子どもの片頭痛(2015/2/16更新)

[片頭痛とは]
片頭痛は頭の片側からこめかみにかけて脈打つように「ずきずき」、「がんがん」と痛み、ひどいときには日常生活が妨げられるほどの強さの痛みや、吐き気を伴うとてもつらい頭痛です。片側だけではなく、40%くらいの方が両側の痛みを経験しています。
片頭痛は思春期頃から発症することが多く、日本では人口の約8%が罹患していて、中でも若年から中年の女性に多いといわれています。

[原因]
何らかの理由で脳の血管が急激に拡張して起きるのが「片頭痛」です。
脳の血管が拡張することで、周囲の三叉(さんさ)神経を刺激し、刺激で発生する炎症物質がさらに血管を拡張して「片頭痛」を発症します。
心身のストレスから解放されたときに急に血管が拡張することがあり、仕事のない週末などに「片頭痛」が起こりやすくなります。そのほか、寝過ぎ、寝不足、女性ホルモンの変動、空腹、疲労、光や音の強い刺激なども、「片頭痛」の誘因とされています。
子どもの頃の生活習慣によって、大人になってから片頭痛持ちになるかどうかが決まるわけではありません。多くは生まれつきの体質、遺伝的要因に環境因子が加わって片頭痛持ちになるのではないかと考えられています。
片頭痛の子どもには車酔いする子どもが多いという報告があり、これは自律神経系の問題ともいわれていますが、はっきりした原因は不明です。両親、とくに母親が片頭痛だと、娘も片頭痛になる確率が高いことがわかっています。

[症状]
片頭痛は、頭の片側または両側が脈打つようにズキンズキンと痛む病気です。 月に1〜2度とか、週に1〜2度の頻度で発作的に起こるのが特徴で、いったん痛み出すと寝込んでしまう、仕事が手につかないなど、多くの方が日常生活に支障をきたします。
子どもの場合の特徴は次の通りです。
(1)頭痛の持続時間が1時間からと短い
(2)頭痛の部位が両側性(前頭側頭部)である場合が多い
(3)腹部症状が多い
などが挙げられます。
発作性頭痛:「それまで元気に遊んでいたこどもが、急にゴロゴロ(時にしくしく泣いていたり)して遊びたがらない。聞いてみると頭が痛いと言う。顔面蒼白だったり、気分不良を訴えたり、大丈夫かなと思っていると、2時間程して気がつくといつの間にかまた元気に遊んでおり、ケロッとしてもう何ともないと言う。以上のようなエピソードが何度かあって、ひょとしたら仮病じゃないかと疑われていたりする。」というようなものです。さらに頭痛に伴って嘔吐する、テレビの音を小さくしてくれと訴える(音過敏)、部屋の電気を消して欲しいと訴える(光過敏)、振動が頭に響く等の症状が確認できることもあります。

[診断]
片頭痛は、痛みの起こる直前に「前兆」を伴うタイプと、伴わないタイプに分類できます。
最も多い前兆は「閃輝暗点」とよばれる症状で、
・目の前で光がチカチカする
・視野の一部に歯車のようなギザギザしたものが現れる
・視界が欠ける
などがあります。
一般に5〜60分程度続き、それが終わって60分以内に激しい痛みに襲われます。
それ以外の前兆としては、手足がしびれる、しゃべりにくくなる、といった症状などもみられます。 もっとも、前兆を伴わない片頭痛のほうが多く、同じ人でも前兆がいつも現れるわけではありません。前兆を伴うのは約1〜2割です。
片頭痛の診断基準
1)「前兆のない片頭痛」の診断は、国際頭痛分類によってなされます
下記のA〜Eの項目を満たしていれば「前兆のない片頭痛」と診断されます。
A. いままでB〜Eを満たす頭痛が5回以上の発作があった
B. 頭痛発作は4〜72時間持続する
C. 次の特徴の少なくとも2項目を満たす(たとえ、すぎんずきんしなくとも、ほかの項目を満たしていればよいということです)
  1.片側の頭痛
  2.ずきんずきんする頭痛
  3.中くらいのひどさの頭痛〜かなりひどい頭痛(日常生活に影響があるか、寝込んでしまう程度
    の頭痛)
  4.階段の昇降など日常的な動作により頭痛がひどくなる
D.発作中、次の1〜2項目を満たす
  1.吐き気か嘔吐
  2.光過敏と音過敏
E. 二次性頭痛などのほかの原因(たとえば風邪)を否定できる
2)「前兆を伴う片頭痛」の場合は閃輝暗点が2回以上あれば片頭痛と診断できることになっています。

小児片頭痛の診断に際しては、上記の様な発作性頭痛のエピソードを最も重視します。さらに頭痛に伴う悪心嘔吐や音過敏・光過敏・体動による悪化の有無が症状としては重要です。また血縁者(特に母親)の発作性習慣性頭痛の有無(要するに頭痛持ちかどうか)も参考になります。一方頭痛の拍動感は、訴えない例やはっきりしない例も多く、余り参考にはなりません。また頭痛の部位も小児では両側や真ん中と表現する場合も多く、片側性頭痛でなくても片頭痛を否定する根拠にはなりません。成人の片頭痛と比べた小児片頭痛の最も大きな特徴は、頭痛持続時間の短い例が多いことです。
★危険な頭痛の特徴
 手足のしびれ、歩く時ふらつく、手足が動かしづらい
 毎日のように頭痛と嘔吐がある
 症状が進行している
★除外診断
 脳腫瘍や急性副鼻腔炎など二次性頭痛を否定するための画像診断、さらに場合によってはてんか
 ん性頭痛との鑑別で必要な脳波検査などが必要になります。

[治療]
片頭痛の治療は大きくわけて2種類あります。頭痛発作がおこった時になるべく早く頭痛鎮めるための治療法を急性期治療(頓挫療法)といいます。もうひとつは頭痛がある日もない日も毎日お薬を飲んで頭痛発作を起こりにくくし、また、頭痛発作が起こっても軽くすむようにするための予防療法です。発作回数が月に数回以内で、片頭痛発作による生活への悪影響があまりなければ急性期治療を中心にします。発作回数が多い場合や、生活への影響が強ければ急性期治療と予防療法を組み合わせて治療をします。予防療法の効果が現れるまでに、通常1〜2ヵ月の期間がかかりますので、少なくとも2ヵ月は継続してみて、効果を判定してください。
鎮痛薬の上手な使い方としては、頭痛発作のなるべく早期に使用することと、過剰に連用しないことです。連用により鎮痛薬誘発性頭痛といわれる別の頭痛がおこってきます。
お子さんの場合は、まず薬によらない治療です。早寝早起きは頭痛の予防に有効で、睡眠時間を1時間多くしたことで頭痛が改善する子もいます。子どもの生活を見直し、おけいこ事などを整理して、生活をシンプルにするのも一案です。片頭痛の場合、睡眠時間以外に食物や光などの頭痛の誘因(きっかけ)を除くことも大切です。子どもの頭痛で薬が必要な場合、まず解熱鎮痛薬(イブプロフェン、アセトアミノフェン)が使われます。頭痛が始まってすぐに飲むと効きがよいので、学校に1回分持たせ、先生に頼んでおくとよいでしょう。


頭痛を訴えるお子さんは年々増えているような気がします。家族歴が無い場合も多く、色々なストレスが増えているのかもわかりません。ほとんどが原因のはっきりしないもので、危険な頭痛はあまりないのですが、一応除外診断を心がけてはおります。

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