エンテロウイルス(EV)D68型感染症(2015/10/19更新)

[病原体]
エンテロウイルス感染症のところを参照してください。エンテロウイルス属はさらに遺伝子型によりエンテロウイルス A〜H (種)に分類されます。EV68は D に属するためEV-D68とも表記されます。EV68の感染による主要な臨床所見は呼吸器症状です。

[疫学]
エンテロウイルスによる感染症は夏から秋にかけて多く発生し、冬に減少します。乳幼児、子供、青少年が発症しやすく、大人は無症状もしくは軽症例が多いとされています。EV68による感染症は、通常感冒(軽度の発熱・鼻水・くしゃみなど)の軽症から、下気道炎(気管支炎や肺炎)、さらに下気道炎+呼吸困難(喘鳴)などまで様々な所見を呈することが知られています。
それに加えて、米国カリフォルニア州で、2012〜2014年の間に、前部脊髄炎を伴う弛緩性麻痺を発症した23名の小児患者のうち2名の上気道からEV-D68が検出されたことから、弛緩性麻痺との因果関係が示唆されています。

[最近の流行]
検出頻度が少ないことから、極めて稀な呼吸器感染症の原因ウイルスの1つであると考えられていました。わが国では、2005〜2010年までは毎年数例のみでしたが、2010年と2013年は100例を超えて報告されています。2014年に広島県でEV-D68による弛緩性麻痺の報告がありました。今年は10月13日までに全国で51例報告されています。
海外では、2014年8月に米国ミズーリ州とイリノイ州でEV-D68による呼吸器疾患のアウトブレイクが発生し、2015年1月までに全米から1,153名の検査陽性患者が報告されました。因果関係は確定していませんが、14名の死亡例から同ウイルスが検出されています。また、米国コロラド州では、EV-D68による呼吸器疾患のアウトブレイクに関連した12名の弛緩性麻痺あるいは脳神経機能異常をおこした小児患者が報告されています。


国立感染症研究所は10月15日にこの「エンテロウイルスD-68型」の感染が、9月に東京や埼玉県内で相次いで確認されたと発表しました。これは関東圏に限った事ではありませんね。先月は重い呼吸器感染症のお子さんが本当に沢山おられました。が、今はあまり目立ちません。上述のとおり夏場に多いウイルスですので、今から広がっていくことはなさそうです。

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