ヒスタミン食中毒について(2020/6/1更新)

[ヒスタミン食中毒とは]
ヒスタミン食中毒は、ヒスタミンが高濃度に蓄積された食品、特に魚類及びその加工品を食べることにより発症する、アレルギー様の食中毒です。
ヒスタミンは、食品中に含まれるヒスチジン(タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の一種)にヒスタミン産生菌(例、Morganella morganii)の酵素が作用し、ヒスタミンに変換されることにより生成します。そのため、ヒスチジンが多く含まれる食品を常温に放置する等の不適切な管理をすることで、食品中のヒスタミン産生菌が増殖し、ヒスタミンが生成されます。ヒスタミンは熱に安定であり、また調理加工工程で除去できないため、一度生成されると食中毒を防ぐことはできません。

[症状]
ヒスタミンによる食中毒の発症は比較的早く、喫食後、1時間以内に顔面、特に口の周りや耳たぶが赤くなったり、蕁麻疹、頭痛、嘔吐、下痢などの症状が出ますが、症状は比較的軽く、一般的には短時間で回復します。抗ヒスタミン剤を服用すると速やかに回復します。
まれに重症化する場合があり、呼吸困難や意識不明になることもありますが、死亡事例はありません。
一見、食物アレルギーの症状に似ていますが、免疫反応によるものではなく、症状は一過性であり、食物アレルギーとは区別されます。このようなことからヒスタミンによる食中毒はアレルギー様食中毒と呼ばれています。

[原因食品]
ヒスタミン食中毒の原因となる主な食品は、「ヒスチジン」というアミノ酸を多く含む赤身魚(マグロ、ブリ、サンマ、サバ、イワシ等。表2参照)やその加工品です。ヒスチジンは細菌(ヒスタミン産生菌)の酵素の働きでヒスタミンとなるため、ヒスチジンを多く含む食品を常温で放置する等、不適切な管理を行うとヒスタミン産生菌が増殖し、ヒスタミンが生成されます。なお、魚や加工品のほか、ワインやチーズ等の発酵食品にも含まれることが知られています。

魚種別ヒスチジン含有量

[対処法]
ヒスタミンによる食中毒は、通常24時間以内には回復に向かいます。水分補給を摂って安静にしてください。
医療機関では抗ヒスタミン薬の投与などで症状を緩和させ、下痢や嘔吐、血圧低下などの症状が出ている場合にはそれぞれに対症療法を行います。

[予防のためにすること]
一度生成されたヒスタミンは、調理時の加熱等では分解されません。そのため、ヒスタミン産生菌の増殖と酵素作用を抑えてヒスタミンを生成させないようにするため、原材料(魚の場合には死んだ瞬間から)から最終製品の喫食までの一貫した温度管理が重要です。
新鮮な魚を購入すること。鮮魚には海洋性のヒスタミン生成菌が付着している可能性が高いので、室温での放置を避け、保存するときは冷凍し、長時間の冷蔵は行わないこと。切り身やすり身を作るときにはヒスタミン生成菌の二次汚染を避けるために十分な衛生管理のもとで行うのが望ましいです。解凍等を行うときは冷蔵庫内で行い、使う分だけ解凍し、解凍後は速やかに調理する。フライや照り焼きなどでは、ヒスタミンは熱に強いので、熱をかけたから大丈夫と思うのは禁物。古くなった材料は使用しない等を心がければヒスタミン中毒のリスクは避けられるのではないかと思われます。

 

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