神経線維腫(レックリングハウゼン病)(15/1/30更新)

[神経線維腫とは]

神経線維腫症は、皮膚、神経を中心に人体の多くの器官に神経線維腫をはじめとするさまざまの異常を生じる遺伝性の病気です。神経線維腫症のことをレックリングハウゼン病とよぶこともありますが、これは、19世紀に神経線維腫症の神経症状について報告したドイツの学者、レックリングハウゼンに由来した病名です。神経線維腫症には大きく分けて1と2の二つのタイプがあります。神経線維腫症T型と 神経線維腫症U型と呼ばれる二つのタイプです。神経線維腫症T型は神経線維腫と呼ばれる腫瘍(できもの)や色素斑(しみ)など皮膚症状が強く、神経線維腫症U型は両側の聴神経(音を感じる耳の中の器官を支配する神経です)の腫瘍を主体に皮膚病変の少ないタイプです。神経線維腫症の中では神経線維腫症T型が多いので、単に神経線維腫症というときはだいたい神経線維腫症T型を指しています。
神経線維腫症T型の患者さんの割合は人口約3,000人に対して1人の割合で、遺伝病の中では患者さんの数が多い病気といえます。患者さんの約50%は、両親のどちらかが神経線維腫症T型であって遺伝性に発病した人です。残りの50%は、両親ともにこの病気がなくて、突然変異で神経線維腫症T型になった人です。突然変異とは両親の遺伝子に変異(異常な変化)がなくても子供の遺伝子に変異が生じて神経線維腫症T型になってしまうものです。

[症状]
1)
皮膚症状
色素斑: 褐色の斑が出現します。大きいものと小さいものがあります。大きいものは手のひら大までくらいになり、皮膚表面より盛り上がることはなく、全身に不規則に出てきます。ミルクコーヒー色のためカフェオーレスポットと呼ばれます。
大部分は5歳以上で発症します。小さい斑のものは小豆よりも小さく、少し濃く、顔や体によく出てきます。
腫瘤:児童期から思春期にかけて、2ミリから6センチくらいまでの丸く隆起した神経線維腫が出現します。
貧血性母斑:胸の上の方に見られます。
2)
骨変化
側弯、後弯などの脊柱の異常、四肢骨、胸椎の変化などが見られることがあります。
3)
神経症状
小児では視神経膠腫という良性の腫瘍ができることがあります。その他、聴神経腫瘍、髄膜腫が見られます。
知能は正常ですが、10〜24%に軽〜中等度精神遅滞、8〜13%にけいれん発作が見られます。

[診断]
直径1.5cm以上の斑が6個以上見られたらこの病気が疑われます。これに神経線維腫症があればこの病気と診断されます。

[治療]
根本的な治療法はありません。腫瘍が急速に大きくなるなど悪性化が疑われるようなら切除します。四肢などの末梢の神経線維腫症には形成外科的に除去することがあります。この病気は国から難病指定を受けているため重症の方は医療費の補助が出ます。ほとんどの人は普通に社会生活をしています。


カフェオレ斑が6個ほどあると言われた、またはスポットではないが色がカフェオレの母斑が沢山あると言われた(扁平母斑か?)という方があります。カフェオレ斑が6個以上ある人は定期的に小児科、皮膚科、眼科(整形外科も?)の診療を受けるように、という指示が出されることが最近多くなっているように思います。
が、上述のように、6個以上のカフェオレ斑はこの神経線維腫が疑われるのですが、カフェオレ斑が沢山あっても、腫瘤はできない、母斑だけの方もけっこうおられます。
年齢の小さい時には診断は難しいので、思春期以降に体中に大小様々な繊維腫(柔らかい瘤状の腫瘤)が沢山出来てきたりするようであれば、様子をみないで皮膚科に受診するようにして下さい。

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