劇症型溶連菌感染症(2015/11/9更新)


[劇症型溶連菌感染症とは]
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、レンサ球菌による感染症です。通常は、レンサ球菌に感染しても無症候のことも多く、ほとんどは咽頭炎や皮膚の感染症にとどまります。しかし、稀に通常は細菌が存在しない組織(血液、筋肉、肺など)にレンサ球菌が侵入し、急激に症状が進行する重篤な疾患となることがあります。この感染症は、1987年にアメリカで初めて報告された感染症で、1994年にイギリスのマスメディアが「人食いバクテリア(killer bug, flesh-eating bacteria)」としてセンセーショナルに取り上げたことから、日本でも注目されるようになりました。「人食いバクテリア」という細菌が存在するわけではありません。急激かつ劇的に病態が進行する劇症型感染症で、手足の急激な壊死(壊死性筋膜炎)を引き起こし、ショック症状や多臓器不全で感染者を死に至らしめる細菌感染症の俗称です。
小児が多く罹患するA群溶血性レンサ球菌感染症とは区別されます。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は子どもから大人まで広範囲の年齢層に発症しますが、特に30歳以上の大人に多いのがひとつの特徴であります。

[原因と感染経路]
A群β溶血性連鎖球菌が、通常存在しないところ、例えば、血液や筋肉や肺といった場所にまでこの細菌が入り込み、重症のA群β溶血性連鎖球菌感染症を引き起こします。
外傷や熱傷、水痘などで皮膚が障害されている場合に、発症の危険性が高いともいわれています。
感染すると必ず劇症化するわけではありませんが、基礎疾患の有無に関わらず劇症化症例が報告されており、劇症化のメカニズムはまだわかっていません。A群の中でも、ある特定の遺伝子を持った型が劇症化を起こす場合が圧倒的に多いことが分かっているのみです。

[症状]
症状は四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下などの初期症状から急激かつ劇的に病態が進行し、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)などが起こり、錯乱状態、昏睡、ショック状態を引き起こします。特筆すべきはその死亡率で、劇症例の30〜40%以上の方が亡くなっています。

[治療]
集中管理のもと、抗菌剤による治療が行われます。筋膜炎の場合は、壊死を起こしている部分を切除し感染の拡大を防ぎます。重症化のリスクを下げるためには、早期に治療を開始することが重要です。


「人食いバクテリア」という名前があまりに強烈過ぎて、皆さんにすごく恐ろしい、という印象を植え付けていますね。重症化のメカニズムがはっきりわかっていませんので、この状態になるのを予防する方法は残念ながら無いようです。傷口からの感染が必ずしも劇症型になるわけではありませんが、傷口の変化には気を付ける必要がありますね。

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