2004年度インフルエンザ情報
●インフルエンザ情報 今年度総括(2005年4月4日掲載)

今シーズンは例年よりも早く、大阪では2004年の第39週、東京では第41週に今シーズン初のインフルエンザ患者が報告されました。その後はA香港型の幼稚園を中心にした地域流行が少しずつ報告され、第49週頃には小学校の集団発生も見られだしました。A香港型だけではなく、Aソ連型、又、12月にB型の流行のあった地域もありました。年末〜2005年1月初旬までは大きな流行は確認されず、流行の開始は過去2番目に遅く、徐々に増え第9週がピークになりました。ピーク時は下図のとおり、1998年(初めてインフルエンザ脳症が報告され、施設内で高齢者がインフルエンザにより沢山亡くなられた年)、1995年(阪神淡路大震災の年)に次いで、過去10年間では3番目の流行になりました。シーズン当初の予測とは大きく外れた形になりました。今年の流行はA香港型とB型による混合感染で、B型の流行は、例年時期が遅く、規模も小さいものでしたが、今シーズンはB型の流行が急速に広がり、A型をはるかに凌ぐものでした。ピークを過ぎてからは、逆にA型ウイルスの小流行も再び見られ、3月に入ってからは、B型に続いてA型に感染した人が多数見られました。今期分離された流行株はA型、B型共にワクチン株とは高い交叉反応性が見られています。ただし、特にB型に関しては抗体が上昇しない場合が多いので、ワクチン接種者のインフルエンザ罹患率はかなり多くなっています。







●インフルエンザ情報 No.7(2005年3月22日掲載)

  下図は第9週、2週前のものです。ピークを迎え、ぼちぼち横ばいになっているのが分かります。そしてこのあともう少し多い状態が続くのですが。日本のごく一部の県を除いて警報の最高レベルを示しており、日本全体が真っ赤になっています!B型ウイルスの分離は多いのですが、A型の2倍弱で、これも少し増えていますが、やはり実際のキットによる検出数とはまだまだ差がありますね。とりあえず、ここ10年間で最大の流行であった平成10年のレベルに近い大きな流行であったようです。流行期間が長いことから、感染者数はひょっとしたら、過去最高になるかも分かりませんが・・・。しかし、平成10年が、高齢者の死亡例が多かったり、幼児のインフルエンザ脳症が初めて報告された年であったりしたのですが、幸いなことに、重症例の報告はそれほどでもないのが、救いですね。





  B型の流行は例年、時期が遅く規模も小さいものでしたが、 今季は先行していたA香港型による流行とあわせて大きな流行となりました。
  今季に分離したA香港型株とB型株は、HA領域の塩基配列が いずれも今季のワクチン株に近い配列であり、 ワクチン株抗血清とも高い交叉性を有していました。しかし、A香港型株が昨年の流行株に近い塩基配列であったのに対し、 B型株は昨年2月以降に東京都内の散発例から検出された株には近縁であったものの、昨年流行した株とは系統樹上で別のクラスターに属していました。 このためワクチン非接種者には感染しやすく、 これがB型による流行が拡大した要因の一つと考えられます。B型に対する抗体価の上昇は以前から低いといわれており、ただ単に、ワクチン株が流行とは少し外れていた、ということだけがこれだけの大きい流行になった原因ではないと思われます。打っていてかかってしまったという人の数が多いのは、それだけワクチンを打つ人の数が増えている・・・ということなのですね・・・。

●インフルエンザ情報 No.6(2005年3月7日掲載)

  下図は第7週のデータなので、2週前のものです。これを見ても今年は流行開始が遅かったのに、例年の平均以上に大きな流行になっているのが分かります。特に関東地方が多いようです。7年ぶりの大流行だそうです。京都は警報レベルでもまだ少ない方のようですね。そしてやはりB型が多いですね。実際はこの分離数の差よりもキットで検出されるB型のほうが圧倒的に多いです。今はA型は5分の1くらいという印象です。コメントで述べたように、今頃になって少しA型が増えてきたようです。B型に感染した後で、A型に感染した!という例年とは逆のパターンが見られています。






※イギリスのランセットという医学雑誌に以下のような論文が載っていました。参考までに・・・
  弱毒生インフルエンザワクチンは79%の効果があり、2歳以上の子供に38%有効性があった。(偽薬と比較して) 不活化ワクチンは弱毒生ワクチンに比べて65%の効果しかなく、2歳以下の子供では有効性は認められなかった。2歳以上の子供に対しては28%の有効性であった。ワクチンは長期休学期間を短くする効果はあったが、下気道症状、急性中耳炎、入院日数には有意義は認められなかった。」
  日本で行われているのは不活化ワクチンです。予防効果に関しては以前から取りざたされ、もともとあまり効果が無い・・・といわれています。特に子供は有効性が低いです。今年ワクチンをうってインフルエンザにかかった人は正確に数えていませんが20%弱くらい、インフルエンザにかかった人の中でワクチンを打っている人は60%くらいです。今後の予防接種をどうするか、大きな問題ですね。

●インフルエンザ情報 No.5(2005年2月21日掲載)

  今年は2001〜2002シーズンとよく似た流行状況です。定点あたりの報告数は第5週のものですので、第7週の今週はもっと増えていますから、過去10年間のシーズン平均くらいにはなるでしょうか?ウイルス分離状況では、やはり圧倒的にB型のウイルスが増えてきているようです。Aソ連型(AH1)は意外に増えてはきていません。私たちが使っているインフルエンザウイルスの検出キットではA型のどちらであるかはわかりませんが、昨年と今年2年続けてA型のインフルエンザに感染した例もありましたので、その場合は昨年は殆どはやらなかったので、多分今年のがAソ連型なのでしょう。それにしても、前回も書きましたが、子供さんでインフルエンザに罹患したうちの半数強がワクチン接種者です。B型は予防率が低いです・・というとワクチンの中にB型は入っていないのですか?と聞かれる方が多いですが、3種類すべて入っていているのですが、抗体の上がる確率が低い、ということです。ただし、前日に38℃くらいで、受診した日には解熱している場合でも、検査をするとB型陽性・・・・と、非常に軽いことが多いですので、軽症化には意味があると思います。ワクチンをうっていると、37℃台のインフルエンザもありますので!今年はまだまだ流行が続きそうですので、十分気をつけて下さい。



●インフルエンザ情報 鳥インフルエンザ(2005年2月14日掲載)
  ベトナムでは昨年12月30日から、鳥インフルエンザで計13人が死亡しました。このうち1人は、25歳のカンボジア人女性で、1月21日に高熱などの症状が出て、国境に近いベトナム南部の病院に27日に入院、30日に死亡しました。ホーチミン市のパスツール研究所が調査した結果、1日に感染が確認され、カンボジアで初の死者となりました。 死亡したのはベトナム国境から5キロメートルの村に住んでいた女性で、悪寒と高熱を訴えてベトナム・キエンザン省の病院に入院していました。女性の弟(14)も先月半ばに死亡しているほか、ほかの親族も呼吸器官の疾病を訴えていることから感染拡大が懸念されています。一方、プノンペンから5キロメートル南の村で鳥インフルエンザの家禽への感染が確認されました。インフルエンザ感染の確認は昨年9月以来。保健当局は直ちに鶏とアヒル150羽の処分を命じました。WHOのまとめによると、昨年1月からの感染者数は、ベトナムとタイ、カンボジアで計55人に達しています。このうち、ベトナム32人、タイ12人、カンボジア1人の、計45人が死亡しています。
  チャイナ・デーリー紙は7日、中国農業科学院哈爾浜(ハルビン)獣医研究所の農業部動物インフルエンザ重点開放実験室が、家禽と哺乳動物用の鳥インフルエンザ・ワクチン開発に成功したと報じました。H5N1型鳥インフルエンザでは昨年来、アジアでの死亡例が増えていることから、中国の温家宝首相は国内での鳥インフルエンザ対策で万全の措置を講じると述べており、中国の衛生省は、このワクチンで感染拡大を防止できるとしています。
  今年は日本の国内では鳥インフルエンザが発生しなかったので、昨年に比べてあまり話題にはなっていませんが、ベトナムやタイでは今年も多くの死亡例が報告されています。日本でも昨年の秋に、鳥インフルエンザにかかった鶏の処分をした職員が感染していた、という報告がされたことを目にされたでしょうか?確かに身近で大量のウイルスにさらされる時には、鳥インフルエンザに感染してしまうのでしょうね…。日本の場合はあらかじめ、抗インフルエンザ薬を予防的に飲んでいたので発病はしなかったものでしょう。今年は新型インフルエンザの発生はヒシヒシとは感じられないのですが、いつ起こってもおかしくない事だとは思いますので、上述の、中国が開発したという、鳥インフルエンザワクチンが、実用的になり、早く広まれば良いと思います。
●インフルエンザ情報 No.4(2005年2月7日掲載)

  厚労省は2月4日にインフルエンザの流行期に入ったと発表しました。これは第3週のサーベイランスの結果を元にした発表です。2週間前のデータからのものです。増えだしたのはその頃からに間違いないですね。例年よりもかなり遅いです。2001〜2シーズンに次いで2番目に遅く、昨年よりは3週遅いということです。そしてウイルスの分離状況を見ても明らかなように、初期からB型のウイルスの分離が多いのが特徴です。Aソ連型もA型の4割近くを占めているようです。




  ワクチンの接種者が増えているので、子どもさんのインフルエンザにかかったうちの半数は接種済みの方です。接種回数に差は殆どありません。ワクチン接種者の中でのインフルエンザ罹患率は勿論今年は少なく、かかった人の中でワクチン接種者の絶対数も昨年の方が多いです。ワクチンをうっているせいか、37℃台でインフルエンザだった、という人も多いです。予防率は低いですが、ここ近年、小学校低学年まででは、インフルエンザが大流行しなくなっているのは、ワクチン接種率が上がっているせいもあるかと思います。抗インフルエンザウイルス薬のおかげで、有熱期間が短くなり、休む日数が減ったことと、土曜日がお休みになったので、金曜の午後からの半日休みのみで、土日の間に回復して・・・その結果、学級閉鎖の日数も少なくなっているようでありますが。

●インフルエンザ情報 No.3(2005年1月17日掲載)

  インフルエンザ警報が宮城県で、注意報が岐阜県で出されました。そろそろ流行の始まりです。今季はインフルエンザ情報の第1報でのせた予想とは違って、A香港型とAソ連型の混合流行が示唆されています。埼玉県や宮城県、仙台市でAソ連型が沢山分離されています。2003/04、2002/03シーズンでは殆ど分離されませんでした。前回流行した2001/02シーズンでも初期のころから香港型、B型に混じって分離されていましたが、全インフルエンザウイルス分離数に対する割合は10%程度であったのが、昨年12月はA香港型とAソ連型が同等の割合で分離されています。分離されたウイルスの抗原性は、今シーズンのワクチン株とはほぼ同じと考えて良いということです。又、B型のウイルスも東京、静岡、岐阜、大阪市など多くの都市で分離の報告があります。全体に占める割合も多く、4分の1ほどで、これも例年とは違った動きを見せているようです。

●インフルエンザ情報 No.2(2004年12月 6日掲載)

  その後全国的には小規模の集団発生が報告されています。群馬県、岡山県、兵庫県、神奈川県でインフルエンザ様疾患による学級閉鎖が行われています。岡山県ではAソ連型のウイルスが分離されました。兵庫県で学級閉鎖のあった患児から11月12日にB型のウイルスが分離され、この時期には非常に珍しいB型インフルエンザの小流行だったようです。第47週(11月15〜21日)までに、インフルエンザウイルスは25件の検出が報告されており、そのうちの20件がA香港型です。愛知県、大阪府、東京都、奈良県、岡山県、千葉県で分離されています。
  京都府では第45週にインフルエンザ様疾患の報告が1例あり、その後1〜2例ずつくらいで、報告は続いているようです。集団発生はありません。

●インフルエンザ情報 No.1(2004年11月15日掲載)
 急激に高熱が出て、しかも痙攣をおこしたりすると、この時期はインフルエンザではないか・・・と思うことがあります。しかし、今のところは検査をしてもインフルエンザウイルスは検出されません。京都ではまだ報告はみられていませんが、全国的には今年は大阪、東京などで、小流行が早い時期に見られたりしています。今後は時々、インフルエンザの流行状況、最新のトピックスなどを報告していきたいと思います。

全国のインフルエンザ流行状況(過去10年間)

  今年のデータは43週までなので、10月24日までのものです。今冬のインフルエンザはA香港型が主に流行し、平均的規模になるが、例年より早い時期からの流行が予測されるということです。
  大阪府では9月21日に箕面市で5歳児からAH3型インフルエンザウイルスが分離されました。その後、池田市内で学級閉鎖した小学生の妹(10月6日)、吹田市内の幼稚園児(10月7日)、および豊中市内で学級閉鎖した小学校の患者児童2名(10月8日)から、AH3型インフルエンザウイルスが続いて分離されました。これ等のウイルスは、今シーズン予測されたワクチン株と強い交叉反応性を示したので、9月下旬〜10月上旬にかけて、大阪府北部において小規模なインフルエンザの流行があったことを示すものと思われました。その後10月23日にも箕面市で同様の抗原性を示すウイルスが分離され、散発的ではあるが継続的にインフルエンザの発生が認められています。何故この時期にインフルエンザの流行が見られたのかはわからず、インフルエンザのこのような早期の流行状況はこれまでに経験がありません。シーズン早期から大規模な流行が発生するおそれもありましたが、今のところは大流行には至っていません。
  東京都内千代田区で、インフルエンザ様疾患で11月4日より学級閉鎖を行うという報告がありました。1学年1学級だけですが、学級閉鎖は例年より一月ほど早い状況です。都内のインフルエンザの報告数も例年よりは多くなっており、早い時期からの流行が予測されます。報告数は過去12年間の5位であるため、平均的な流行規模と予測されます。
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