ネフローゼ症候群(10/10/4更新)

[ネフローゼ症候群とは]

ネフローゼ症候群は、ごく少量のタンパク質が尿中に漏れ出る状態(微量アルブミン尿症)が徐々に進行して発症したり、あるいは突然発症する場合もあります。ネフローゼ症候群は年齢にかかわりなく起こりますが8割の患者が発症年齢6歳未満で、小児に多い病気です。小児では生後18カ月から4歳の間が最も多く、女児より男児に多くみられます。年齢が高くなると、男女の差はほとんどなくなります。
尿にタンパク質が漏れ出るのに伴って(タンパク尿)、アルブミンなど血液中の重要なタンパク質の濃度が低下し、血液中の脂肪(脂質)が増え、血液が固まりやすくなり、感染症にかかりやすくなります。血液中のアルブミン濃度が低下すると、普通は体液が存在しない部分に浮腫が起こり、過度のナトリウム貯留が生じます。

[原因]
なぜ蛋白尿が出るのか、原因となる疾患があるのものを二次性ネフローゼ症候群、原因不明のものを特発性(一次性)ネフローゼ症候群と分類します。殆どのネフローゼ症候群の70〜80%は特発性にあたります。二次性のネフローゼ症候群は蛋白尿の原因となる腎臓疾患が特定できるもので小児は紫斑病勢腎炎が多く、成人は糖尿病性腎症やループス腎炎が多いです。
小児のネフローゼ症候群の患者の大半が、原因の分からない特発性のものです。

[症状]
量の蛋白尿が出る結果、低蛋白血症によるむくみが見られます。眼瞼・下肢脛骨前面のむくみ、腹水によるお腹のはれが見られます。全身にむくみがでると、肺に水がたまり(胸水)呼吸が苦しくなります。下痢、食欲低下、腹痛も見られます。症状が進行していくと腎不全になる場合があり、高脂血症を合併することもあります。各ネフーゼの症状や特徴を以下に示します。
1. 微小変化群
小児のネフローゼ症候群のなかでも最も多いネフローゼで、約8割が微小変化型です。糸球体の変化はほとんど見られず腎機能は正常で、腎不全まで進行することはありませんが、発病が急激に起こりショック症状を示すことがあります。
2. 巣状糸球体硬化症(FSGS)
糸球体の一部が硬化して、尿細管にも萎縮変化が見られます。進行が悪化しやすいネフローゼです。
3. 膜性糸球体腎炎
糸球体基底膜といわれる部位が厚くなることが主な原因です。成人の2割がこの型で、主にタンパク尿のみの症状のため、検査するまで気がつかない人も多いようです。
4. 紫斑病性腎症
小児に多いネフローゼで腎炎を引き起こす可能性が高いです。この型は重症ネフローゼ症候群や腎不全を引き起こすことがあります。

[治療]
むくみ(浮腫)、高血圧、低タンパク血症に対して、食事療法や利尿薬を使用した薬物療法が行われます。
小児によくおきる微小変化群のネフローゼの場合は副腎皮質ステロイド薬で早期治療することが大切です。約8割〜9割の患者はステロイドに反応して蛋白尿が消失しますが、再発することもあります。
ネフローゼ症候群に免疫異常が関与している場合は、免疫抑制薬が用いられます。その他、抗血小板薬、抗凝固薬などが薬物療法に用いられます。
ネフローゼ症候群の治療には小児に対して長期間のフォローが必要であるため、薬物療法による副作用や腎機能障害に注意を払いながら、経過を観察する必要があります。

copyright(c) 2004 Yamauchi Clinic. all right reseaved.