停留精巣(13/6/24更新)

[停留精巣とは]
精巣(睾丸)は女の子でいうと、卵巣に相当する器官です。停留精巣とは陰嚢(おちんちんの下のふくろ)の中に精巣が入ってない状態で、男の子の先天的な異常の中でもっとも頻度の高い疾患です。停留精巣の頻度は生下時3%から4%(低出生体重児では20%)ですが、生後3カ月頃までは精巣の自然下降が期待でき、1歳時には1%程度(低出生体重児では2%)となります。


[診断]
注意深く陰嚢を触ると精巣が触れますが、乳幼児期は精巣についている筋肉(挙睾筋(きょこうきん))が過敏で、反射的に収縮して精巣が陰嚢内にあったりなかったりしてわかりづらくなります。 このような筋肉反射は小学生まで続きます。
入浴後など緊張がとれた状態になると降りているのは移動性精巣と呼び、基本的に治療の必要はありません。本人がリラックスしているとき(お風呂に入って気持ちのよいときなど)に陰嚢内に左右同じ大きさの精巣を触れるのであれば停留精巣ではなく、基本的に治療は必要ありません。精巣が動くことは病気ではないのですが、1日のうち何時間上がったままなら病的で、それ以下なら正常範囲なのかはっきりした基準はありません。1日24時間の内23時間も上がっているようであれば、問題があるかも知れません。入浴後に何回か触ってみて触れない場合には、泌尿器科の専門医に相談します。
専門医が何回か診察して精巣が触れない場合には、腹腔内に精巣があるか精巣が欠損している可能性があります。この場合はCT、MRIやエコー(超音波)で精巣の場所を調べる方法もありますが、診断精度が低かったり侵襲(しんしゅう)が大きいので、一般的には行われていません。最近では腹腔鏡による診断と治療も行われるようになっています。

[治療の必要性]
治療により思春期以後の将来の精子の形成能力をよくできる可能性があります。
停留精巣では正常に下降している精巣にくらべて思春期以降の精巣癌の発生頻度が高いことが知られていますが、本邦での具体的な頻度を提示するのはデータが明瞭でないために困難です。米国のデータでは精巣癌の頻度は10万人に2.8人であり、米国の男性が一生の間に精巣癌にかかる危険性は500人に1人ぐらいとされていますが、停留精巣の男性の危険率は普通に下降している男性の10倍ぐらい高いと考えられています。残念ながら幼児期の治療により癌化率を下げることが出来るかどうかは不明です。しかし治療により精巣を自分で陰嚢の中に触れることが出来るようになると早期に癌を発見できます。
治療により生殖器の外観を整えることができます。これは男の子の発育過程において重要なことです。

[治療]
現時点では効果が確実で、安全性の高い手術治療がよいと考えられます。昔は4〜5歳ごろに手術を行っていましたが、最近は早い方が良いという事です。他に病気のない元気なお子さんの場合は生後9ヶ月頃より手術を受けることが勧められています。組織の発達による手術のし易さ等により2歳までに行うのが良いと言われています。
精巣を触知できるタイプ:精巣固定術をおこないます。
移動性精巣の手術適応:1日のうちほとんど挙上しているものや、両側の遊走精巣で挙上の程度がきついものは、精巣機能温存の意味から手術を考えます。移動性精巣の多くは手術適応ではありません。全移動性精巣のうちどれくらい手術になるかは、施設によってまちまちで、5%から25%くらいと多くはないようです。


3歳健診でチェックを行っていましたが、この観点からいうと、1才半健診の時に判断すべきかもわかりません。触診した時に、手で陰嚢の底まで引き下ろせる場合、精巣の大きさの左右差のあまりない場合などは緊急性は無いようですね。ご心配の方は専門の泌尿器でご相談下さい。

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