鳥インフルエンザH7N9(13/4/15更新)

最初の報告は3月31日でした。中国の国家衛生・計画出産委員会はインフルエンザA(H7N9)に感染した患者が3人発生したとWHOに報告しました。患者は3月29日に中国の疾病予防管理センターで実施された検査で確定されました。患者は上海市で2名、安徽省で1名発生。発症日は2月19日から3月15日までの間で3人とも重症の肺炎と呼吸困難を合併した呼吸器感染症を発症し、3月31日の時点で、うち2人は死亡し、1人は現在重篤な状態にあるとのことでした。
4月14日時点で、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒトへの感染が60例確認されています。年齢は4〜87歳で約1/3は女性です。13人が死亡し、残りのほとんどの症例は重症であるということです。 これまで感染者は上海市周辺の中国東部に限られていましたが、首都北京で13日午前、同市内に入院中の7歳の女児が、鳥インフルエンザ(H7N9型)に感染していたと発表し、北京での初の感染確認となりました。両親は生きたニワトリなど鳥類を販売する仕事に就いていたということです。14日は河南省からも報告があり、北京市に続き上海市周辺の中国東部から他地域へ感染が広がり始めているようです。

[インフルエンザウイルス]
インフルエンザウイルスの中で鳥類に感染するのはA型であり、抗原型では (H1〜H16) × (N1〜N9) と多くの組み合わせがあります。ヒトインフルエンザウイルスでは、現在まで流行を繰り返してきた型は、(H1, H2, H3) × (N1, N2) の組み合わせのみです。
1997年に香港で初めて鳥のH5N1型が報告されて以来、1999年にはH9N2型、2002年にはH7N7型、またH7N3型、H1N2型などがみられています。2009年に新しい豚型のウイルスAH1(09)によるインフルエンザの流行が起きるまでは、H5N1型が変異して新しいインフルエンザのパンデミックを起こすであろうと、戦々恐々として世界中で繰り返し々、警告されていましたが、今はほぼ忘れ去られたような状態になっています。実際に人が発症している数も年々減り続け、2011年は62名うち死亡者34名、2012年は32名うち死亡者20名といった状況です。
インフルエンザH7亜型ウイルスは、通常、鳥の間で循環しているインフルエンザウイルスのグループです。インフルエンザA(H7N9)ウイルスはH7亜型ウイルスのサブグループの一つです。複数のH7亜型ウイルス(H7N2、H7N3およびH7N7)の人への感染が時折発見されてきましたが、これらの感染のほとんどは、家禽におけるアウトブレイクに関連して発生しました。オランダで発生した1例の死亡を除いて、感染は主に結膜炎や軽度の上気道症状でした。H7N9ウイルスの人への感染は中国からの最近のレポートがあるまで報告されていませんでした。2008年にはH5N1型よりもH7N2型やH7N3型のウイルスが人の上気道にあるレセプターに結合しやすく、ヒトヒト感染はこのH7型ウイルスの方がパンデミックを起こすかも、という注意喚起もありました。が、結局おこったパンデミックは豚型のウイルスであったために、人に感染するのはH1、2、3の亜型のみ…という見方に変わっていました。
H7N9型ウイルスは今までのタイプと違って鳥にとっては高病原性ではないため、大量に鶏が死んでいるという報告もなく、専門家は渡り鳥などの野生動物によって中国に持ち込まれた可能性を排除できないと分析しています。それによると、今回のウイルスは、遺伝子配列の一部がユーラシア大陸を渡る鳥のものに近く、渡り鳥などの野生動物が直接人に感染させた可能性よりも、寄生した動物を通して人に広がった可能性が高いということです。渡りのピークに当たることから、観測範囲を中国の華北や東北地方にも広げる必要があるとしています。

[症状]
現在の報告までで、死亡率は約20%。完治者の数、性別、年齢分布等といったまとめは今のところありません。
中国の重症例の報告では、咽頭痛と熱発から始まり、3.4日目頃に咳や呼吸困難はないものの肺炎がX線上確認される状態になり、その2.3日後に突然呼吸不全の状態になり、浮腫、チアノーゼを呈しながら発症から発病後10日前後でに死亡する、というものでした。

[感染経路]
確定例の中には、動物や動物のいる環境との接触があった者がいますが、全例ではありません。ウイルスが上海の市場のハトから見つかっています。人がどのように感染したかは分かっていません。動物から人への感染の可能性、同様に人から人への感染の可能性に対して調査が進められています。

[診断]
今までのインフルエンザの検査キットでA型インフルエンザであることは確認できます。また厚生労働省は、12日にこのウイルスを検出できる検査キットが完成したと発表しました。来週半ばにも、全国の検疫所や地方衛生研究所、計90カ所に配備され、検査態勢が整う見通しです。H7N9型の感染が疑われる人が出た場合、鼻やのどから粘膜を採取し、この検査キットで感染の有無を調べる。早ければ6時間程度で結果がわかるということです。

[治療]
中国で行われた臨床検査の結果からは、インフルエンザA(H7N9)ウイルスは、ノイラミニダーゼ阻害剤(オセルタミビルおよびザナミビル)として知られている抗インフルエンザ薬に感受性があることが示されています。これらの薬は病気の過程で早期に投与される場合、季節性インフルエンザウイルスとインフルエンザA(H5N1)ウイルス感染に対して有効であることが判明しています。ただし、現時点では、H7N9感染症の治療のために、これらの薬剤を使用した経験はありません。

3月上旬に診断が確定していたのに、発表は故意に遅らせられた…というような噂もあります。中国という国は、政権交代に関るからだからなんだか、なんでも事実を速やかに公表しないところですので、またか、という思いです。が、それでも2003年に発生したSARSの時と比べると、WHOへの報告、中国の一般国民に知らされたスピードというものは、目を見張るものがあるほどのようです。現地報道(中国青年報)では実名、写真入りで載せられていたそうです。こうやって思い返すとSARSはいったいどこに行ったのでしょう?噂通りに中国の細菌兵器が漏れただけだったのでしょうか?
いまのところ感染源が特定されない、という事もありますが、同一家族内の発症でもヒトヒト感染は起こっていませんので、必要以上に心配はしないでおきたいと思います。

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