特発性血小板減少性紫斑病(ITP)(11/2/7更新)

[特発性血小板減少性紫斑病とは]
特発性血小板減少性紫斑病とは、明らかな基礎疾患・原因薬剤の関与なく血小板数が減少し、種々の出血症状をひき起こす病気のことをいいます。推定発病または診断から6ヶ月以内に治癒する「急性型」は10歳未満の小児に多く、6ヶ月以上遷延する「慢性型」は20〜40歳で発症することが多く、成人に多いです。男性2:女性8くらいの割合。年間200人程の発症例があり、人口100万人に対して、1.6程度の割合のようです。

[原因]
急性型の多くは、麻疹、風疹、水痘ウイルス感染によります。慢性型の一部は、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)感染が原因といわれています。急性型が一割程度の割合で、慢性の経過を辿る場合があります。ITPが6ヶ月以上遷延化した場合、慢性特発性血小板減少性紫斑病の診断が下されます(小児にあっては、ウイルス感染が先行し発症が急激ならば、急性ITPと考えます)。
ウイルスと抗ウイルス抗体が免疫複合体を形成し、血小板膜のFc受容体に付着して感作血小板が生じ、これが脾臓で破壊されることで本症を発症するものと推測されます。

[症状]
青あざ(紫斑)、点状出血、粘膜出血など。関節内での出血は少ない。
血小板数が3000/μlを切るような症例では、頭蓋内出血の危険があり早急に治療が必要になります。
慢性の場合は大出血を起こすことは比較的少ないですが、若年女性に多いため、月経、妊娠、出産において問題になります。

[検査と診断]
出血症状があり、特徴的な検査所見がみられ、基礎疾患を否定された場合に診断されます。
特に、偽性(ぎせい)血小板減少症、遺伝性巨大血小板減少症、骨髄異形成(こつずいいけいせい)症候群、膠原病(こうげんびょう)(全身性エリテマトーデスなど)、薬剤性血小板減少症の除外が重要です。
検査所見の特徴は、血小板減少(10万/μl以下)以外に、骨髄では幼若な骨髄巨核球が正常ないし増加し、PAIgG値および網血小板(若い血小板)率も増加します。出血時間は延長しますが、凝固系検査は正常です。出血を伴う時は鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)を伴うことがあります。

[治療]
急性ITPは6カ月以内に90%以上は自然軽快するので、発症2週間以内の高度の血小板減少による出血症状への対応が大切です。慢性ITPと区別がつかない場合は、慢性ITPの治療指針に準じて対応します。
慢性ITPでは、最近、ピロリ菌感染がみられる患者さんにピロリ菌除菌で血小板数が上昇することがあることから、治療戦略が見直されています(図9)。すなわち、慢性型ITPと診断されたら、ピロリ菌感染の有無を調べ(尿素呼気試験、血清抗体価、胃粘膜生検など)、陽性であればまず除菌を行います。
ピロリ菌除菌をしても無効の場合、あるいはピロリ菌が陰性の時は、血小板数が5万/μl以上では経過観察、3万/μl 以下では、スタンダード治療として、まずステロイド療法を行い、反応が悪い場合は脾摘術(ひてきじゅつ)を施行するのが基本的な治療方針です。


子どもさんのITPは殆ど自然に治癒します。大学病院ではちょっと厄介な症例が集まっているかもわかりませんが、私の開院以後の経験では、急性期の血小板の数が少なくて入院した例はあっても、特別な治療を必要とした方はありません。今までにかかった病気の中にこの名前を挙げておられる方もありますね。ウイルス感染の後に起こることが多いのですが、水ぼうそうに罹患した時に水疱内に出血がみられ、同時にITPを引き起こされた例があり、入院はされましたが感染の消腿に従って自然に血小板は上昇していきました。もとの病気が感染力の強いものだったので、入院の部屋を探すのが大変でしたが。

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