てんかん(13/6/3更新)

[てんかんとは]
脳の中では、神経細胞が電気信号でお互いに連絡しあい、常に調和の取れた活動をしています。しかし、何らかの原因で、その電気信号の調和が乱れてしまうと、意識を失ってしまったり、体を大きくガクンガクンさせるような痙攣が起きたり、急に動きが止まったりといった症状が出現します。このような発作を繰り返し起こすことを「てんかん」といいます。こういったてんかん発作を繰り返す脳の病気の総称であって実際てんかんというひとつの病気があるわけではありません。
また、発熱がきっかけとなって起こる熱性けいれんや泣き入りひきつけはてんかんではありません。てんかん発作は、大脳の神経細胞が無秩序に過剰に興奮することによって起こります。この過剰な興奮が脳のどの部分に起こるかによって、症状は様々です。
てんかんは最も頻度が高い神経疾患のひとつです。生涯を通じて1回でも発作を経験する人は人口の約10%、2回以上は人口の約4%程度とされています。頻回に発作があり、「てんかん」と診断される患者はおよそ1%です。したがって、わが国では約100万人のてんかん患者が存在します。

[原因]
てんかんは、子どもに多い病気です。発症年齢をみると、全体の7割が子どもで、特に4歳以下の乳幼児に多いことがわかります。成長期の子どもがかかる慢性病の中で頻度が高い病気です。
もともと脳に病気のある人ではてんかんが起こりやすい事が知られていますが、小児科のてんかん患者さんのほとんどは、それまでに脳の病気のなかった人(知能や運動の発達が正常)や、家系内にてんかん患者さんのいない人です。てんかんになったことにより、それまでに獲得した知能や発達、人格が障害されることはまずありません。
多くの場合、神経細胞が過剰に興奮する理由は不明で、体質によるものと考えられています(特発性)。一方、脳腫瘍や頭部外傷などの脳の病気にともなっててんかんが起こることもあります。これを二次性(症候性)てんかんと呼びます。
てんかん発作は、前触れなしに突然起こるものもありますが、発作の起こりやすい時間帯や誘発させる要因がはっきりしているものもあります。例えば、起きている時のみ発作が起こる型、寝ているときのみに起きやすい型、起きているときも寝ている時も関係なく起きる型もあります。全般発作を持つ特発性てんかんの 患者さんは、睡眠不足時、疲労時に発作が誘発されやすく、起きがけにおきやすい特徴を持っております。このような場合は普段から規則正しい日常生活に注意 する必要があります。

[症状]
(1) 発作の起こる範囲による分類
1. 部分発作
脳の一部分が過剰に興奮することによって起こる症状です。体の一部が勝手に動いたり、異常な感覚を感じたりします。意識は保たれるものを、"単純"部分発作と呼び、発作中に意識がなくなるものを"複雑"部分発作と呼びます。
2. 全般発作
脳全体が過剰興奮しておこる症状です。脳の一部の過剰興奮が脳全体に広がった場合には、部分発作の"二次性"全般化と呼びます。全身がけいれんしたり、意識がなくなったりします。
(2) 症状の特徴からみた分類
1. 強直間代発作
全身がガクガクする、または全身を硬直させる発作です。意識は無く、白目をむいたり、一点をみつめたり、口から泡を吹いたりします。
2. 欠神発作
突然、短時間、意識が無くなる発作です。直前に行なっていた動作の姿勢のまま動きが止まります。発作から回復すると、再び直前に行なっていた動作を開始します。
3. ミオクロニー発作
突然、電気が走ったように筋肉がビクンと収縮する発作です。"ミオクロニー"自体は、様々な原因で起こります。てんかんでないミオクロニーの代表は、寝入り端に起こるぴくつき(入眠時ミオクローヌス)で、これは生理的な現象です。

[診断]
てんかんの診断は、発作の様子を詳しく説明してもらうことから始まります。
目撃者は、「てんかん発作の記録の要点」をおさえ、身ぶりを交えるなど、できる限り発作の状況について説明できるようにして下さい。
・発作が起きた状況、時間
・発作の持続時間
・意識は保たれていたかどうか
・歩きまわったり、舌をなめるような、普段はしない異常な行動があったかどうか
・震えは左右どちらから始まったか?
・突っ張った姿勢なのか、両手足ががくがくしていたのか?

[検査]
脳波検査
てんかんは脳の神経細胞の電気的発射によっておきますが、この過剰な発射を脳波検査で記録することができます。そのため、脳波検査はてんかんの診断のために最も重要な検査です。
脳波検査は診断のみでなく、てんかんの発作型の判定にも役立ちます。
何回検査しても安全ですし、痛みもありません。
脳波検査の他
CT検査やMRI検査などは、脳腫瘍や脳外傷などを画像で確認できるため、てんかんの検査に有効です。
PET/SPECT、MGE などもてんかんの検査に使われます。
血液・尿検査
血液・尿検査もてんかんの診断に欠かせない検査です。
てんかんの発作は様々な原因でおこりますので、原因検索のために血液や尿の検査をします。
また、てんかんの薬物治療は長期間にわたり薬を飲み続ける必要があるので、服用する前に体の状態を調べる必要があります。

[治療]
どの薬を選ぶか
治療の基本は内服薬です。治りにくい場合にはてんかん外科手術も考慮されますが、まずは内服薬の効果を十分に試します。
数多くの抗てんかん薬が用意されています。それぞれの薬に特徴があり、得意分野が違います。「治療がうまくいく」のは「正しい薬を選んだ」場合です。薬の選択は、発作型とてんかん分類の診断に基づいて決めます。
「どんな発作なのか」「てんかん分類は何か」。発作型と分類を正しく診断することが、てんかん治療の第一歩です。


この病気は治るのか、治らないのか。この点が皆様ご心配でしょうね…。子どものてんかんは大人に比べると治りやすい特徴がありますから、根気よく治療を続けてください。大半の子どもの発作が消失します。数年の内服治療を続け、脳波の所見が良くなったら断薬します。断薬後には再発の有無の確認し、再発がなければ通院終了となります。おおむね8〜9割の子どもがこの段階まで到達することができます。時間はかかりますが、専門医の先生の指示に従って下さいね。

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