OPV(経口生ワクチン)とIPV(不活化ワクチン)の比較
長所に○、短所に▲ 出典:日常診療に役立つ小児感染症マニュアル 日本では現在、経口生ポリオワクチン(OPV)が予防接種に使用されていますが、数百万分の1の確率で発生するワクチン関連麻痺(VAPP)が問題となっており、これを惹起しない不活化ポリオワクチン(IPV)への移行が必要とされています。(財)日本ポリオ研究所(日本ポリオ)が作ったセービン IPVは世界唯一の弱毒株を用いた不活化ポリオワクチンであり、現在欧米で使われている野生株を用いた不活化ポリオワクチンと同等の安全性と有効性を備えており、さらに製造工程での安全面に優れているためWHOからもその早期開発が求められています。 単独不活化ポリオワクチン(IPV)の開発は、他の国にならって平成10年から臨床試験が実施され、平成13年には製造承認申請が行われたのですが、国内では平成14年からDPT(三種混合)と合わせた4種混合ワクチン開発の検討が開始され、平成17年に医薬品の臨床試験の実施基準上(データの不備等)の問題もあり、単独IPVの承認申請はポリオ研究所自身から取り下げられました。その後平成20年にやっと日本ポリオからセービン株IPV用たねウィルスの分与とその企業化にかかる権利の譲渡が行われ4種混合ワクチンの開発が始まりました。24年1月末までに、ようやく2社のメーカーから、不活化ポリオワクチンとジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオワクチンの4種混合ワクチンの薬事申請が出されました。そして、三種混合ワクチンを受けた人のために平成24年2月23日にIPV単独ワクチンの薬事申請をメーカーが行いました。 これはフランスのサノフィ・アベンティスの子会社サノフィパスツールで、1982年に不活化ワクチンを開発し、すでに世界91カ国で承認を受け、2億3000万本以上の接種実績があります。 どうやら来年度中にはIPVが導入されるようですが、おそらく平成24年末になるということ、秋のOPV接種時には間に合いません。OPVからIPVへの切り替えは、おそらく他の国にならって3年くらいを目途にスケジュールが立てられると思われます。 申請されてから承認まで1年以内(おそらく間違いないと思いますが…)というのは他のワクチンに比べると異例の速さのように思えます。この空白?の1年にOPV接種者が激減することを厚生労働省は心配しています。 今後、ポリオが絶滅するまでに弱いIPVの免疫力の上げるためには、IPV2回接種で免疫をつけておいてしばらくたってからOPVを受ける、というのが良いような気もします。これならVAPPも減るでしょう。絶滅してしまえばもちろんOPVは必要ありませんし、そのうち種痘のようにIPVすら要らなくなるでしょうが…。すこし前までは、ポリオの絶滅はすぐそこだ、と思っていましたが、どうやらまだまだ時間がかかりそうです。保護者の方には、いずれ子どもたちが大きくなったらポリオはなくなっていますよ、なんて話していたのですが…。 |