鼠径ヘルニア(10/8/23更新)

鼠径ヘルニアは脱腸とも呼ばれ、臓器の一部が太ももの付け根(鼠径)に飛び出てしまう病気のことです。

[原因]
腹膜の袋(腹膜鞘状突起、ふくまくしょうじょうとっき)が残ってしまいそこに腸管や卵巣が脱出し、そけい部がふくらみます。男児の場合、出生が近づくと睾丸が陰嚢(いんのう)内に降りてきます。そのとき腹膜も一緒に引っ張られて袋状になります。通常、睾丸が陰嚢まで達すると、この腹膜は自然に閉じるのですが、腹膜が閉じない場合があります。そこに腸などのお腹の中の組織が入り込むことで小児鼠径ヘルニアが発症します。女児の場合も、ヌック管と呼ばれる管が下に降りてきて、男児と同じように腹膜が引っ張られ袋状になります。この腹膜も閉じない場合に、小児鼠径ヘルニアの原因となります。

[症状]
足の付け根が小さく膨らんだり、元に戻ったりするのが主な症状で、痛みは特にありません。
泣いたり、怒ったり、興奮したときにお腹に力が入って、腸が飛び出てしまいます。男の子の場合は足の付け根ではなく陰のうに膨らみがあらわれることがあります。

[処置]
生後3カ月以内に発症した鼠径ヘルニアは、だいたい1才ごろまでに約2割が自然に治ってしまいます。泣きやんだり、ぐっすり寝るなどして、おなかの力が抜けると自然に戻るときや、ふくらんだ部分を押して引っ込むなら、とりあえず急いで手当てをする必要はありません。 1才までは経過を見て大丈夫でしょう。
しかし、ごくまれに脱出した腸が、袋の根元で締めつけられ、ひどいときは腸閉塞を起こすことがあります。これが嵌頓ヘルニアで、めったにあることではありませんが、起こった場合は緊急手術が必要です。そのため、いまは時期を見て早めに鼠径ヘルニアそのものを治す手術を行うのが一般的になっています。  手術自体は穴をふさぐだけの簡単なもので、10〜30分で終わります。小児専門病院なら日帰りも可能ですし、入院する場合でも3〜4日か1週間で退院できます。  手術までの間は、必要以上に泣いて腹圧がかからないようにする工夫は必要です。家庭でも、お母さんは赤ちゃんにおなかをすかせない、おむつの汚れはまめにかえるなど、はげしく泣かせないように心がけましょう。
なお、嵌頓ヘルニアを起こした場合は、赤ちゃんは強い痛みを感じます。また新生児期は睾丸捻転も起こりやすいもの。男の子で、急にはげしく泣き出したときは、念のためおむつを開け、陰嚢や鼠径部をチェックしてみることも大切です。

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