高マグネシウム血症(2015/12/14更新)


[高マグネシウム血症とは]
マグネシウムは体内で4番目に豊富な陽イオンで、70kgの成人は約2000mEqのマグネシウムを有します。約50%が骨に封入されており,、他の区画のものとは簡単には交換されません。高マグネシウム血症とは、血漿マグネシウム濃度が2.1mEq/L(1.05mmol/L)を上回ることです。

[原因]
腎機能障害による腎排泄の低下と、大量のマグネシウム摂取の2つがあります。
最も多いのが腎機能のGFR が30ml/分以下の腎不全で、このほか腎機能が低下した高齢者などでも起こりやすくなります。マグネシウムは胃腸薬(マーロックス)、緩下剤(酸化マグネシウム(カマグ))に含まれています。
健康な腎臓は2g程度の排泄能力があるので、大量のマグネシウムを摂取しなければ、高マグネシウム血症になることはありません。しかし、腎機能低下、加齢、脱水、甲状腺機能の低下などで不要なマグネシウムを排泄することができなくなると、血中マグネシウム濃度も上昇します。

[症状]
高マグネシウム血症は、軽度では症状が出現しません。血清マグネシウムの値が5mg/dlを超えると、嘔吐や筋脱力、傾眠、徐脈、低血圧などがみられ、12mg/dl以上になると、意識混濁 ・消失や呼吸筋麻痺が生じ、心停止に至ることもあります。
また、深部腱反射の低下は高マグネシウム血症の指標となります。心電図上では、PR間隔の延長が特徴的です。

[診断]
マグネシウム含有製剤または食品を摂取している腎不全患者に起こります。腎機能の正常な人に起こることはほぼありません。血液中のマグネシウム濃度3mg/dl以上で、診断が確定します。

[治療]
軽度の高マグネシウム血症では、生理食塩液とループ利尿薬の点滴静注で尿中へのマグネシウムの排泄を促して補正します。
重度で呼吸抑制や心障害がみられるときには、緊急処置が必要になります。症状緩和の呼吸補助を行い、マグネシウム拮抗薬を点滴静注します。
腎不全でマグネシウムを排泄できない場合には、マグネシウムを含まない透析液での血液透析を行います。

さて、高マグネシウム血症を起こす可能性がある、というのは、非常によく使う便秘の薬、酸化マグネシウム(カマグ)の服用が原因になるかも、ということです。
酸化マグネシウムは、昭和25年から便秘薬や制酸剤などとして広く使用されており、関係企業が推計 したおおよその年間使用者数は約4,500万人(平成17年)です。
厚生労働省に酸化マグネシウムで重篤な高マグネシウム血症25例(そのうち死亡例4例)が報告されたため、2008年9月に、使用上の注意に高マグネシウム血症の初期症状と対処法、長期服用における定期的な血清マグネシウム濃度を測定することが記載されました。
酸化マグネシウムは通常、体内に吸収されることが少ないとされていますが、食事やサプリメント、活性型ビタミンD3製剤などの併用薬剤により吸収が促進される場合もあります。

酸化マグネシウム(カマグ)は子どもさんでもよく処方します。長期間服用されている場合も少なくありません。が、このような高マグネシウム血症を起こす可能性がどのくらいあるでしょうか?あまり考えたこともありませんでした。長期間服用している場合に全員血液検査をしないといけないのかどうか??心の片隅置いておく必要はあるのでしょうね。

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