下垂体性小人症(10/12/13更新)

[下垂体性小人症とは]
下垂体からの成長ホルモンの分泌が損なわれて起こる小人症をいいます。成長ホルモンの分泌のみがよくない場合と、他のホルモンの分泌障害を伴う場合とがあります。成長ホルモン以外の下垂体ホルモンの分泌も損なわれている場合は、小人症と併せて性機能の発育が損なわれることが多く見受けられます。
6〜17歳では男児1万人あたり2.14人、女児1万人あたり0.71人で男女比は3:1で男児に多く見られます。

[原因]
視床下部や下垂体が脳腫瘍(しゅよう)などにより障害を受けている器質性と原因のはっきりしない特発性とがあります。多くは特発性ですが、その多くは骨盤位分娩など分娩時の異常があり、この分娩時の障害が成因として関与していると考えられています。最近では特発性の中にMRIで下垂体茎(視床下部と下垂体の連結部)に断裂の認められる例が明らかになりました。これは周産期に産道内で発生した頭部の変形により生じると考えられており、これが成長ホルモン分泌障害の原因として最も頻度が高いと考えられています。成長ホルモン分泌不全性低身長症には成長ホルモン分泌のみが障害されたもの(GH単独欠損症)とGH以外に他の下垂体ホルモンの分泌も障害されているものがあります。GH以外の下垂体ホルモンの分泌障害を伴う例では、GH欠乏にそれぞれのホルモン欠乏症状が加わることになります

[症状]
出生時の身長、体重は正常ですが、徐々に成長の遅れが目立ちます。骨の発達が遅れ、いわゆる骨年齢が低下しています。脳腫瘍などが原因の場合では、病気の発病とともに成長が損なわれてきます。他のホルモンの分泌障害を伴う場合では、そのホルモンの欠落症状が生じます。たとえば、性腺ホルモンが損なわれると、体形が幼いままであり、男子では声変わりや射精がなかったり、女子では生理がこなかったりします。
また、ストレスに反応して血糖などを上げる作用のあるホルモンが脱落すると低血糖を来し、意識が低下することもあるので注意が必要です。

[診断]
臨床的に低身長あるいは身長の伸び率の低下を認め、GH分泌不全を証明すれば、診断できます。鑑別すべきものに、思春期遅発症、甲状腺機能低下症による低身長などがあります。

ホルモン検査
本症を疑った場合、まず成長ホルモン(GH)の分泌不全を証明します。成長ホルモンは1回の測定では分泌低下を判断することはできず、GH分泌動態を評価するため、GH分泌刺激試験が必要です。刺激試験には数種類ありますが、この中で2種類以上の負荷試験で低反応を示した場合、本疾患と考えられます。その他、成長ホルモン分泌動態を調べるため、尿中GH、睡眠時GH測定、血中IGF-1(インスリン様成長因子、ソマトメジンC)測定などを行います。
骨年齢
GH不足は骨の成長度合(骨年齢)を遅らせるため、手のX線写真に成熟過程の遅延がみられます。
画像診断
病因の検索のため下垂体とその近傍のMRI、CTを行います。

[治療]
遺伝子工学的手法でつくられたヒト成長ホルモンの注射を行います。その他不足しているホルモンの補充が同時に投与されます。
骨年齢が10歳以下で始める必要があります。それ以後だと、ホルモン療法に効果が出にくくなります。
合成ヒト成長ホルモンを1週間に6〜7回皮下注射します。毎年治療効果判定を申請して、効果が持続している間は治療を継続します。

[学童期の成長障害の鑑別診断]
1)GH-ソマトメジン系
    成長ホルモン分泌不全性低身長症
    ソマトメジン合成・作用障害
    生物活性のないGH
2)甲状腺機能低下症
    クレチン症 慢性甲状腺炎
3)その他の内分泌疾患
4)愛情遮断症候群
5)奇形症候群
6)染色体異常症(ターナー症候群など)
7)先天代謝異常
8)骨系統疾患(軟骨無形成症など)
9)思春期遅発症、体質性、低出生体重児など


身長が低くて伸びも悪く、成長曲線の一番下のラインぎりぎり、の方は結構おられます。頻度としては家族性の低身長が殆どを占めています。特に男の子の場合は、身長の伸び始める時期が遅い場合が多く、高校生になってやっと伸びてくるお子さんも多いので、ホルモンの異常が無ければ、待っていれば良いとは思います。

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