ステロイド外用薬(10/7/12更新)

[ステロイドとは?]
ホルモンの分類法には色々ありますが、「ステロイド」とは、ホルモンを化学構造によって分類した場合のグループの名称の一つです。そして副腎皮質ホルモンは、ステロイドの一種になります。この副腎皮質ホルモンは、腎臓の上の部分にある「副腎」という臓器から分泌されるホルモンで、肝臓や腎臓、血管に働きかけて、新陳代謝や内分泌などの生体反応に様々な作用をもたらします。この副腎皮質ホルモンの働きを利用する薬を「ステロイド剤」と呼び、現在では何種類ものステロイド剤が合成されています。そして、飲み薬や注射、また外用剤としては軟膏などの塗り薬や目薬、吸入や点鼻薬などに広く用いられています。

[ステロイド外用薬の働き]
まず、ステロイド軟膏には、炎症を抑える作用があります。少し専門的になりますが、この作用は炎症を引き起こしている体内の物質に直接働きかけるのではなく、組織の反応を低下させることによって、体内で起こっている炎症を抑えるといわれています。また、血管を収縮させる作用がありますので、アレルギーを引き起こす刺激物質によって拡張した血管を収縮させて、湿疹や痒みなどの症状を抑える働きがあります。 
このような作用を持つことから、ステロイド軟膏は、湿疹やかぶれ、アトピー性皮膚炎、火傷や虫刺され、乾癬などに、とても優れた効果を現します。また膠原病や水泡症などの自己免疫疾患の治療にも使われます。

[ステロイドは怖い?]
確かに、ステロイド軟膏を長い期間、その上大量に使い続けると副作用が起こる心配があります。しかし、皮膚から体の中に吸収されるステロイドの量は、飲み薬と比べるととても微量ですので、よほど大量に使わない限り、軟膏の場合、飲み薬で起こるような全身的な副作用の心配は少ないといえるでしょう。

[ステロイドの副作用]
毛細血管が拡張するため皮膚が赤くなったり、皮膚が薄くなり血管が透けて見えるようになることがあります。また、皮膚が細菌やカビなどの感染に弱くなりますので、たむしや皮膚カンジダ症を起こしたり、おできやにきびが出来やすくなったりすることもあります。 
しかしこういった副作用を起こすのは、ステロイド軟膏を長期間塗り続けた場合が殆どですので、短期間でよくなってしまうかぶれや炎症に使う時には、あまり心配されなくてもいいと思います。優れた効果がありながらステロイド軟膏が怖い薬だと思われている背景には、誤った使い方によって副作用を起こしているケースが多いからではないでしょうか? 例えば先程も言いましたように、必要以上に強いステロイド軟膏を広い範囲に長期間使い過ぎると、当然全身的な副作用が出てきます。また、長い期間使っていたステロイド軟膏を塗るのを急に中止すると、症状が一気に悪化することがあります。これを「リバウンド現象」=「はねかえり現象」というのですが、これは副作用ではなくて、ステロイドでコントロールされていた元の症状が、突然薬を止めたために、その反動で悪化する現象です。 
最近、マスコミでステロイド軟膏の副作用が大きく取り上げられることもあり、何年もステロイド軟膏で治療を続けていた人が、主治医に無断で薬を使うのを止めてしまい、とても大変な状態になることが意外と多いそうです。ある専門家は「リバウンドによる被害は、ステロイドの副作用による被害より遥かに多く、事態も深刻だ。」と指摘していますので、ステロイド軟膏を使うには、正しい知識と理解が必要になってきます。

[ステロイドの使用目的]
ステロイド外用薬を使用する目的は以下の2つがあります。
1、症状が重い場合の火消しの役目
2、軽快時の症状の維持
どちらの場合も使用するステロイド外用薬の量、使用するタイミングが非常に大切です。
よく問題として指摘されるステロイド外用薬の副作用は、病気の時期に応じたステロイド外用薬の量、タイミングに問題があった場合に起こります。

[ステロイド外用薬の強さランク一覧]
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[ステロイドを上手に使うポイント]
第一に、ステロイド軟膏には作用の強いものから弱いものまで、たくさん種類があります。作用の強さにより、5段階に分類されているのですが、これを病気の症状や塗る部分に合わせて使い分けるようにすれば、副作用もかなり防げると思います。また、同じ種類のステロイド軟膏でも、ワセリンかクリームかによって効き目が違ってきますので、最も自分の症状に適した強さの軟膏を選ぶためにも、是非、専門医の診察を受けて下さい。 
次に、体の部位によって、皮膚から吸収される薬の量はかなり違ってきます。皮膚の薄いところや密閉される場所、例えば顔の頬の部分や腋の下、陰部などは、とてもよく吸収されます。こういった部分には作用の弱いステロイド軟膏をなるべく薄く塗って下さい。やはり専門医から塗る回数や塗り方の詳しい説明を受けることが大切です。 
最後に、長期間使っていたステロイド軟膏を止める時は、「リバウンド現象」を起こさないように注意しなければなりません。決してご自分の判断だけで中止しないで下さい。主治医の先生は症状を診ながら、作用の強い薬から段々弱い薬に替えていったり、一日に塗る回数を徐々に減らしていったりします。また、ステロイド以外の軟膏を使っていく場合もあるでしょう。必ず定期的に診察を受けて、医師の指導に従って下さい。

ステロイド軟膏は正しい使い方さえすれば、とても優れた効果のある薬であり、決して怖い薬ではありません。逆に副作用をむやみに心配して、治療が必要なときに使わないでいると、かえって症状が悪くなることになります。ステロイド軟膏を、副作用を起こすことなく効果的に使っていくには、専門医の診察を受けて、「薬の種類」や「薬を塗る部位」、「使う量」、「使う期間」などの説明をしっかりしてもらって下さい。そして、ステロイド軟膏の作用をよく理解し、正しい知識を付けた上で、医師の指導をきちんと守りながら使っていくということが大事だと思います。

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