シナジス(パリビズマブ(遺伝子組換え))(13/10/28更新)

[シナジスとは]
予防接種(ワクチン)ではありません。遺伝子組み換え技術によって作られたRSウイルスに対するモノクローナル抗体です。アメリカ合衆国では1998年から、日本では2002年から、承認・市販されています(商品名:シナジス[Synagis])
ウイルスの融合タンパク質を標的とし、RSウイルスが細胞へ侵入するのを抑制することによって感染を予防することが出来ます。治療ではなく予防にのみ使うものです。

[接種対象者]
早産・未熟児で生まれた方と先天性心疾患(心臓病)をお持ちの方
RSウイルス感染流行初期において
  1. 在胎期間28週以下の早産で、12ヶ月齢以下の新生児及び乳児
  2. 在胎期間29週〜35週の早産で、6ヶ月齢以下の新生児及び乳児
  3. 過去6ヶ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた24ヶ月齢以下の新生児、乳児及び幼児  
  4. 24ヶ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児、乳児及び幼児
  5. シーズン開始時に生後24ヶ月齢(満2歳)以下の免疫不全症児、ダウン症児

[投与方法、投与期間]
大腿前外側部に筋肉内注射。体重1kgあたり15mgを投与。注射の量が100mg(1ml)を越える場合は、2か所に分けて筋肉内注射を行なう。
RSウイルスが流行している期間、9月〜4月まで、月1回シナジスを投与する。(シナジスの効果の持続期間は約1か月であるため)
他のワクチンとの併用により副作用の発生率が上昇するという報告はありませんので、他のワクチンの投与スケジュールに関わらず、シナジス接種を行って問題ありません。

上記のように紹介はいたしましたが、接種対象者は限定されていますので、この注射は、まず私たちのような開業医が打つことはありません。NICU(新生児集中治療管理室)に入院されていたようなお子さんは、感染すると非常に重症になりますので、感染予防のために接種をしています。
本来であれば、こうした早産児以外の児についても、シナジスが保険適応であることが望ましいと思いますが、なにせシナジスは恐ろしく薬価の高い薬剤であり、それを許容してしまうと莫大な医療費がかかります。一般的なワクチンは1万前後で受けられるのに対し、このシナジスは最小の50mgのバイアルでも8万弱しますから、費用対効果(かけた費用に対して、どのくらい効果があるのか)が釣り合わない、という事になります。
予防効果は100%ではないのですが、上記の乳児の入院率はかなり減らせてはいるようです。
基本的に喘息等の呼吸器疾患を持っている方は、2歳以降でもRSウイルス感染症がきっかけになって、重度の喘息発作をおこす可能性はあるとは思うのですが、後はお子さん自身の免疫力、自身で抗体を作っていく力を信じていくことですね。

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