新型インフルエンザワクチンについて(09/10/13更新)

19日から接種開始、ということだけが、目だって報道されていますが、どういう方法で実施するかについてがなかなか知らされず、現場のものはやきもきするのみでした。大体の概要はネット等を通じて知った状態で、優先接種の順番で約1ヶ月間隔で接種して行くということは間違いが無いようです。来年1月以降接種予定のものは、それまでにすでに感染するほうが多いのでは!と思いますが・・・。一斉に打つことを考えると、確かに当院ではパニック、とても打ち切れるとは思えませんので、こうするしかないのかも分かりませんが・・・。

 

[接種スケジュール]
接種の優先順位は以下の通りです。
カテゴリー1:インフルエンザ患者の診療に従事する医療従事者
カテゴリー2:妊婦及び基礎疾患を有する者
カテゴリー3:1歳〜小学校3年生までの小児
カテゴリー4:1歳未満の小児の両親
当初はこの4つのグループを同時進行で接種、と思っていたのが、カテゴリー1からの順番での接種になりました。医療機関が1位というのはまず、これで接種の試行も兼ねるのかとも思います。
以上が国産のワクチンで接種
カテゴリー5:小学生、中学生、高校生、高齢者
小学校4年生〜中学生も国産のワクチンを接種することとなりました。こちらも来年の1月以降ですので、一番感染者の多い年齢になりますから、打つまでにすでに感染される方がかなり多いのでは?と思われます。

[優先接種対象の基礎疾患と、その中でも最優先となる患者の基準]
対象の疾患
最優先となる患者の基準
慢性の呼吸器病
治療や綿密な経過観察が必要なぜんそくや肺気腫などの患者。特に呼吸機能の低下している患者 
慢性の心臓病
「安静時には無症状だが、日常活動でも疲労や動悸(どうき)、呼吸困難、狭心痛がある」という状態より重い症状の患者   
慢性の腎臓病
透析中や透析を始める前の腎不全患者。腎移植を受けた人。腎臓病と他の合併症がある人など
肝硬変
進行した患者
神経・神経筋の病気
多発性硬化症や重症筋無力症など免疫異常性の神経疾患。筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)などの神経難病で呼吸障害などがある人
血液の病気
白血病、悪性リンパ腫などすべての造血器腫瘍(しゅよう)患者。造血幹細胞移植後、半年以上たった患者
糖尿病
ぜんそくや心臓病、腎不全などを併発した糖尿病患者や妊婦。1歳〜高校生までの患者、インスリン療法が必要な患者
病気や治療で免疫抑制状態
HIV感染を含む免疫不全疾患。抗がん剤治療中の人。免疫抑制剤やステロイドを継続して使っている人
小児の病気
長期入院の子ども、ぜんそく、脳性まひ、重症心身障害児。15歳までの染色体異常症、小児がんなど
※最優先ではない患者は、基礎疾患のある人(その他)に分類される。

[接種費用]
全国一律で1回3600円。2回目は同じ医療機関ならば初診料分が減額されて2550円になります。住民税非課税世帯の優先接種対象者は、65歳以上が対象の季節性インフルエンザワクチンの定期接種と同様に、無料で受けられます。

[予約方法]
京都の場合は、接種医療機関は手上げ方式で決定されました。京都市から優先接種対象となる基礎疾患を有する者の調査票が届きましたので、当院かかりつけの患者さんからリストアップして、大体の概数を報告いたします。
小児では喘息の患者さんは最優先グループ該当者になります。定期的に喘息の薬を服用されている方は該当しますので、予約してください。その他、年齢の小さい方で、喘鳴の強い方も該当すると思われます。11月から接種を始めます。軽い発作が年に数回くらいで服薬されていない方、等々、少し判断が難しい場合も多く、こちらが申請した数が全て手に入るのか・・・、この辺りは確定していません。お母さん方で妊娠されている方は打って下さい、と言っていましたが、小児科・内科の医院では、今回の調査票では報告数に含まれていませんでしたので、接種担当は産科になるかと思われます。
それ以外の基礎疾患のない、1歳から小学校3年生までの方は、11月中旬頃より予約を開始いたします。
小学校3年生以上の方は順次予約を受けることにいたします。
ただ、これも、果たして予約された方が全員打てるだけの数のワクチンが本当に手に入るのか、打ち切らないといけない事になるのか、まだまだ分からない状況ではあります。
新型ウイルスのインフルエンザに感染された方は勿論接種の必要はありません。

[新型インフルエンザワクチンについて]
このように国を挙げて一生懸命になって接種を進めていますが、本当のところを言いますと効果については全くやってみないとわかりません・・・。季節性のワクチンと同じように感染の予防という意味では、弱い可能性も大です。厚労省のパブリックコメントを求める時の説明でも、盛んに重症化を防ぐのが目的と言われ、その為に接種は重症になりやすい妊婦の方、基礎疾患を有する者が最優先です。今一番感染者数の多いのは小学生、中高生、大学生ですが、これらの年齢層に打って感染が広がるのを防ぐ、というのはまず望めないので、この優先順位が決められたと解釈しています。ワクチンを接種してもインフルエンザ脳症になられる方はゼロではありませんでしたので、今回もやはり、重症な呼吸器症状を起こされる方はゼロにはならないかも分かりませんが、限りなくゼロに近いであろうことを期待しています。
今日まで当院で診ました新型ウイルスのインフルエンザに感染された方は約170名ですが、幸いなことに今のところ入院例は今週の1例のみです。抗インフルエンザ薬が効きにくい、と感じられたのはごく数名、それも1日では熱が下がらなかった、という例です。受験期にある年齢のお子さんがおありの方はご心配でしょうが、重症にはなりにくいこと、抗インフルエンザの効果を信じて、どうか必要以上に心配されませんようにお願いいたします。ワクチンが打てないことは年齢の大きい基礎疾患の無い方にとっては、今までの季節性インフルエンザと症状は変わらないので問題ではありません。今のところ感染力が弱く、元気な年齢層が感染の中心になっていますので、死亡率も極端に低いです。寒くなる今後は高齢者の感染も増えるでしょうから、死亡率も上がるかも分かりませんが。

[副作用は?]
新型インフルエンザワクチンではこれを心配されている方が非常に多いかと思います。国産のワクチンに関しては、製造方法は従来の季節性と同じです。ワクチンの生産時に間に合わなかったので、季節性ワクチン、新型ワクチンと2本立てになってしまいましたが、本来同じワクチンであるものです。来シーズンはこれまでのAH1に変わって新型のAH1pdmを含んだ3種が入ったワクチンが作られます。今年のようにややこしくなく、来シーズンは1種のみの接種でよくなりますので。
日本はワクチン生産に関しては後進国になってしまっています。効果のあるワクチンを作ろうとすると、現在外国で作られているようなアジュバンドの入った少し熱や腫れの気になるものになってしまうようです。今後はもっと効果があって、しかも副作用の少ないワクチンの開発に期待をしたいと思います。今のインフルエンザワクチンは他のワクチンと違って、私たちが大声で「是非接種して下さい」というにはあまりに効果が期待できないような気もしますので・・・。

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