周期性発熱症候群(PFAPA症候群)について(2015/2/23更新)

周期性発熱症候群とは(必ずしも長さの一定しない)無症状の期間をはさんで、半日〜数週間持続する、一般的な感染症で説明のつかない発熱のエピソードを 6〜12 カ月に 3 回以上繰り返す疾患群です。
これらは自己炎症性疾患と言われ、その中では遺伝性周期性発熱症候群と PFAPA 症候群(periodic fever, aphthous stomatitis, pharyngitis, and adenitis)が含まれます。子どもに多いPFAPA症候群について触れます。

[PFAPA症候群とは]
1987年に初めて報告され、1999年に現在の病名になりました。遺伝性はありませんが人種差があり、米国ではスパニックでは少ないと報告されています。周期性発熱症候群の中では最も患者数が多いと推測されていますが、正確な疾患頻度はよくわかっていません。また、遺伝性はないとされています。 正式な調査は行われていませんが、日本では概算で1/10000人はいると考えられています。
PFAPA症候群は、周期性発熱、アフタ性口内炎、頸部リンパ節炎、咽頭炎を主症状とする疾患です。患者さんの多くは5歳以下の乳幼児期に発症し、日本での平均発症年齢は3.2才、成人発症は稀と言われてきましたが近年では成人で発症する症例や思春期を過ぎても自然寛解しない症例も見つかっています。

[原因]
自己炎症性疾患:炎症を調整する遺伝子に異常があるために炎症をコントロールできない病気です。
人間は生まれつき「自然免疫」という免疫を持っています。この自然免疫は体内に侵入した病原体や感染に対してただちに攻撃し排除しようと防御する働きを持っています。
自己炎症疾患の患者さんは主に遺伝子に変異がある為この自然免疫の制御が上手くできません。外部からの侵入を排除するために起こる炎症反応を上手く調整できないので、全く感染もしていないのに遺伝子が「感染した」と勘違いして炎症を起こすスイッチをいれてしまい自分自身を攻撃してしまいます。炎症は「発熱・発赤・腫脹・疼痛・機能障害」を起こします。その為に自己炎症疾患の患者さんは周期的な発熱を繰り返したり、関節が脹れて痛くなったりといった症状を起こしますが遺伝子が「病原体の排除完了」と満足すれば炎症終了となります。発作の予感がわかったり、発作を誘発する事柄なども一部わかってきていますが「いつ炎症発作が起こるか、いつ終わるか」は正直言うと患者本人にもわからない、まさに遺伝子のみぞ知る病気です。

[症状]
1)発熱発作 
患者さんの全例に認められます。39〜40℃以上の発熱が突然出現し、平均5日間(3〜6日)続きます。発熱の間隔は平均24日(3〜8週)で、月経周期の様な規則性がみられます。熱と熱の間は全く元気で症状はありません。
2)アフタ性口内炎・口腔病変 
患者さんの50〜70%に認められます。頬の粘膜や舌の表面に、軽い痛みを伴う口内炎がたくさんできます。
3)頸部リンパ節炎 
患者さんの約60%に、圧痛のある非化膿性リンパ節炎が認められます。
4)咽頭痛・咽頭炎 
患者さんの60〜90%で認められ、発熱発作の1〜2日前に症状が出現することが多いです。
5)扁桃炎 
患者さんの50〜75%に認められます。反復性扁桃腺炎と診断され、扁桃摘出術を受けた小児の20〜30%がPFAPAであったとの報告があります。
6)その他
倦怠感、頭痛、関節痛、腹痛、嘔吐、下痢、咳、血尿、発疹など多彩な症状が現れます。呼吸器症状、眼病変、心血管系病変、生殖器病変は一般的に認められません。後遺症もありません。

[診断基準]
1 )規則的に反復する発熱が 5 歳以前に出現
2 )上気道感染症がなく、アフタ性口内炎,頸部リンパ炎,咽頭炎のうち少なくとも一つを伴って全身症状がみられる
3 )周期性好中球減少症の除外
4 )エピソード間欠期は完全に症状を欠く
5 )成長、発達は正常

[予後]
予後は良好で、多くの症例では発症後経時的に発作間隔は広がり4〜8年程度で治癒します。成長および精神運動発達も正常です。

[治療]
1)タガメット(一般名シメチジン)
H2ブロッカーに分類される薬で、本来は胃薬として使用されます。タガメットには免疫調節作用があり、PFAPA症候群の約60%に効果があります。15〜20mg/kg/日を分2〜3で予防的に投与します。約 60%の患者で発作抑制に有効ですが、発作が完全に消失するのはその 1/3 程度だといわれています。
2)副腎皮質ステロイド(プレドニン) 
発熱発作の初期にプレドニンを0.5〜1mg/kgを1回ないし2回投与すると、12〜24時間以内に症状は劇的に改善します。プレドニンが良く効くかどうかは、他の病気と区別をするうえで、参考になります。ただし、プレドニンの使用により次回の発作までの間隔が短縮することが報告されています。
3)非ステロイド性抗炎症薬 
アスピリンやイブプロフェンを使用しますが、前述の副腎皮質ステロイド程の効果はありません。
4)コルヒチン 
家族性地中海熱や痛風に使われる薬ですが、PFAPAに対しても有効性のある症例が見つかっています。
5)扁桃摘出術、アデノイド切除術 
上で述べた4つの薬を使用しても症状が改善しない場合に、外科的に喉の奥にある扁桃腺やアデノイドを切り取ります。患者さんの60%以上に高い効果がありますが、しばしば再発します。
他にも喘息薬「シングレア」「ファモチジン」が有効だった症例もあり、何が効くかは個人差も大きいようです。


目から鱗が落ちる…というのをこの病名を知って実感しました!自己炎症性疾患という概念ができてから、すでに15年は経つのですね…。熱が下がらないので血液検査をすると、白血球増多があり、CRPも高くなっているので、入院されたお子さんもあります。処方した時期により、この抗生物質が効いたかと思っても、次回の熱の時に最初からその抗生物質を処方してもやっぱり熱は下がりません。高熱が出るし、咽頭痛があって食べられず、しんどいお子さんもありましたが、咳も出ていないので呼吸状態は悪くもなく、確かに比較的皆さん元気でした。遺伝性疾患ではない、という事ですが、兄弟もその傾向にあるように思います。
重い感染症や自己免疫疾患ではない、という事をしっかり確認して、不必要な投薬を減らすようにしたいです。タガメットの効果はない場合もあるようですが、明らかに発熱の回数が減った…という方が多いので、あまりに発熱回数の多いお子さんには処方していこうと思っています。

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