テトラサイクリン系抗生物質(12/1/16更新)

[テトラサイクリン系抗生物質とは]
テトラサイクリンという名称は、4つの(tetra-)炭化水素からなる有機環(cycl-)の誘導体(-ine)という意味です。
作用は静菌的であるため、抗菌力はβラクタムと言われるペニシリンやセフェム系の抗生物質やニューキノロン剤という新しいタイプの抗菌剤に劣りますが、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症に対してある程度の効果を発揮したり、他の薬剤に無い特性を持つため今でも時に使用されています。ニキビに対する抗生物質として使用されることが多いです。また細胞壁を持たないマイコプラズマなどにも効果を示すため、小児のマイコプラズマ肺炎に対して特効薬となります。
最初に合成されたテトラサイクリン(アクロマイシン)は副作用が強かったので今ではほとんど使用されることはありません。日本で現在内服薬として使用されているのはミノマイシン(ミノサイクリン)とビブラマイシン(ドキシサイクリン)の2種類です。

[副作用]
経口投与された全てのテトラサイクリン系は,悪心,嘔吐,および下痢などを起こすことがあります。また水と一緒に飲み込まないと食道びらんを起こしうるということです。また光線過敏症を引き起こすこともあります。多形紅斑(皮膚の赤み)、発疹なども少数報告されています。
他のテトラサイクリン系には無くてミノマイシン(ミノサイクリン)に特有の副作用には、めまい、運動障害、耳鳴といった前庭障害があります。 この副作用は男性よりも女性に格段に起きやすく、ミノサイクリンを服用している女性の50-70%に発症するようです。ですので思春期以降の女性にはまず使用はしません。ビブラマイシン(ドキシサイクリン)にはこの副作用はありません。
小児に対して一番問題になっていることは、8歳以下の小児および胎児において,歯の着色,歯のエナメル質の形成不全,および異常な骨成長を起こすことがあるということです。これは2週間以上の長期使用されたときにその可能性が高くなるようです。

妊婦・授乳中の母親、そして8歳以下の小児への投与は可能な限り避けられるべきなのですが、重症感染症で、かつテトラサイクリンが選択される状況では、利益と有害作用の兼ね合いで、妊婦・小児などでも使用されることがあります。昨年から耐性のマイコプラズマ感染症が非常に多く、コメントにも繰り返し書きましたが、最初にマクロライド系の抗生物質を使用して熱が下がらず、咳もひどい場合にはどうしても使用せざるを得ない状況になり、最近はこのテトラサイクリン系抗生物質、ミノマイシンの使用頻度が非常に高くなっています…。兄弟からの感染の可能性があったり、症状の重い場合は、8歳以上ならまずミノマイシンから処方することもあります。8歳以下のお子さんでは、兄弟感染例でもやはり第1選択薬として処方することはためらわれます。でも症状を考えると短期間使用なら、ということで処方する例が増えています。5日以内なら副作用は出にくい、ということです。
今年は10歳の男のお子さんに、マクロライドが効かなかったためにミノマイシンを処方して眩暈の副作用が出た例がありました。ビブラマイシンにはこの副作用がないので、ビブラマイシンを同年齢の他のお子さんに処方したら、これは薬のせいか、マイコプラズマのせいかどちらかははっきりしませんが、発疹が出たりして…。
本当に最近のマイコプラズマ感染症には困り果てています。テトラサイクリン系の抗生物質も耐性菌がでやすいからか、注射薬にも反応せず何の薬も効果がない方もおられたり、熱も下がらず、咳もひどく、待っていれば自然に熱が下がる病気なのかもわかりませんが、インフルエンザよりもかなり厄介です。

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