肺炎

 先週、上気道炎(かぜ)のお話をしましたので、今日は肺炎のお話をします。肺の中の肺胞(酸素と二酸化炭素を交換している場所)に炎症がおこっているのが肺炎です。(41週参照)  開業医コラムのところでも少し触れていますが、最近は乳幼児や高齢者、免疫の落ちている人以外にはそれほど怖い病気ではなくなっています。

[原因] 悲感染性肺炎:薬剤、アレルギーが原因になるもの。高齢者が食事などの誤飲で起こる嚥下性肺炎など。
感染性肺炎:細菌、ウイルス、真菌、マイコプラズマ、クラミジアなどが原因になるもの。今回はこちらについて述べます。

[病態] 一般にウイルス性の肺炎は軽く、肺胞全体が炎症を起こすことは少ないです。ウイルスのよるかぜ、気管支炎の時に気管支の粘膜に炎症が起きて、普段は痰と一緒に出ていってしまうような細菌が肺胞まで達してしまい、細菌性の肺炎がおこるというのが殆どです。例外が、今はなりを潜めているSARSウイルス。これはウイルスが直接肺炎を起こし、重症になります。1918年に流行したスペイン風邪と呼ばれるインフルエンザウイルスも直接肺炎を起こすタイプで2500万人もの死者がでています。子供の場合はアデノウイルスの1部のタイプが重症肺炎を起こすものがあります。

[症状] 咳、膿性痰、高熱、胸痛。重症になると呼吸困難を伴います。ウイルスが原因のものは高熱が続いてレントゲンで 肺炎の影があっても、全身状態は悪くならず、呼吸困難もない事が多いです。マイコプラズマが原因の場合は熱がない事も多いです。 咳のない肺炎は余り無いですが、殆ど咳もないのに高熱が続くので調べたら肺炎だった・・という経験はあります。よく40度の高熱を下げずにほっておいたら肺炎になるのではないか・・・と聞かれるのですが、それは絶対にありえません。又、かぜをこじらせて肺炎になるという表現をすることもありますが、初めから肺炎を起こす菌に感染している事も多いですので、これはあまり正しい言い方ではないとおもいます。

[治療] ウイルスが原因の場合はインフルエンザを除いて、特別な治療法はありません。細菌性肺炎には抗生物質治療をします。かぜの時に抗生物質を処方するのは、こういった細菌による肺炎などの2次感染の予防の意味があります。逆に抗生物質の乱用により耐性菌が増え、ますます治りにくい肺炎がふえている・・・というのも事実です。必要のない時には、できるだけ抗生物質は使わないでおきたい、と思うのですが、なかなか難しい問題です。又、咳を止めるかどうかですが、肺炎の時にはかなり強い咳がでてしんどいのですが、咳には痰を出すという働きがあるので、止めてしまうと返って痰が貯まって治りが遅くなることもあります。乳幼児の場合は咳き込んでミルクを嘔吐したりしてしまうと、全身状態が悪くなるのである程度は止めないといけませんが・・・

肺炎という病名を聞くとすごく怖い!という印象がありますが、基礎疾患の無い健康なお子さんにとってはそれほど怖い病気ではありません。乳幼児は細菌性肺炎を起こす事が多く、又ウイルス性でも高熱や嘔吐の為に脱水になって、入院が必要になることはあります。全身状態がよければ心配はありません。

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