ロタリックスとロタテック(12/7/30更新)

一番大きな違いはロタリックスが1価のワクチンであるのに対し、ロタテックは5価のワクチンであることです。が、数が多い方が優れているかというと、そうでもないようです。
ヒトからは42種類のロタウイルスが見つかっており、胃腸炎を起こすのはG1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]、G9P[8]の5通りの組み合わせがほとんどです。
ロタリックスはG1P[8]1種類のヒトロタウイルス株を弱毒して作ったワクチンですが、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]、G9P[8]の他の種類のロタウイルスに対する予防効果も認められています。(ほとんどのヒトロタウイルス胃腸炎に有効、G2Pにはやや弱いとの報告がある)。
一方ロタテックはウシロタウイルスV7に、ヒトロタウイルスのG1、G2、G3、G4を持つV7遺伝子を、遺伝子組み換えによって組み込んだ、リアソータント(遺伝子組み換え)ウイルス4種と、さらにウシロタウイルスVP4の代わりに、P[8]遺伝子を持つヒトV4遺伝子を遺伝子組み換えによって組み込んだ、リアソータントウイルス1種の、計5種のウイルスを混合したものです。このワクチンは、G1、G2、G3、G4、P[8]が含まれているため、ヒトに病原性を持つG1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]、G9P[8]の全てのロタウイルスをカバーした予防効果が認められています。
ロタリックスはヒトロタウイルス由来なので、腸の中でよく増え、腸管からの排泄も多く、周囲への感染があるかもといわれています。ロタテックはウシロタウイルス由来ですので人の腸内での繁殖が悪く、その分周囲への感染は少ないかもわかりませんが、抗体獲得確率も低くなるので、ワクチン内のウイルス量が多く接種量も多くなっています。接種回数も3回です。

二つのワクチンの違いを表にしてみました。

ワクチン
ロタリックス
ロタテック
国際誕生 
(日本での発売)
2004.7  
(2011.11.21)
2005.11  
(2012.7.20)
製造メーカー
GSK(グラクソ・スミスクライン) MSD(メルク・シャープ&ドーム)
組成
ヒトロタウイルス(G1P[8])を弱毒化 ウシロタウイルスのV7に、ヒトロタウイルスのG1,G2,G3,G4を組み入れたリアソータント(遺伝子組み換え)のウイルス4種と、ウシロタウイルスVP4にP[8]遺伝子を組み込んだリアソータントのウイルス1種の計5種のウイルスを混ぜてある
ウイルスの分量
G1P[8]ヒトロタウイルス 106以上 G1型ロタウイルス    2.2×106以上
G2型ロタウイルス    2.8×106以上
G3型ロタウイルス    2.2×106以上
G4型ロタウイルス    2.0×106以上
PIA[8]型ロタウイルス  2.3×106以上
効能・効果
ロタウイルスによる胃腸炎の予防 ロタウイルスによる胃腸炎の予防
接種回数
2回 3回
接種間隔
1回目:生後6週以上
2回目:1回目から4週間以上あける
生後6週以上24週未満に接種を完了させる。
初回接種は生後15週(3ヵ月半)までに始めることが望ましい
1回目:生後6週以上
2回目:1回目から4週間以上あける
3回目:2回目から4週間以上あける
生後6週以上32週未満に接種を完了させる。
初回接種は生後15週(3ヵ月半)までに始めることが望ましい
接種方法
1回1.5ml 経口接種 1回2ml 経口接種
接種金額
1回13000円 1回8500円
副反応
易刺激性(7.3%)
下痢(3.5%)
咳嗽/鼻漏(3.3%)
下痢(5.5%)
嘔吐(4.2%)
胃腸炎(3.4%)
発熱(1.4%)

1価よりも5価の方が明らかに優れている、という訳でもなさそうです。効果に関してはあまり差はないようです。むしろ1価ワクチンの方がヒトワクチン由来ですので、予防効果の%がやや高いという報告もあります。
発売開始されてまだ間も無いのですが、ロタテックの接種をしました。投与する側からいえば、容器の形状によるのか、量は多くても、ロタリックスよりは飲ませやすかったです。蓋をあける際に中栓がワクチンの中に落ちてしまう、というロタリックスの欠点は当院でも経験したのですが、ロタテックにはそれはありません。接種回数が多いため、3回通わないといけないのですが、最後は32週まで(生後8か月になるまで)に飲むことができればいいので、BCGの接種を挟んだり、一度にたくさんのワクチンを受けることに抵抗がある方でも、スケジュールを組む余裕があるかと思います。

copyright(c) Yamauchi Clinic. all right reseaved.