[放射能とは]
物理学的な定義では、放射線を出す能力のこと。一般的には、放射能をもつ物質(放射性物質)といいます。 放射能と放射線とが混同され誤った意味で使われることがありますが、その定義は明確に異なります。放射線(ほうしゃせん)とは、一般的には電離性を有する高いエネルギーを持った電磁波や粒子線のことを指します。日本の媒体等においては「放射能を浴びる(又は、飛散する)」などと誤用が見受けられ、誤用そのままが一般に定着して常用されているようです。
[放射性物質とは]
放射能を持つ物質の総称で、ウラン、プルトニウム、トリウムのような核燃料物質、放射性元素もしくは放射性同位体、中性子を吸収又は核反応を起こして生成された放射化物質を指します。
核燃料や核兵器の製造や、加速器を用いて人工元素を合成することなどで人為的に取り扱われるものばかりが放射性物質ではありません。太陽や恒星から降り注ぐ宇宙線(中性子)は、大気に含まれる原子や人工物に吸収されて放射化します。例えば、炭素14は、空気中又は鉄骨中の窒素原子が宇宙からの中性子線を吸収して自然に生成されます。自然界には多種多様の放射性物質が存在し、そのうちのいくつかは生物に取り込まれています。土壌に含まれている放射性物質からは、その地に生息する生物は継続的に被曝しています。
[原発の大事故で放出されるおもな放射性物質]
(1)ヨウ素131
ヨウ素は184℃で気体になるため、原発事故で非常に放出されやすい。
天然のヨウ素はすべて安定なヨウ素127で、放射性のヨウ素は存在しない。ヨウ素は必須微量元素で、咽喉(のど)の近くの甲状腺に集められ成長ホルモンの成分になる。呼吸や水・食物をとおして放射性ヨウ素を取りこむと、ふつうのヨウ素と同じように甲状腺に集められ、甲状腺が集中的に被曝する。
ヨウ素131の半減期は8日なので半年後にはほとんど消滅する。しかし遺伝子についた傷が残ると、甲状腺ガンを引き起こす。チェルノブイリ原発事故による子どもの甲状腺ガンは事故の5年後に現われ始め、10年後にピークになった。発症率は、汚染地区が多いゴメリ州全体で、子ども約1000人に1人。
白血病および非甲状腺腫瘍:放射能被曝後に白血病発生の危険性が高まる事が初めて報告されたのは、日本の原爆投下後2-5年後に、それが増加する事が分かった事による。チェルノブイリ後では約2倍の白血病の増加があるとされている。一部で閉経前の乳癌の危険性は指摘されている。しかし、甲状腺癌以外は真の因果関係は明らかにされていない。
この放射性物質による甲状腺がんの発症を抑える為に、安定ヨウ素剤による甲状腺の保護処置が必要、と薬を求める人が後を絶ちませんし薬も手に入りません。が、40歳以上の人は基本的に不必要ですし、今報道されている量ではこれは全く必要ありません。今の状態ではかえって害になるようです。以下のページを参照してください。今刻々報道されているシーベルトの数値の中心はこのヨウ素131です。
日本核医学会 放射性医学総合研究所のお知らせ.
[現状では安定ヨウ素剤による甲状腺の保護処置は不要です]
http://jsnm.org/japanese/11-03-18
(2)セシウム137
セシウムも678℃で気体になるため、原発事故で放出されやすい。
セシウム137は、半減期が30年と長い。またセシウムは土壌粒子と結合しやすいため長い間地表から流されない。このため、短寿命の放射性核種やヨウ素131が消滅したあとにも残る。地面から放射線を放ち続け、農作物にも取り込まれて、長期汚染の原因になる。ただし、体内に入っても多くは排出される。
旧ソ連では、セシウム137が1平方メートルあたり150万ベクレル以上(1平方メートルあたり0,004グラム以上!)の地域を強制立退き地域にした。高濃度汚染地域は、チェルノブイリ原発から約250kmの範囲に点在している。
過去には、1960年代末までの大気圏核実験によって1憶8500万京ベクレルという、膨大な核分裂生成物がばらまかれ、地球全体を汚染した。核実験によるセシウム137は、現在も海水・地表・大気中に残っている。
このセシウム137に関しては人体に及ぼす影響ははっきりとは目に見えないようです。今の発表ではヨウ素131等としか言われていませんので、放出はされているとは思いますが値はわかりません。炉のすぐそばの地域以外ではそんなに高くないかもわかりませんが。
おそらくダイオキシンと同じ感覚です。
(3)プルトニウム239
プルトニウム239は原発事故ではあまり遠方には放出されず、大部分は事故原発の敷地周辺にとどまる。
プルトニウム239は核分裂反応でつくられるのではなく、核分裂反応により放出される中性子を燃料棒中のウラン238が吸収して生み出される。プルトニウムは94個の陽子をもつ。天然には陽子を92個もつウランよりも陽子数が多い元素は存在しないので、陽子を93個以上もつ人工元素を超ウラン元素という。
プルトニウム239の半減期は長く2万4千年もある。これは地球の年齢とくらべれば十分に短いが、人間の時間から見れば半永久的に長い。
空気中に粒子状になったプルトニウムを気道から吸入すると、大部分が気道の粘液によって食道へ送り出されるが、残り(4分の1程度)が肺に沈着する。沈着した粒子は肺に留まるか、胸のリンパ節に取り込まれるか、あるいは血管を経由して骨と肝臓に沈着する。プルトニウムとその化合物は人体にとって非常に有害である。プルトニウムはアルファ線を放出するため、体内に蓄積されると強い発癌性を持つといわれている。
プルトニウムの爆発の威力は、広島・長崎に落とされた原子爆弾の数百倍の威力があるともいわれますが、投下後数十年は草木も生えないであろうと言われた広島も長崎も半年後には復興を始め、現在に至っています。
一番厄介なのがこれです。今発表されている空気中の放射性物質の中には含まれません。が、本日くらいからぼちぼちこの言葉が聞かれるようになりました。実はこの福島第1原発の第3号機はプルサーマル発電と言って、一般的に使われているウランではなく、プルトニウムを主体にした燃料を使ったMOX発電を行っています。昨年の10月から稼働を始めました。他の1、2、4号機の、これも問題になっている使用済み核燃料の中にもプルトニウムが多量含まれています。なので、処理の方法は変わらない、と東京電力は伝えていますが、プルトニウムを燃料の中心としている場合は臨界事故(濃縮ウランやプルトニウムのような核分裂性物質の内部で核分裂連鎖反応が想定外の状況下で偶発的に起こった事象。臨界事故によって放出される中性子線は発生場所の付近にいる人間にとって極めて危険であり、またこの中性子線によって発生場所周囲の物体が放射能を帯びる原因となる。発生場所から数十メートル以内にいる作業員は重傷または死亡に至る高い危険にさらされ、また発生場所の付近には放射性物質が放出される危険が生じる)が起こる可能性が非常に高いです。国内外の原子力発電の専門家は、今回は安全停止では無かったものの、原子炉そのものは停止しているので、臨界事故は起こらないと見ています。チェルノブイリの場合と違って、突然予告もなく爆発するわけではないと思われますので、またそれが起こらないように今は現場の方達が(東京電力の幹部は除く)努力をして頂いている事と思いますので、ただただこの「人類が初めて作り出した放射性核種」であり、「かつて人類が遭遇した物質のうちでも最高の毒性」を持つ、悪魔の名前をもつ物質が落ち着いてくれることを祈るばかりです。
[シーベルト]
物質が放射線に照射されたとき、物質の吸収線量を示す単位がグレイ(記号Gy。定義J/kg)。生体(人体)が放射線を受けた場合の影響は、受けた放射線の種類(アルファ線、ガンマ線など)によって異なるので、吸収線量値(グレイ)に放射線の種類ごとに定められた放射線荷重係数を乗じて線量当量(シーベルト)を算出する。
最近この言葉は非常によく耳にします。私たちが大学を卒業した頃は、この単位はレムという表現がなされていました。平成元年から表現方法が変わったようです。
少し難しい話です。報道では「毎時」が省略されている場合がありますが、シーベルトとは「ある期間に被曝した量の合計」をあらわす単位であり、1時間その場所で過ごした人が1シーベルト「被曝」することになるという状態が「1シーベルト毎時(Sv/h)」です。もちろん「毎秒」や「毎年」といった表現もできますが、特に説明のないかぎりテレビなどの報道で省略されているのは「毎時」のようなので、例えばある地域で「1マイクロシーベルトが観測された」という報道があれば、人間がそこで1時間過ごすと1マイクロシーベルトを「被曝」することになる、と考えてください。「2.4ミリシーベルト毎時」であれば、普通に過ごしていて1年間に浴びる放射線量を1時間で浴びる、というレベルです。
「マイクロシーベルト」とか「ミリシーベルト」という単位の大気中の放射線量が、体内に取り込まれるのは、その数値の10分の1にすぎません。 一時、原発から60キロ離れた福島市で、県内で高水準の「毎時20マイクロシーベルト」の観測が続きましたが、放射能は気象条件や気流に影響して飛びます。このケースで1時間外にいると、2マイクロシーベルトが体に入ります。仮に1カ月間、外に居続けても、1〜2ミリシーベルトしか蓄積されません。甲状腺への影響を和らげるため「安定ヨウ素剤」を配布する基準は、「毎時50ミリシーベルト」(同5万マイクロシーベルト)に達したときで現状とはほど遠いです。
現在の放射能漏れの状況が、子どもでも分かりやすいようなこんなサイトがあります。
http://www.youtube.com/watch?v=ZUzBvxdnCFM
[放射性物質による食品や水道水への影響や注意点]
笠井篤・元日本原子力研究所研究室長によると、放射性物質を含む牛乳や乳製品を1日1リットル、水を1日2リットル、葉もの野菜を1日100グラムなどについて、それぞれすべてを1年間毎日摂取し続けた時に、発がんなど健康に害が出る放射線量を計算した。仮に1回、規制値の100倍程度の放射性物質を誤って摂取してしまったとしても、身体的な影響は表れるものではない。だからと言って、規制値を超えるものを食べて良いというわけではない。
学習院大学の村松康行教授(放射化学)によると、放射性ヨウ素と放射性セシウムは風で運ばれ、ホウレンソウなど葉の大きいものほど付きやすい。キャベツは、外側には付くが中には入りにくい。野菜は水でよく洗えば、ある程度は濃度が薄まる。キャベツなどは外側の葉を取ってから水洗いするといい。
放射性物質は土の表層にとどまりやすく、短期的には大根などの根菜類への影響は少ない。原乳からの検出は、乳牛が餌や飲み水から摂取した可能性がある。
子どもは大人より放射線の影響を受けやすい。鈴木元(げん)・国際医療福祉大教授によると、大人では体内に入ったヨウ素の約7%が甲状腺にたまるが、残りは24時間以内に排出される。一方、子どもは約20%が甲状腺にたまってしまう。
ただし、規制値は子どもが摂取を続けても問題がない結果を基に作られている。
今福島県や茨城県産の牛乳、ほうれん草に含まれた放射線量が基準値より多かった、との報道がありましたが、これは報道する必要があったのか、と疑問が起こる話であります。隠さないことが大事なのかもわかりませんが、この結果、異常がなくともまた牛乳、ほうれん草が回収され、福島産、茨木産の食品は危ない!というような話が広がってまたまた大打撃をうけるのではないでしょうか…。水道水や葉もの野菜からの検出値も、科学的に見れば、甲状腺に悪影響を及ぼしませんので冷静に対応してほしいです。
もしこの危機的状況から脱することができたとしても、今後福島第1原発は再び電力を供給することができるのでしょうか?冷却する為に海水を注入すること→原子炉の廃棄を意味することですので、決定にはかなりためらわれたのではないでしょうか?チェルノブイリのように4機ともにコンクリート詰めにして永久に葬り去られるとしたら、その後この夏、電力需要がただでさえ高まる季節に、電力を供給することはできるのでしょうか?新しい電力の製造方法は日本ではまだ全く開発はされていません。
原子力発電はそれを行っている以上は、プルトニウムを燃料に使った方法を選ばなければ、事故が起こらなくても毎年毎年核廃棄物(プルトニウムを含む)の処理に関することが今後の地球全体のレベルで問題になります。またプルトニウムを使ったプルサーマル発電は、核廃棄物が少なくなる、という意味で推進され始めていますが、プルトニウムの扱いが非常に難しいです。我々は未来の地球に大きな負の遺産を残しています。
原子力発電は他の国々ではストップしている所が多いのですが、インド、中国、韓国などではどんどん建築ラッシュであったりします。再開発を試みている国もありますが、この日本の事故の現状をみてどう変わるでしょうか?日本では2015年までに16〜18基の原子力発電所でプルサーマルを実施するとの具体的な計画を発表しましたが、この福島原発の事故を受けて静岡の浜岡原発等は稼働据え置きを決定しています。
資源の少ない日本、電子力発電の電力に支えられた便利で快適な生活に慣れてしまった私たちの行く末はどうなっていくのでしょうか?
被災された方がたの復興への長い道のりに加え、考えなければならない重要な問題であります。
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