ヘルペス歯肉口内炎

 ヘルペスという言葉をお聞きになった事がある方は多いと思います。ラテン語で「這う」という意味があります。水ぼうそうの原因もヘルペスウイルスですが、このヘルペス歯肉口内炎は同じペルペスでも別の群に属します。突発性発疹の原因もヘルペスウイルスですが又別の群です。今週はこの患者さんを診ましたのでお話します。

[原因] 単純ヘルペスウイルスT型、稀にU型。乳幼児が初めてこのウイルスに感染した時に、歯肉口内炎というかなり重い症状が出ます。2歳くらいまでの子供に多いですが、過去に感染していなければ大人でもこの状態になることがあります。唾などからウイルスが飛び散ってうつりますが、感染力は弱いです。

[症状] 39度以上の高熱から始まり、2日目以降に口内炎がみられ、歯茎が赤く腫れあがり、盛り上がって歯が小さくなったように見えます。少し触っただけで歯茎から出血します。高熱は3〜5日続き、下がってからも口内炎の症状は1週間続きます。口内炎は潰瘍性で口腔粘膜全体にみられ、舌、口唇の外側にも水泡がでることもあります。痛みは強く固形物を食べることは不可能で、水分さえも痛みのために充分取れないことが多いです。ただ、初感染の場合でも、熱も出ず、軽い口内炎の症状だけで治ってしまう事もありますので、知らない間にかかっている・・・という事も多いようです。

[再発性] ヘルペスウイルス属は症状が治まってからも、体の外に出て行くことはありません。神経の根元に残って潜んでいます。ストレスや体の免疫力が落ちたときに、再び活性化して症状がでてきます。口角部に水泡ができてヘルペス、と病名のように言われているのが、この単純ヘルペスT型が再発したものです。「ねつのはな」と呼ばれているのがこれにあたります。過去に歯肉口内炎をおこした覚えのない人は、口内炎のみの症状で感染しているということです。

[治療] ヘルペスウイルスに対しては抗ウイルス薬があります。ただし、この病気は口内炎が遅れて出てくるため、早い時期に診断するのが難しく、熱が下がってからやっと診断できたりするので、その時点で薬を始めても、あまり口内炎の症状を軽くすることは出来ないようです。抗ウイルスの塗り薬もありますが、歯茎に触るだけで出血してしまいますので、結局は触る事も出来ません。痛み止めを使うしかなく、感染した年齢が低く水分も取れなくなってしまうと、点滴が必要になります。

 夏場は初期の症状が似ているのでヘルパンギーナや手足口病と診断が紛らわしくなりますが、高熱が続くのが特徴です。寒い時期は咳もハナも無く高熱が出るので、口内炎が見られるまではインフルエンザとも思われることがあります。ともかく、インフルエンザ以外に高熱が続いてしんどい病気は随分多いですので、要注意ですね。

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