ドライスキン(13/5/20更新)

[ドライスキンとは?]

皮膚のうるおいは皮脂(皮膚表面の脂膜)、天然保湿因子(アミノ酸、尿素など角質層内の水溶性物質)、角質細胞間脂質(セラミド)という3つの物質によって一定に保たれています。ドライスキンとは皮膚最表層(角質層)に含まれる水分量が減少して皮膚が乾燥した状態をいいます。天然保湿因子は皮膚に柔軟性を持たせる水溶性物質であり、角質細胞間脂質は間隙からの水分蒸発を防いでいます。これらの物質が減少すると外からの防御能が低下します。

[原因]
皮脂の分泌には性ホルモンが関与しています。性ホルモンの分泌量は性別や年齢によって異なるため、皮脂の分泌量もその影響を受けます。生後6ヵ月頃までは母体由来の性ホルモンの影響で皮脂分泌量が多く、脂漏性皮膚炎を生じることがよくあります。しかし、その後から思春期頃までは皮脂の分泌量が減少し、ドライスキンの傾向になります。性ホルモンの分泌量が増加する思春期は再び皮脂の分泌が活発になりますが、女性では40歳〜50歳頃から、男性では60歳頃から急激に低下し、皮膚がカサカサしてきます。
入浴時の過度の洗浄、長時間入浴などによってもドライスキンになります。また、角質水分量は発汗や外気に影響されるため、冬季・過暖房によりドライスキンが悪化します。

[乾燥性皮膚疾患]
(1) 皮脂減少性湿疹
年齢を重ねるにつれ皮膚表面のうるおい成分である皮脂分泌が低下し、皮膚が乾燥してくる。特に冬季では空気の湿度が下がり発汗も減少するので、カサカサした皮膚は粉をふいた状態となり痒みを増し、掻きこわして湿疹を生じる。
(2) アトピー性皮膚炎
アレルギー要因と非アレルギー要因があり、それぞれに遺伝的体質と環境要因があると考えられている。
(3) 進行性指掌角皮症
20歳前後の女性で、特に結婚・出産などで急に水仕事が増えた機会に発症する。手の指(指の腹の部分)がカサカサと乾燥し、ひび割れを生じる。ひどくなると指紋がなくなることもある。利き手のほうに症状が強く現われ、冬になると増悪し、夏は軽快する。原因としては皮膚アルカリ中和能の低下、汗分泌低下に加えて水・洗剤・機械的刺激による接触皮膚炎と考えられている。
(4) 足蹠角皮症(かかとのひび割れ)
足のかかとは体重を支える場所で、皮膚の角質が肥厚している。肥厚した角質では体内から浸透してくる水分が、外側の角質まで充分に行き届かないので、表面が乾燥した状態となり、ひび割れ(亀裂という)を生じる。
(5) 小児乾燥性湿疹
皮膚の乾燥した幼小児の体幹(おなかと背中)に、毛穴(毛孔)に一致した粟粒大の小丘疹が多発し、鳥肌のように見え、掻痒が激しい。秋から冬にかけ増悪する。アトピー性皮膚炎の症状の一つとして見られることもある。

[スキンケア]
(1) 皮膚を清潔にする
1. 皮脂の喪失、かゆみの誘発を避けるため、熱い湯での入浴、長湯は避ける。また、洗浄力の強い洗浄剤の使用や、過度のあかすりも皮膚が乾燥します。
2. 入浴剤は岩塩タイプのもの、硫黄の温泉成分入りのものは避け、保湿成分の含まれるものを使用。
3. 石鹸は低刺激(弱酸性洗浄剤)のものを使用し、こすらず、よく泡立ててなでるように洗う。冬場や乾燥がひどい部位などは、石鹸使用の頻度を減らす。
4. ドライスキン時は、皮膚のバリア機能が低下した状態にあるため、より清潔にするように努める。
(2) 保湿クリーム
濡れたままの皮膚は水分の蒸発量が増すため、すばやくふき取り、入浴後には必ずクリーム剤やローションを塗る(油性基剤外用製剤ワセリン、尿素含有軟膏、ヘパリン類似物質製剤など)。
ワセリンは皮膚表面に膜を作って水分の蒸散を防ぐことで保湿効果を発揮しますが、寝る前に塗布すると汗の蒸散を妨げて熱がこもって痒みを感じることがあります。尿素製剤、ヘパリン類似物質製剤は、水分と結合することで角層中の水分を保持します。尿素製剤は角化症などで皮膚が厚くなった部位には効果的ですが、角質融解剥離作用により刺激になることがあります(痛みを感じる)。
(3) 室温、湿度
1. 冷暖房使用の際は、直接風に当たらないよう工夫。
2. 加湿器を使用。
(4) 掻破(そうは=掻くこと)の予防
1. 直接皮膚に接触する下着、衣類、装飾品に注意し、誘発を防止。肌着や衣類は刺激の少ない木綿製が望ましい。
2. かゆみが強い場合は薬剤の内服または軟膏を使用する。
(5) 栄養
1. 偏食(へんしょく)せず、バランスの良い食事を心がける。
2. ビタミンAが含まれる食品を摂取するようにする。
3. 飲酒、香辛料を控える。

皮膚が乾燥すると、とにかく皮膚の状態は悪くなります。この湿疹は何ですか?と言ってこられるお子さんがありますが、乾燥肌でもなく、体に島のように湿疹が出ていて、乾燥が原因ですね…、と説明することが多いですね。白癬菌の感染があることも、たまにあるようですが。

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