エピペン(14/8/4更新)

[エピペンとは]
エピペンとは、ハチ刺傷、食物アレルギーなどによるアナフィラキシーがあらわれたときに使用し、医師の治療を受けるまでの間、症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤(アドレナリン自己注射薬)です。アナフィラキシーを起こす可能性の高い患者が自宅に常備することで、発症の際に医療機関へ搬送されるまでの症状悪化防止に役立っています。
日本のエピペンは、2003年から認可され、当初の適応はハチ毒に対するアナフィラキシーに対してのみでしたが、2006年から食物アレルギーや薬物アレルギーにも適応が拡大されました。処方する医師はエピペン処方医師としての登録が必要ですが、処方される患者側も登録が必要となります。現在、親と本人による注射が認められています。

[特徴]
エピペンは注射針一体型の注射器にアドレナリンという薬剤があらかじめ充填されたキット製剤です。
エピペンには0.15mgと0.3mgの2つの規格があり、15kg〜30kgが0.15mg、30kg以上が0.3mgを使うことになっています。ただ、食物アレルギーは乳幼児に頻度が高いため、重症だけれど、15kg未満の子には処方できないことになります。海外では15kgに満たなくても、処方されるケースがあるようです。
エピペンの作用は、血圧をあげて、交感神経を高めるため、副作用としては、嘔吐、吐き気、不安感、顔面蒼白、脱力感、震顫、頭痛などがあります。また、重大なものでは、致死的不整脈などがあります。高齢者で心臓疾患のある人では、副作用がでることがありますが、若年者で心臓に問題がない場合は、緊急時に使われる薬剤の中では、安全性の高いものです。

[処方の対象者]
・過去に食物、ハチ刺傷等により重篤なアナフィラキシーを起こしたことがある人
・医師により重篤なアナフィラキシーを起こす可能性があると診断された人
・アナフィラキシーを起こしても、すぐに医療機関に受診できない状況にある場合

[使用基準に関する指針]
日本小児アレルギー学会が2013年7月にエピペン使用基準を発表しました。エピペンはアナフィラキシーショックの補助治療薬ですが、完全にショックに陥ってから注射するよりも、ショック状態の手前のレベル での注射が推奨されます。

一般向けエピペンの適応(日本小児アレルギー学会)
エピペンが処方されている患者でアナフィラキシーショックを疑う場合、
下記の症状が一つでもあれば使用すべきである。

消化器の症状
・繰り返し吐き続ける   ・持続する強い(がまんできない)おなかの痛み
呼吸器の症状
・のどや胸が締め付けられる   ・声がかすれる
・犬が吠えるような咳   ・持続する強い咳込み
・ぜーぜーする呼吸   ・息がしにくい
全身の症状
・唇や爪が青白い   ・脈を触れにくい・不規則
・意識がもうろうとしている   ・ぐったりしている   ・尿や便を漏らす

[保育園・幼稚園・学校での対応]
保育園・幼稚園・学校では、教職員がエピペンを自ら注射できない状況にある児童生徒に代わってそれを注射することは、医師法その他の関係法令の違反にはならないと言う判断が示されています。
その為には保育園・幼稚園・学校関係職員の心構えとアナフィラキシーの正しい知識の習得、役割分担の明確化と緊急事態発生に備えた予行演習の必要性があります。

[使用後の注意]
エピペンはあくまでもアナフィラキシーの補助治療薬です。このため、注射後は速やかに医療機関を受診してください。アドレナリンの効果が切れてきたとき(15分後以降)に再び症状が出現するかもしれません。


最近食物アレルギーのお子さんは非常に増えています。特に保育園では食物アレルギーを持つお子さんが多く、保育所におけるアレルギー対応ガイドラインが出され、細かな食物制限も必要となります。日本ではエピペンの使用は体重15s以上との制限があるため、なかなか使いにくい場合も多いですね。

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