貧血(思春期)(11/2/21更新)

◎鉄欠乏性貧血
血液の成分である赤血球や、その中に含まれているヘモグロビンという赤い色素の量が減少した状態が貧血です。ヘモグロビンの主成分が鉄なので、体内の鉄分が不足しておこるのが鉄欠乏性貧血です。赤血球の数は少なくはなりません。
[原因]
思春期は、心も体も大きく成長する時期です。全身に栄養や酸素を供給するために、血液もこれまで以上に増やさなくてはなりません。血液を増やすためには、その原料であるタンパク質や鉄分も、それまでよりも多く摂取しなければなりません。ところが、女の子は月経も始まりますから、出血によって鉄分を失ってしまいます。
しかも、思春期には心にも大きな変化がみられます。自分の体形が気になって、ダイエットをしようとするお子さんも少なからずおられます。不適切なダイエットで鉄分が不足してしまうと、更に貧血になりやすくなってしまいます。鉄欠乏性貧血の頻度をみても成人女性全体では約10%ですが、中学生女子では20%もの人が貧血になっているとされています。
■身長・体重の増加が急速である者ほど貧血傾向があります。
■ スポーツをしている女子に貧血が多い傾向にあります。
■ 食生活の偏り、ダイエットをしている女子に多いです。とくに最近は塾などの関係で、夕食はとりあえずコンビニなどの簡単な食品でまにあわせ、帰宅後はそれほど空腹感がないので好きなものだけを少し食べるという食生活では十分な栄養を摂取できていないのも原因ではないかと推測されています

[症状]

鉄欠乏性貧血のような徐々に進行する貧血では、体がその状態に順応するため、なかなか症状が出ないという特徴がありますが、出るとすれば、疲れやすさ、頭重感、起立性低血圧、運動時の呼吸困難などです。 また学力低下や食欲不振の原因となっている可能性もあります。鉄の代謝は間脳にある情緒の中枢と密接な関係があるといわれ、鉄欠乏によりイライラしやすい、集中力・注意力低下、食欲不振などの症状が出てきます。進行すると動悸や息切れ、めまいを訴えます。

[治療]
鉄欠乏性貧血の治療は鉄剤の投与です。使用開始後1週ほどで網赤血球が増加し、貧血が改善していきます。鉄剤の使用は貧血回復後も2〜4カ月続けます。食事の内容を点検し、その改善を図ります。
タンニン酸を含むお茶やコーヒーは鉄の吸収を阻害するため、いっしょにとるのは避けたほうが無難です。ビタミンCは鉄の吸収を促進します。

[予防]
一度鉄剤などで貧血が治癒しても、その後再び貧血になることが多いです。女子の場合はとくにその傾向が強く、月経を良く観察すること、食事に注意をすること、時々検査をすること、が必要です。思春期の貧血を予防・改善するためのポイントは、鉄分、タンパク質、ビタミン類を十分に含んだ栄養バランス食を1日3食きちんと摂る事と、睡眠不足にならないような規則正しい生活をすることです。


◎スポーツ貧血
[スポーツ貧血とは]
原因に関わらず、スポーツによって引き起こされる貧血をまとめて「スポーツ貧血」と称されることがあります。この中には鉄分の不足による鉄欠乏性貧血も含まれていますが、狭義のスポーツ貧血とは、衝撃あるいは激しい筋肉の収縮運動によって、赤血球が破壊される貧血を指します(赤血球が壊れるタイプの貧血は、溶血性貧血と表現されます)。スポーツ選手では鉄所要量も異なりますが、鉄欠乏性貧血については前述しましたので、ここでは狭義のスポーツ貧血についてです。

[原因]
動脈や静脈の壁はそれなりに厚みを持っていますが、酸素の受け渡しの場である毛細血管の壁はうすくなっています。運動によって何度も繰り返して強い衝撃が加えられる足の裏では、その中を流れる赤血球が壊されてしまいます。
足の裏へ何度も強力な衝撃が加えられるスポーツといえば、長距離走や剣道、バスケットボールやバレーボールなどです。こうした部活動を中心に、様々な運動によって引き起こされることがあります。なお、運動によって生じるこの溶血性貧血は、延々と行進する軍隊で貧血を招いたことから「行軍貧血」と呼ばれていました。

[診断]
鉄分不足でもないのに貧血ということがあれば、スポーツ貧血も考慮しなければなりません。この場合、鉄分を補っても貧血は改善せず、運動を休止することで改善につながることがあります。


以前に書いた乳幼児の場合と同じく、赤血球の中の血色素(ヘモグロビン)を作る為の鉄が足りなくなることが原因である為の貧血が殆どです。女性に圧倒的に多い病気ですが、勿論急激に成長する男性もあります。
上述の貧血がおこりやすい状況にある方は充分に注意して下さい。薬を飲む前に食生活、普段の生活の改善に努めて下さい。

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