熱性けいれん(12/8/6更新)

[熱性けいれんとは]

38℃ 以上の高熱に伴って乳幼児期に生ずるけいれん(ひきつけ)で、脳炎や髄膜炎など中枢神経感染症、代謝異常やその他明らかな痙攣の原因となる病気のないものをいいます。小児科領域ではよく遭遇する疾患で、救急車で運ばれることが最も多い病気です。が、多くは短時間でおさまり、反復したとしても約9割の子どもは2回以下の反復にとどまります。初回の発作は、90%は6ヶ月から3歳に起こります。日本の子どもの有病率は高く、7〜8%にのぼります。

[原因]
熱性けいれんの原因ははっきりとはわかっていません。子供の脳は成長過程のため、発熱で脳に異常な電気信号が起こり、痙攣が起こるのではないかと考えられています。遺伝ではありませんが、両親とも小さいとき熱性けいれんの経験があれば、熱性けいれんの発症の可能性は40〜80%位、片親のみ陽性の場合は20〜30%、両親とも熱性けいれんの既往のない場合は約20%と言われています。 ほとんど6歳を過ぎると熱が出てもけいれんはおこさなくなります。

[症状]
全身性で左右対称性のけいれん。発作持続時間は5分以内で発作後はすみやかに意識が回復します。
単純型:普通の活動をしていた子供が、突然に全身(手足・体・首・顔)を硬直させ、意識消失、眼球上転あるいは正中位固定、無呼吸、口唇のチアノーゼを伴なう発作(強直性けいれん)で始まり、続いて手足をビクンビクンさせる発作(間代性けいれん)に変わっていきます。全身の強直性けいれんのみ、あるいは、間代性けいれんのみでも典型例に含まれます。この様な発作型を示し、発作回数が少ないものを単純型と呼びます。
複雑型:1)持続時間が15分以上、2)焦点性発作、3)24時間で2回以上繰り返す、のいずれかを満たすものを複雑型としています。

[家庭での対処法]

衣服はゆるめて、特に首のまわりをゆるくして、呼吸を楽にする。
5分〜10分くらい様子を見る。
吐いたときに吐物が気管に吸い込まれないよう、顔を横に向ける。
吐いた物や分泌物が口のまわり、鼻にたまっていたら、ガーゼで拭き取り、外に出す。
寝かせて安静にする。
舌をかむ心配はほとんどないので、歯をくいしばっている時でも、強引に物を口へ入れないようにする。
体を強くゆすったり、大きな声で呼んだりはしない。安静第一。
以下のようなけいれんが続くようならば、かかりつけ医、救急病院、救急車へ。
けいれんが15分以上続くとき。
短い間隔で繰り返しけいれん発作が起こり、その間ずーと意識が回復しないとき。
手、足など身体の一部のピクピクけいれん発作があるとき。
発熱とけいれん発作に加え、意識障害やマヒなど他の神経症状をともなうとき。
初めてけいれんを起こしたときは、本当に熱性けいれんかどうか確かめる必要があるので、落ち着いてからでも構いませんので受診はしてください。

[治療]

熱性けいれん懇話会による「熱性けいれんの指導ガイドライン」では、以下の適応3項目のいずれかに該当する場合、熱が出たらすぐに抗けいれん剤(ジアゼパム坐薬:商品名ダイアップ)を投与することが望ましいとしています。
1. 15〜20分以上続くけいれんが、過去に1回でもあった場合。
2. 要注意因子中2項目以上が陽性(複雑型)で、過去にけいれんを2回以上経験している場合。
3. 短期間にけいれんを頻発する場合(例:半日で2回、半年で3回以上、1年で4回以上)。
要するに、医者からみてこれは通常の単純な熱性けいれんではないなと判断したときに、次回から予防するよう指導することになります。 1回でも起こしたら次からすぐ予防ということではありません。

[予後]
1.てんかん発症に関する要注意因子
(1) 熱性痙攣発症前の明らかな神経学的異常もしくは発達遅滞
(2) 非定型発作( 1)部分発作、2)発作の持続が15〜20分以上、3)24時間以内の繰り返し、のいずれか1つ以上)
(3) 両親・同胞におけるてんかんの家族歴
*7歳までにてんかんを発症する確率は、上記の因子がない場合(熱性痙攣患児全体の60%が該当)で1%、1因子のみ陽性(34%)で2%、2〜3因子陽性(6%)で10%といわれています。
2.熱性痙攣再発に関する要注意因子
(1) 1歳未満の熱性痙攣発症
(2) 両親又は片親の熱性痙攣の既往
※いずれも熱性痙攣の再発率は約50 %に達します。

熱性けいれんは、本当によく見られるもので、待合で待っている間や帰宅途中で起こされたり、診察している最中に発作を起こされたこともあります。近所に住んでおられて、今けいれんを起こしました・・・と飛び込んでこられることも数多いです。まあ、確かに今まで元気にしていたお子さんが突然様子がおかしくなって、白目をむいて、時には口から泡も吹いて、ガクガクとしだすわけですから、初めてそういう様子を目の当たりにしたら、パニックになる気持ちもわかります。ビクンビクンとした状態が収まる時には、呼吸が止まるし、みるみる顔色も真っ青になりますから、怖くない訳はないですね。けいれんが起こった時に家にいたら、救急車を呼んでいる間や、医院に受診するまでにおさまることがほとんどなのですが、医院にいる時に起こったら、時間を計ってとりあえず待つわけですが…。保護者の方にしてみれば、何もしてくれないのか、と不安に思われることも多いので、5分以上続く場合は、ついついダイアップを使ったりしています。そうこうしているうちにおさまるので落ち着いたら帰っていただいているのですが、時々一度泣いて目が覚めて大きい発作が治まってもその後のぴくぴくした状態が取れなかったり、インフルエンザが陽性でけいれんが長引くときは、病院に行っていただくこともあります。1才以下の熱性けいれんは細菌性髄膜炎であることも多かったのですが、ワクチンを受けられる方が増えて、これは本当に少なくなったと感じます。

copyright(c) Yamauchi Clinic. all right reseaved.