先天性風疹症候群

 風疹に感染して一番問題になるのが、この先天性風疹症候群です。

[原因] 妊娠初期に風疹ウイルスに感染すると、ウイルスは胎盤を通過するので胎児に感染し、先天異常を起こします。その確率は妊娠4週目までに罹患した場合50%以上、5〜8週で35%、9〜12週で15%、13〜16週で8%、20週以降は殆ど影響はないといわれています。母親に発疹が出ても、胎児が感染するのはその3分の1、さらに先天性風疹症候群をひき起こすのはその3分の1といわれています。

[症状] 三大症状@白内障又は緑内障A先天性心疾患B感音性難聴。他に網膜症、骨端発育障害、低出生時体重、血小板減少性紫斑病、肝障害などの症状があります。難聴は妊娠初期だけでなく、6ヶ月目くらいまでの感染でもおこります。1965年、沖縄で風疹が大流行し、400人もの難聴児が生まれ、この年令の子供たちのための聾学校が作られました。その後の流行時には多数の妊娠中絶が行われた為、先天性風疹症候群の子供が生まれるのは減っています。

[治療] 白内障、緑内障は手術が可能です。視力に影響の出る場合も多いですが。心疾患は軽いものは自然治癒するものもあります。手術が必要になります。難聴は治りませんが、最近は人工内耳の技術が進歩しているので、この手術をうければ、ある程度の聴力は保証されます。

[予防] 1977年から女子中学生への風疹ワクチンの集団接種が行われるようになりました。今は1歳から7歳半までが対象です。このおかげで風疹の流行がなくなり、先天性風疹症候群の発生は2000年からは毎年1例ずつのみになっています。今年はこの3月16日に1例報告されています。逆に風疹が流行しなくなった結果、ワクチンによる免疫が低下してきて、しかも予防接種による免疫が残っているために、感染がはっきりしなかったのに子供が先天性風疹症候群であったり、一人目の妊娠時にはワクチンによる免疫が確認されたのに、二人目の出産時に赤ちゃんが先天性風疹症候群だった・・・というようなケースも確認されています。中学生の時にワクチン接種を受けたにもかかわらず、妊娠初期に風疹に感染し、生まれた子供に障害がでた症例は、2008年の調査で日本国内で31件あることが分かりました。これをうけて、安全のためには、成人初期にもワクチン接種が必要になるでしょう。

 妊娠中には予防接種は受けられませんが、今後妊娠を予定している女性の場合には、風疹にかかっていなければ予防接種を過去に受けていても、十分な免疫があるか否かを確認し、必要に応じて予防接種を再度受けるようにした方が安全といえるでしょう。その後2〜3ヶ月は妊娠しないように気をつけてください。ただ、接種後に妊娠が判明した場合でも、これまでに障害が出た報告は1例もありません。障害が予防できるのであれば、予防するにこしたことはありません。ただ、妊娠中に風疹にかかってしまった時に中絶するべきかどうか・・・・先天性風疹症候群のお子さんを育てているお母さんの声の載ったページがありましたので、見てみて下さい。

 

copyright(c) 2004 Yamauchi Clinic. all right reseaved.