摂食障害(11/11/28更新)

[摂食障害とは]
心理的な原因で食に異常をきたす病気で、拒食症と過食症があります。近年では嚥下障害等の機能的な摂食障害との区別をつけるため、中枢性摂食異常症とも呼ばれています。

拒食症:食べるのを拒むということです。食事を摂らなくなります。 それは、意図的に食事の量を極端に制限したり、限られたカロリーの食事しかとらない症状、つまりダイエットがきっかけで始まることが多いです。他にも、なんとなく食べる気にならないとか、そのときは何が原因なのか分からないことで始まってしまうこともあります。それがエスカレートし、、明らかに痩せすぎにもかかわらず食べることを拒否したり、自分では食べなくてはいけないと分かっていながらも、体が食べるということを受け付けなくなってしまう人もいます。このような低栄養の状態が続くと通常であれば体力は低下していくはずなのですが、拒食症の人は逆にとても活動的になることがあります。

過食症:拒食症とは反対に食べ過ぎてしまいます。私たちが一般的に想像する「食べ過ぎ」とはかなり違い、限度なく食べ続けるのが過食症の特徴です。自分でおさえようと思っても手が勝手に動いてしまいます。食べて、おいしいという感覚はなく、ただ口の中にできるだけたくさんの食べ物を詰め込もうとします。そして、その食べたものをすべて吐いてしまいます。当然体重は増えていきます。わかっていても、食べることをやめられない…それが過食症です。

拒食と過食は相反するもののように捉えがちですが、拒食症から過食症に移行するケースが約60〜70%に見られたり、「極端なやせ願望」あるいは「肥満恐怖」などが共通し、病気のステージが異なるだけの同一疾患とも考えられています。 したがって拒食症、過食症を区別する指標は、基本的には正常最低限体重を維持しているかどうかのみといえます。
世界における摂食障害の医学的な詳細な記述は19世紀に見られますが、日本では1960年代にはじめて報告されています。その後急激に患者数は増加し、約1000人に1人を超える有病率が指摘され、現在ではだれでもが罹患しうる病気であると言えるでしょう。この病気は都市部に多く見られるのも特徴の一つで、文化的な影響も大きいといえるようです。欧米や日本などのいわゆる先進国では患者が増加傾向にありますが、発展途上国や食糧難の地域ではほとんどみられません。
一般的に、摂食障害は10代後半から20代前半の女性に多く見られ、発症の平均年齢は18歳です。近年は小学生や中高年の女性、そして男性が発症する例も増えているようです。(男性の摂食障害患者さんは、女性に比べると5パーセント程度です。)

[原因]
摂食障害の原因は人によって様々です。はたから見れば“些細な”事が引き金となっていることが多いですが、他人が簡単に分析できるほど単純ではなく、原因がわからない場合もあります。以下のことが考えられるきっかけです。
○過激なダイエット
○肉親の死などの精神的ショック
○生活環境の変化などによる過度のストレス
また、摂食障害になりやすい性格、あるいは、摂食障害の人に共通して見られる性格は次のようなものがあります。
○まじめ,神経質,完璧主義,努力家
○傷つきやすく、いつも人に気を使う
○他者依存的な傾向が強い

[症状]
拒食症では、無月経や、体重の減少に比例して低血圧、脈拍数の減少、低体温と冷え、背中のうぶ毛の増加、カロチン症(顔、手足の ひらが黄色くなる)、便秘、むくみなどが起こります。
過食嘔吐していると唾液腺(えら)の腫大や手背の吐きダコが認められます。
血液検査では、肝機能障 害、白血球減少、貧血、高あるいは低コレステロール血症、電解質異常(低ナトリウム、低カリウム血症)が認められることがあります。栄養失調の影響で、甲状腺ホルモン、女性ホルモン、成長ホルモンが低下します。これらは体重が回復すればすべて改善します。が、重症になると低血糖で意識がなくなったり、電解質異常(低カリウム血症)により不整脈をおこし、命に係わる可能性もありますので入院して治療が必要になります。生理が止まることを危険信号ととらえてください。
成長期に発病した場合は、身長 の伸びずに低身長となり、将来の骨粗鬆症を起こす確率もふえます。
過食症では正常体重にため大きな異常を認めないことが多いのですが、嘔吐や下剤乱用では電解質異常や腎機能障害 を伴いやすくなります。

[対処]
拒食と過食は周期的に繰り返される場合が多く、精神科医・心療内科医など医師や心理カウンセラーの心理的なカウンセリングを受けることが有効であるでしょう。しかしその背景にある心の問題を解決しないと摂食障害は完治せず、治療は長期化する傾向にあります。背景の問題解決には周囲の協力が必要です。

薬の量を決める時には体重から判断しますので、体重を聞くと、小学校高学年の女の子で時々太ってるから言うのがイヤ、恥ずかしい、と言う子がいます。決して太ってはいないのに…。小学生では特にまだまだ成長期にありますので、ダイエットは禁物です。ほんの少しのきっかけから、食べるのを減らし、その後は食べないといけない、と分かっていても食べられなくなる悪循環。なかなか治療は難しいですね。

copyright(c) Yamauchi Clinic. all right reseaved.