思春期早発症(13/11/18更新)

[思春期早発症とは]
男性ホルモン、女性ホルモンの分泌による二次性徴の成熟が、早い年齢で起こってしまう病気です。8〜10歳以前に性早熟が現れた場合をさします。

[原因]
中枢性:通常の思春期の時のように下垂体から性腺刺激ホルモンが分泌され、それにより性腺から性ホルモンが分泌されて起こります。女子に起こるものの多くは原因不明の特発性と呼ばれるものですが、男子に起こるものは脳腫瘍(胚芽腫、過誤腫等)などの器質性の原因が多くみられます。
末梢性:性腺または副腎で性ホルモンがつくられて、思春期早発症が起こります。副腎腫瘍、卵巣腫瘍、治療不十分な先天性副腎皮質過形成症や特殊な遺伝子異常によるマックキューン・オルブライト症候群、家族性男性性早熟症などがその原因です。

[症状]
男子:9歳未満で陰茎、精巣の発育。10歳未満で陰毛の発生。11歳未満でひげ、声変わりを認める。
女子:7歳未満で乳房の発育。8歳未満で陰毛。10歳未満初経。
ともに身長、体重が著しく増加します。早期に体が完成してしまうために、一時的に身長が伸びた後、小柄のままで身長が止まってしまう事になります。
原因が脳腫瘍による場合は、腫瘍の圧迫症状による頭痛・視野狭窄などが起こることがあります。

「診断]
1. 主症候
(1) 男児の主症候
9歳未満で精巣、陰茎、隠嚢等の明らかな発育が起こる。
10 歳未満で陰毛発生をみる。
11 歳未満で腋毛、ひげの発生や声変わりをみる。
(2) 女児の主症候
7歳6ヶ月未満で乳房発育がおこる。
8歳未満で陰毛発生、または小隠唇色素沈着等の外陰部成熟、あるいは腋毛発生がおこる。
10 歳6ヶ月未満で初経をみる。
2. 副症候
発育途上で次の所見をみる
(1) 身長促進現象:身長が標準身長の2.0SD 以上。または年間成長速度が2年以上にわたって標準値の1.5SD 以上。
(2) 骨成熟促進現象:骨年齢―暦年齢≧2歳6ヶ月を満たす場合。
または暦年齢5歳未満は骨年齢/暦年齢≧1.6 を満たす場合.
(3) 骨年齢/身長年齢≧1.5 を満たす場合。
3. 検査所見
下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進と性ステロイドホルモン分泌亢進の両者が明らかに認められる。

日本人の平均と比較して、典型的には2〜3年以上早い思春期徴候が2つ以上存在する、あるいは早期の思春期徴候が1つの場合でも、年齢不相応な身長の著明な伸び、あるいは骨成熟の明らかな進みなどがあることで診断されます。もし、身長が低いにもかかわらず、このような症状が見られたときには、診断基準年齢を1歳高くして、治療を考えることになります。
もし、思春期の徴候が認められているにも関わらず、性ステロイドホルモンの上昇が認められない場合、特に分泌が下がっている場合には、腫瘍や自律性機能性卵巣嚢腫などの特殊な思春期早発症を考える必要があります。
特発性中枢性思春期早発症は女児では珍しくありませんが、男児の場合には、発見の困難な病気が隠れていることが多いので、注意が必要です。

[治療]
末梢性思春期早発症の場合は、原因の腫瘍などに対する治療が第一です。
中枢性思春期早発症は、LH‐RHアナログという薬剤で選択的に性腺刺激ホルモンの分泌を抑えます。月1回の皮下注射です。多くの場合、著しい効果を示し、二次性徴の進行停止・退縮がみられ、骨年齢の進行が緩やかになります。

相談を受けるのは上述のように女の子が多いです。男の子の場合は何かの病気が隠れていることがありますので要注意ですね。学校の健診に行くと、最近の子どもさんは昔に比べて発育が早いな、と感じることが多いのですが、それでも3年生にはなっておられるので、2年生で乳房が大きくなってきた…というような時は思春期早発症のことを心に留めておいてください。男の子は健診で見るだけではわかりにくいので、保護者の方の気づき、が必要です。ただしそれほど頻度の高い病気ではありませんので、過剰に心配はいらないです。

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