心的外傷後ストレス障害Post Traumatic Stress Disorder(PTSD)(11/6/20更新)

[PTSDとは]

強烈なトラウマ体験(心的外傷)がストレス源(ストレッサー)になり、心身に支障を来し、社会生活にも影響を及ぼすストレス障害のこと。 トラウマには、事故・災害等に受ける急性の外傷と、虐待、いじめ等で受ける慢性の外傷があります。
大人には、「自我」と呼ばれる現実検討機能が備わっていますので、日常生活のさまざまな刺激に対して、健全に対応することができます。しかし、突然の事故や事件などの場合、自我のコントロールを超えた暴力的・侵入的な刺激に対して対応ができません。この時に受けた傷が「トラウマ(心的外傷)」となるのです。、「自我」の未発達な子どもの場合、事件・事故現場での心理的な防衛が充分でなく衝撃が精神を直撃するため、その影響が深刻になります。
しかし、どのような衝撃的出来事がPTSDの原因となりうるのかについては、多くの議論があります。例えば、同じような出来事に遭遇したとしてもPTSDを発症する人とそうでない人がいること、性格傾向や精神障害の家族歴など様々な要因が発症に影響することなどが、多くの研究によって示されており、「衝撃的出来事の経験=PTSD発症」という単純な図式は描けないことは明らかだからです。

[症状]
A:衝撃的な事件の体験・目撃をしたかどうか。
体験には、直接の被害者及び遭遇した目撃者も含まれます。直接の被害者はもとより、その家族、ビルの崩壊現場を目撃した人も体験者です。
B:解離症状
解離症状とは、自分が何かから切り離されてしまったように感じる様々な症状です。例えば、感情が動いていない感じ、現実感が少ない。現実的に家にいるのに、家族や学校から切り離されているような感じがしている、友達の会話が宙に浮いている感じがするなどです。衝撃的な事件の体験後に起こりえます。
PTSDの主要症状は再体験(想起)、回避、過覚醒の3つです。
1) 再体験(想起): 原因となった外傷的な体験が、意図しないのに繰り返し思い出されたり、夢に登場したりします。
2)  回避 :体験を思い出すような状況や場面を、意識的あるいは無意識的に避け続けるという症状、および感情や感覚などの反応性の麻痺という症状を指しています。
3) 過覚醒 :交感神経系の亢進状態が続いていることで、不眠やイライラなどが症状として見られます。
子どもの場合には、まず解離症状の程度を詳細にチェックします。心的外傷を受けた時に解離症状を呈していた子どものPTSDが深刻であり、後に人格障害を始めとした様々な精神病や非行・犯罪を併発する確率が高いとう報告があるためです。また、衝撃を受ける現場で「何が生じたか」を客観視する力が未発達のため、イメージや身体感覚等の主観的な情報といっしょに取り込んでいますから、PTSDの症状は、衝撃を受けた時のさまざまな主体的な体験とともに生じるようになります。悪夢、フラッシュバック、頭痛、腹痛、吐き気等様々な身体症状等があります。
外傷体験から4週間以内に始まり、2日〜4週間以内におさまるものは「急性ストレス障害」として、PTSDとは区別されています。
PTSDの症状は、多くが外傷体験から3か月以内に現れ始めますが、数か月、数年後に現れることもあるようです。

[対応の仕方]
・家族や友達との接し方
トラウマになるような恐ろしい経験は、周りの人にとっても不安や恐怖を感じさせるものです。
そのため、知らず知らずのうちに、トラウマを負った人を責めたり、こころの距離をとろうとしがちになります。
?話をじっくり聞くこと
時に、よかれと思って言った励ましの言葉やなぐさめの言葉が、かえって相手を傷つけていることがあります。
ただ、相手の言葉をさえぎったり否定することなく、だまってうなずきながら話を聞くだけで、本人は少し楽になります。
・ひとりですべてを背負おうとしないで
トラウマを負った人には真っ正面からきちんと接することが大切ですが、「この人を理解できるのは私だけだ」といった思いこみは危険です。かえって相手をコントロールしようとして傷つけてしまうことになりかねません。
また、話を聞いているうちに自分もその体験に対して恐怖や怒りを感じて、同じ体験をしたかのようになってしまうこともあります。
のめりこみすぎず、離れすぎず、自分ひとりだけでなく複数の人と力を合わせて、余裕をもって本人と接するように心がけましょう。
・子ども達に対しては
危機状況において、最大の援助者は家族です。まず、ご家族が子どもの心的外傷に対しての応急処置ができることによって、PTSDの悪化を予防することができます。そのためには、まず、ご家族が自分の不安に対応することから始めてください。身近な家族や教師が不安を抱えたまま子どもに対応していれば、子どもたちは大人の不安を取りこんでしまうので余計に反応が悪化します。また、子ども以上に母親が不安になってしまった場合は、子どもが親を安心させるために自分の不安や恐怖を抑圧してしまう場合もあります。無理せず、自分のペースでできることから対応していってください。
子どもさんを安心させ、体の緊張をほぐし、落ち着かせる事を一緒にしてあげて下さい。

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