。就学前の日本脳炎患者が報告されたのは、平成2年以来。昨年の患者は、7名のうち5名が9月に発病しています。
現在、積極的接種をひかえている状態の日本脳炎ワクチンについて、少し考えてみたいと思います。

日本脳炎患者発生数

昭和62年

44

 

昭和63年

31

 

平成元年

32

 

平成2年

55

 

平成3年

14

 

平成4年

 

平成5年

 

平成6年

 

平成7年

 

平成8年

 

平成9年

 

平成10年

 

平成11年

 

平成12年

 

平成13年

 

平成14年

 

平成15年

 

平成16年

 

平成17年

・36週届出(三重県:発病:8月1日,65-69歳男性,海外渡航歴なし)
・43週届出1人(佐賀県:65-69歳女性)
・44週届出3人(静岡県:30-34歳男性,島根県,熊本県:ともに70歳以上男性)
・45週届出1人(岡山県:55-59歳男性)
・48週届出1人(岡山県:70歳以上女性)

平成18年

10月15日現在
・35週届出1人(高知県:45-49歳男性)
・39週届出1人(熊本県:65-69歳女性)
・40週届出1人(熊本県:1-4歳男児)
・41週届出2人(福岡県、熊本県で各1人)

日本脳炎ワクチンは日本で開発され1954年から接種が始まりました。積極的なワクチン政策のおかげで、患者数は1966年をピークに激減し、1980年代より2桁、平成4年(1992年)以降は1桁台の発生数になっています。今回の3歳児の患者さんは、平成2年に4歳児の日本脳炎患者が報告されており、それ以来16年ぶりの発病です。ワクチンは未接種でした。過去にDPTワクチンが中止になった時に、百日咳が大流行しましたが、日本脳炎の場合はワクチン接種を積極的に行わなくなってからも、急激には増えていません。この理由は、日本脳炎が少なくなった原因が、ワクチンのおかげだけではなく、コガタアカイエカが増殖する水田の減少や稲作方法の変化により、コガタアカイエカの数が減少したこと、又、増殖動物である豚の飼育環境が変わり、豚を刺した蚊が人の居住地に飛来し人を刺す機会が減少したこと、などの為もあるのでしょう。または症状からは他の病原体による脳炎との区別がつきにくく、珍しい疾患となったこともあり、見逃されている可能性もあるのかもしれません。ただ、今のようにワクチン接種がおこなわれず、抗体を持っていない子供の数が増えると、日本脳炎の子供の発生の数も必ず増えてくるでしょう。日本脳炎ウイルスは日本ではまだまだ、日常的に発生しています。

新しいタイプの日本脳炎ワクチンは今年の2月認可が下りませんでした。この理由は、力価が少し高く、局所反応が従来のものよりも少し多かったので、もう300例の追加症例を求めたためです。新しいワクチンの場合も100%、ADEMが出ないという保障はありませんが、発生頻度は減るであろうと言われています。厚労省も新しいワクチンが問題になっては困るのでかなり慎重になっているのでしょう・・・。しかし、新しいワクチンは来シーズン認可がおりても、市場に回るのはさらに1シーズン先?とも言われています。あまり間が開くと、追加接種をされていない人の抗体価が落ちてしまいますし、7歳半の公費負担の年齢も過ぎてしまうかもしれません・・・。

京都の今私たちが住んでいるところには、豚を飼っている農家はありませんので、感染する機会は少ないでしょう・・・。日本脳炎ワクチンは一斉に集団で行わなくても良いかもわかりません。宮崎県など日本脳炎ウイルスの多い1部の地方では、昨年5月末以降も、ワクチンの接種を普通に行っている地域もあるようです。ご心配の方はご相談ください。

copyright(c) 2007Yamauchi Clinic. all right reseaved.

| 閉じる |