MMRワクチン(11/12/12更新)

[MMRワクチンとは]
麻疹(Measles)おたふくかぜ(Mummps)風疹(Rubella )の3つの混合ワクチンです。日本では1989年から定期接種が始まりましたが、髄膜炎の副反応が強くでたという理由で4年後に中止されました。中止までの経緯には、単なる副反応の結果だけではなく、いろいろな問題はあったようです。その結果日本ではおたふくかぜのワクチンは定期接種として行われない状態がずっと続いています。先進国で定期接種化していないのは、他のワクチン同様日本ぐらいかもわかりません。

[患者の発生数]
米国では1967 年からワクチンの使用が始まり、1977年からは1歳以上の幼児の定期接種に 組み入れられ、国内のおたふくかぜの発生件数は順調に減りました。1986年から 1987年に起きた流行を契機として、ワクチンの2回接種が実施されるように なり、今世紀に入ってからの患者数は年間300例以下で、しかもヒトからヒ トへの伝播はせいぜい2〜3回で終息する程度の散発的なものに抑えこむ迄に成功しています。1982年から14年間MMRワクチンを使用したフィンランドでは1996年に国内発生件数0を達成しました。

2009年時点、世界118ヵ国で麻疹・風疹・おたふくかぜ混合(MMR)生ワクチンなどの定期接種が行なわれる様になり、ほとんどの国で2回接種が行われています。それにともない世界的におたふくかぜの発生件数は激減しており、おたふくかぜの流行を繰り返しているのはエジプト、リビア以外のアフリカ諸国と日本を含む東アジア地域の一部の国だけに限られてきつつあります。

[ワクチンの接種回数]
WHOはMMRワクチンによるおたふくかぜの予防効果は1回接種では十分では無く、2回接種を奨励しています。MMRワクチンを小児の定期接種用に導入している国々のほとんどは2回接種を導入しています。近年、MMRワクチンの2回目接種率が90%を上回る地域においても青年層におたふくかぜの発生があり、欧米の一部では3回接種を奨励している地域もあります。3回接種を実施したオランダの事例では、再感染がないことが報告されています。3回接種を採用した時の費用対効果比の解析はまだ無いようですが。

[ワクチンの副反応]
(1) 諸外国のワクチンの副反応
おたふくかぜワクチンの軽度な副反応として、接種後24時間以内の接種部位の痒み等がありますが、ほとんどは一過性で何も処置をしなくても消失します。また、接種後10〜14日後に微熱あるいは軽度の耳下腺腫脹を呈する場合があります(1〜2%)、特に治療を必要とすることはありません。この他に頻度は高くありません、発疹、痒みあるいは紫斑が現れることもあります(1%以下)。感音性難聴、睾丸炎、急性筋炎が起こることもありますが、きわめてまれです。一方、入院加療が必要なおたふくかぜワクチンの副反応として、無菌性髄膜炎が起こり得jます。ワクチン接種後2〜3週間目に髄液中の細胞数の増多が認められ、それに伴い発熱、頭痛、嘔吐などの髄膜刺激症状が出現します。無菌性髄膜炎の重症度は自然感染例とワクチン接種例で変わりません。無菌性髄膜炎の治療方法は自然感染時と同様です。一般に予後はどちらも良好です。
(2) わが国のワクチンの副反応
わが国でおたふくかぜワクチンの副反応として無菌性髄膜炎が大きく問題とされたのは、欧米に習って1989年4月から国産MMRワクチンが定期接種に組み入れられた以降です。1981年から国産おたふくかぜワクチンが使われていますしたが、接種数が少なかったこと、当時の技術では自然感染ウイルスとワクチン接種ウイルスの識別が技術的に困難であったことから、副反応としての無菌性髄膜炎が問題にされた形跡はありませんでした。1989年当時、わが国では、おたふくかぜワクチン5種に加えて、麻疹ワクチン4種、風疹ワクチン5種が認可されていました。そこで、国産MMRワクチンには実績のあるワクチン株として、おたふくかぜワクチンに微研会のUrabe-AM9株、麻疹ワクチンに北里AIK-C、風疹ワクチンに武田のTo336株を含んだMMRワクチン統一株で使用が始まりました。定期接種化とともに無菌性髄膜炎の発生が表面化し、その頻度は0.16%(接種者約10万人)に達しました。原因がワクチンウイルスであることを証明することも技術的に可能になっていました。MMRワクチンに含まれる麻しんウイルス成分が免疫抑制を起こし、それがムンプスウイルスと混合されことによりムンプスウイルス成分の副反応が強くでる可能性が指摘され、統一株MMRワクチンの使用を中止し、ワクチン製造所独自の麻疹、おたふくかぜ、風疹ワクチンを混合した自社株MMRワクチンの使用が選択されました。しかし、Hoshino-L32株使用によるMMRワクチン自社株(北里)の髄膜炎発生頻度は0.05%(接種者約21万人)、Torii株使用によるMMRワクチン自社株(武田)では、0.08%(接種者約9万人)となり、大きな改善は見られませんでした。他の国産ワクチン株であるMiyahara株(化血研)、NK-M46株(千葉血)についても髄膜炎発生頻度に差異はありませんでした。1993年、定期接種開始後わずか4年で国産MMRワクチンの定期接種は中止されました。この間のワクチン接種による健康被害者として死亡一時金受給者3名、障害児養育年金4名、医療費医療手当1,032名がありました。おたふくかぜワクチンはその後、単味の任意接種ワクチンとして利用されています。2004年、おたふくかぜワクチン単味接種後の副反応調査が厚生科学研究医薬品安全総合事業でおこなわれました。無菌性髄膜炎の発生頻度30 は0.03〜0.06%であり、どの国産単味ワクチンもMMRワクチン時と大差がなかったことから、無菌性髄膜炎の発生は、他のワクチン株成分と混合した結果生じたものではなく、おたふくかぜワクチンそれ自身によって起こることが確認されました。
 

[おたふくかぜワクチンに関する「ファクトシート」国立感染症研究所から]の出典


[国産おたふくかぜワクチンの問題点]

わが国のおたふくかぜワクチンは、ムンプスワクチン研究班が組織され、先行するJeryl-Lynn株に追いつく意気込みで開発が進められました。しかし、おたふくかぜワクチンとしてUrabe-AM9株を含む国産MMRワクチン統一株の無菌性髄膜炎頻度は0.16%で、ムンプスウイルス自然感染(1% 以上)に比べて低いものの、麻疹単味ワクチンには無い副反応であったため混乱が生じ、国産MMRワクチンを麻疹の定期接種ワクチンとして使う事は中止されました。
ところで、Urabe-AM9株を含む国産MMRワクチン自社株(微研会)が使われたところ、無菌性髄膜炎の発生頻度は0.005%(接種者約7万人)と激減し、副反応の少ないワクチンであることが示されました。微研会のMMRワクチン自社株は安全性の点で優れていましたが、このことが逆に混合された他の麻疹、風疹ワクチン成分との相性で片付けられないワクチンの品質管理上の問題を生じました。なぜワクチン品質上の差が生じたのかの理由が明らかでないため、微研会のUrabe-AM9株を含むおたふくかぜワクチンの製造・販売は中止されています。
[おたふくかぜワクチンに関する「ファクトシート」国立感染症研究所から]の出典

とにかく今後は日本製のMMRワクチンというのは開発されそうにありません。MRワクチンに加えておたふくかぜのワクチンが公費接種で認められるか、今申請をしているメルク社のMMRワクチンが承認されるのがどちらが早いでしょうか??今は国産のワクチンメーカーよりも外資系のワクチン会社のほうが強いのが、政治力の差なんだかどうだか…。(メルク社はサーバリックス、ロタリックスの製造会社であります)
どちらにせよ、日本でのワクチン接種の公費接種化がもっと進んで欲しいと願っている日々であります。 

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